第5話 不動のロイド

 デカい蜥蜴との戦いから七日ほど経過した。


 もう一度戦いたいと思い、フェルンに付き合ってもらっていたが、一度も会えなかった。

 魔物もいたが、大した相手はいなかったので、力は戻っていない。


 今は、デカいサソリと戦っている。


「ヤ、ヤマギシさん、この魔物、氷が効かないです!?」

「なんでだろう。魔法耐性が高いのかな?」


 フェルンが魔法を放つと攻撃が跳ね返されて飛んでくる。

 それを避けるのが面白くて遊んでいたら怒られてしまった。


「早く倒してください!? なんか針出してきました!?」

「えー、もうちょっだけ遊ばない?」

「だ、ダメです!」

「あいよー」


 そのまま一刀両断。

 面白かったが、あの蜥蜴とはもう戦えないのかなあ。


「はあはあ……ようやく終わりましたね……」

「結構いっぱい出てきたね」


 フェルンの後ろには、サソリの死体が五十体ぐらいある。

 どうやら仲間を呼ぶ個体種らしく、どんどん出てきた。

 でも、これで終わりかな。


 ふうと汗をふくフェルン。

 それで、気づいたことがある。


「もしかしてフェルン、修行してた?」

「……え? な、何のことですか?」

「動き、めちゃくちゃ綺麗だった。ベルディにいるとき、たまにいないときあったし、そうかなって」


 するとフェルンはちょっとだけ嬉しそうにする。


「修行ってほどではないですけど、エリーナさんに稽古をつけてもらっていました。私は近距離が苦手ですけど、それを克服したくて」

「ふうん、めちゃくちゃいい動きしてたよ」


 するとフェルンは、ふふふと微笑んだ。


「でも、なんでそこまで強くなりたいの?」

「……まあ、色々です」

「そっか」


 なぜかそっぽ向いて、後ろの耳が赤い?

 なんでだろう。


「なんか声が聞こえる」

「声、ですか? 全然わからないんですけど」

「あっちのほうだな。なんだろう。行こうぜ」

「は、はい!」


 人間の声だ。それも複数。

 南へ向かって走ると、冒険者と思われる連中がサソリと戦っていた。

 十人くらいかな? みんな仲間なんだろうか。


「ハアアッ! こいつら……強すぎるぞ!」

「クソっ、かてえっ! ロ、ロイド!? 頼む!」

「――わかった」


 ロイド、と呼ばれた男がゆっくり前に出る。

 金髪で爽やかな感じ。見るからに若そうだ。外見だけでいうと、フェルンと同じくらいに見える。まあ、年齢は全然違うだろうけど。

 堂々とした立ち振る舞いで、魔物を見つめていた。


「僕と戦うというのかい?」


 ロイドは、剣も構えずポケットに手を入れていた。

 魔物は狂暴だと思われているが、実は結構賢い。

 相手のことをちゃんと見ているし、風貌や魔力、雰囲気で襲う相手を考えている。

 戦闘態勢を取らないロイドを前に圧倒的な差を感じ取ったのか、サソリはギョッと、砂の中へ消えていった。


「すげえ、さすが不動ふどうのロイドだな!」

「凄い。さすがロイド!」

「あいつら、ネームドのサソリスだよ。毒針に食らったら即死する攻撃を持ってる」


 その話を聞いて、横のフェルンが青ざめていた。

 確かに何度か頬をかすめそうになってたしな。


「フェルン、大丈夫?」

「考えないようにします……。それより、不動のロイドって聞いたことがあります」

「へえ、有名人なの?」

「一歩も動かず魔物を倒したり、ああやって追い払うらしいです。あまりの強さに敵が戦意喪失するとのことです。冒険者ランクは、確かSだと聞いたことがあります」

「え、じゃあエリーナやボーリーたちより上ってこと?」

「階級はそうなりますね」

 

 凄そう。

 達人ってことかな? 普通、敵と戦う前は魔力が揺らいだりするんだけど、ロイドは一切なかった。

 めちゃくちゃカッコイイな。

 斬りかかってもいいかな?


「ヤマギシさん、 斬りかかっちゃだめですよ」

「おお、フェルン、よくわかったね!」

「段々と表情でわかるようになってきました」


 むやみやたらに人を斬らない。俺も覚えてきたな。

 だが、気配を消していた俺のことを、ロイドが見ていた。

 へえ、凄いな。


「――でも、戦っていいのか聞くのはいいよな」

「ちょ、ちょっとヤマギシさん!?」


 砂埃を巻き上げながらツッコム。

 ロイドの周りには仲間がいっぱいいる。パーティーってやつか?

 どうやら人望もあるみたいだな。


「な、なんだこいつ!?」

「敵だ! 構えろ!」

「くそ、こんなタイミングで!!!」


 ただ声をかけようとしただけなのに、なぜか慌てふためかれてしまう。

 違うよーと手を振ろうとする。


「魔法を打つつもりだ! ――ロイドを守れ!」

「炎よ、対象を燃やし尽くせ!」


 けれども、なんか勘違いされてしまって炎が飛んでくる。

 熱気が凄くて、遠くからでも熱風を感じる。

 これ当たったら熱いのかな? 

 でも、さすがに火傷は嫌だな。

 

 すると、フェルンが氷剣を手に宿らせてくれた。

 さすが、わかってるね。


「――何もしないって」


 俺は、炎の魔法を叩き切った。

 炎は左右に別れて後ろに飛んでいくと、地面にぶち当たって轟音を響かせる。

 あと、メラメラ燃え盛った。


「……は? 魔法を――斬りやがった!?」

「な、なによこいつ!?」


 なんか勘違いさせちゃったな。

 でもそのとき、ロイドが仲間の前に立った。


「やめてくれないか」


 魔力の揺らぎはない。剣を構えるつもりもない。

 一見隙だらけに見えるが、ここから攻撃ができる手段があるのだろうか。


 ――攻撃、してみようかな?





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