第3話 みーつけた。
ベルディ国を出国した。無断で。
「いやー、初めてやったけど壁って案外走れるもんだな」
「もう二度としないでください……本当に死んだかと思いました」
正規のルートで外に出てしまうと、出国したことがランド騎士団長にバレてしまう。
別に咎められることはないだろうが、行かないでくれええって泣かれるのは困るんだよな。
なので壁を伝って外へ出た。監視塔に気づかれないようにフェルンが水の魔法で水蒸気も出してくれた。
相変わらず魔法はかっこいい。
でもやっぱり身体が重い。
平和って最高だけど、大変なこともあるな。
……なんか、深いこと言った気がする。
「言ってないですよ」
「ハーフエルフって、心も読めるの?」
「ヤマギシさんが一人でニヤニヤし始めたら、なんか変なことを考えていることが多いので」
「へえ、そうなんだ。さすがフェルン、俺のこと何でも分かってるな」
「そんなことないですよ。今回も体調不良にもっと早く気づいていれば……魔物を沢山連れてきたんですが」
「おお、過激なこと言うようになったね!」
「ヤマギシさんから言われるとへこみます」
「はい」
「はい」
ベルディの外は整地されていたが、南へ向かっていると景色が変わっていた。
いい意味で砂埃や大きな岩が目立つようになってくる。
やっぱこういう荒々しい感じのほうが落ち着くな。なんか、前線を思い出すけれど。
「ちなみに、南へまっすぐ行くとファリス国というところに着きます。詳しくは知りませんが、女性の王様がいらっしゃるらしいです。頭も相当切れるとエリーナさんが言っていました」
「そうなんだ。強いのかな?」
「肩書より大事なんですね……でも、噂によるとかなりの腕前らしいです。戦争があったときは、王自らが出向くこともあるらしく、相当な軍事国家だと」
「おお、めちゃくちゃいいじゃん! 喧嘩売る!?」
「やめましょう」
「はーい。お、魔物の匂いがしてきた」
砂埃に交じって魔力がツンと鼻につく。
この特有な感じが大好きだ。思わず身体がうずうずしてくる。
同時に全身が喜んでいるのもわかった。
――戦える。殺せる。――血が、見られる。
「なんでわかったんですか?」
「んーなんでだろ。言葉で説明できないんだよな。匂うというか」
「匂う……」
「あと、けっこー強いみたい。フェルンの言う通りだな」
「え? いや、このあたりはまだ――」
次の瞬間、地面から砂埃をまき散らして巨大な岩の魔物が現れた。
砂と魔力を混合しているらしく、おもしろい防御魔法を自身に付与している。
前に戦ったことのある
「こ、この魔物
「それは最高だな。――巨剣、どうだ? いけるか?」
懐の小さくなった短剣に声を掛けてみるが、返事がない。
どうやら眠っているみたいだ。
「フェルン、悪いけど久しぶりに
「――わかりました」
次の瞬間、俺の手に冷気を感じた。
怯えた声を出しながらも、俺の言葉をしっかり聞いてくれている。
鞘、柄、透明な青くて美しい氷の剣が瞬時に出来上がっていく。
以前よりも魔力が満ちている。毎日隣で瞑想してたけど、それのおかげなのか。
――最高だ。
「ありがと。じゃあ、ちょっと運動してくるね」
フェルンにそう言って、まっすぐに駆ける。
ゴーレムは俺を敵だと認定し、拳を上から振りかぶってきた。
デカいから遅いと思っていたが、想像よりも速い。
いつもなら容易く回避できるが、やっぱり体が重かった。
寸前のところで左側に飛んで逃げる。
うーん、思ってたより相当弱くなったな俺。
「ヤマギシさん!」
フェルンの叫び声と同時に、ゴーレムは腹部から魔法のエフェクトを展開した。
身体の一部を岩の弾にして飛ばしてくる。
なんだこいつ、無詠唱ができるのか。
「――おもしれえじゃん」
だがすべて叩き切りながら前に進んで、一撃を与えた。
いつもならこれで終わり。だが、やっぱ力が足りてないのか表面をえぐっただけだった。
「グオオオオオオ!」
デカい怪我は負わせられたみたいだが、もっと切り刻まなきゃいけないみたいだ。
くっそ硬いが、とはいえ魔物だ。
ちゃんと血もあるらしく、赤い血が吹き出してくる。
直後、俺の体に返り血が付着した。
ぬくもりが気持ちよくて、まるで湯舟に浸かっているみたいで安心する。
――あァ、やっぱ殺し合いって最高だな。
「――死ぬまでやろうぜ」
――――
――
―
「……一撃も食らわずに倒すだなんて、ヤマギシさんはやっぱり凄すぎます」
時間はかかったが、何とか倒すことができた。
ゴーレムは魔力を失い、砂になっていく。
腹部から出てきたのは、茶色の塊だ。確か魔法石だっけか。
こういうのよくわからないからいつも放置してたけど、フェルンからもったいないと言われるから今後は気を付けないとな。
あァ、楽しかった。
やっぱり戦っていると、段々身体の調子がよくなってきた。
「ヤマギシさん、凄く楽しそうでしたよ」
「やっぱり? すげえ気持ちよかった」
「魔族は戦闘民族だと聞いていましたが、まさにそれを認識しました」
俺は、魔王と人間の子供、ハーフだ。
人間の感情の機微はよくわからないし、善悪の区別もあんまりできない。
でも、最近はフェルンのおかげでわかるようになってきた。
俺は誰を殺しても、死んでしまっても、特に何も思わない。
でも、フェルンが悲しむ姿は見たくないんだよな。
「この魔法石持っていったら結構お金になるんじゃない?」
「だと思います」
けれどもフェルンは、魔法石よりも先に俺に近づいてきた。
何をするのかと思っていたら、布で俺の頬を拭いてくれる。
「汚れていますから、先に綺麗にしておきますね」
「ありがとう。フェルンって優しいよな。色々と気が付くし」
「そんなことないですよ。でも、あまり無茶しないでください。もっと弱い魔物と戦って、体を慣らしていきましょう」
「わかった」
「でも、やっぱりおかしいです。こんな強い魔物が突然現れるだなんて……普通は、なかなか縄張りから出てこないはずです」
フェルンが魔法石を手に取りながら考え込む。
「こいつより強い魔物がいるんじゃない? 人間も魔物も、敵わない相手がいたら移動するからね」
「……なるほど、ヤマギシさんって本当に頭がいいですよね」
「そうかな? でも、ますます楽しみができたな! いっぱい殺したい!」
「満面の笑みで言わないでください」
「ごめんなさい」
食料の問題もあるし、ひとまずファリス国へ向かうことになった。
フェルンも詳しく知らないし、ついでに見聞も広めようってことで。
ただ、ここから大変だった。
砂ぼこりがめっちゃ多い。ゴーレム弱いが、魔物もけっこー出てきて、思ってたよりも時間がかかってしまう。
俺としては嬉しいけれど、フェルンはちょっとしんどそうだった。
まあそうだよな。木々もあんまりないし、精霊の力を得ることができないみたいだ。
砂の精霊ってのは、今のところいないらしい。
夜になり、デカい岩を見つけて眠ることにした。
小さいけど木も生えてたので、精霊に頼んで、魔物避けをしてくれるらしい。
「俺はもう少ししたら寝るよ。先に眠ってて」
「いい……んですか」
今までずっとベルディでのんびりしてたんだ。いきなり動きまくって疲れたんだろうな。
「ありがとう……ございます。では……お言葉に甘えます」
「はーい」
すやすやと眠るフェルンの寝顔を見ていると、何だかほっこりするな。
この感情は……いったい何なんだろう。
俺も寝ようかと思っていたら、懐がごそごそと動いた。
巨剣ならぬ、短剣だ。
「……howiw」
「ん、確かに」
普段なら気づくが、言われてからわかった。
結構離れた場所から巨大な黒い魔力を感じる。
なぜか知らないが、魔力を漲らせて臨戦態勢を取っているようだった。
近くに魔物の気配はない。木々のおかげでフェルンは大丈夫だろう。
疲れてる彼女を起こすのはかわいそうだし、安全のためにちょっと見に行くか。
「行くぜ、相棒」
「gjow」
十分ほど走った先で、思わず足を止める。
俺は今まで多くの魔物と戦ってきた。けれども、過去を対としても見たこともない巨大な魔物がいた。
美しい両翼、魔力が満ちた鋼のような鱗、深淵を見つめる赤い目。
――巨大蜥蜴だ。
「こんなデケの初めて見た。何食べたんだろう」
どうやら、何かを待っているみたいだ。
まるで、戦争の前触れのような感じがする。
「相棒、調子どう?」
「……gajwog///」
「ハハッ、お前も興奮してるか」
俺たちは心で繋がっている。こんな殺意たっぷりの魔力を肌で感じちゃ、体が疼くよなあ。
見たところかなり強そうだ。いや、めちゃくちゃ強いかも。
でも、こいつを倒せば早く体調不良が治りそうだ。
フェルンに迷惑かけるのも嫌だし、一人でできることはしておきたい。
いつも言われてることだしな。
俺は、懐から相棒を取り出した。
めちゃくちゃ小さい。まるでおもちゃみたいだ。
まあでも、戦ってたら魔力を吸い取って大きくなっていくだろう。
「さてと、じゃあ蜥蜴退治といきますか!」
――さて、
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