第28話 なァ、相棒。

 ヤマギシの参入で、戦況は大きく変わった。


「――視える斬撃ぃ! 視えない斬撃ぃ! どっちでもない適当な斬撃ぃ!」

「う、動きすぎだってヤマギシ、お、落ちるぅ」

 

 巨大な虐殺蜘蛛デスクリーチャーはなすすべもなく倒され、通常個体の虐殺蜘蛛デスクリーチャーもたったの一撃で落とされていく。さらに攻撃を終えると透明化する。

 敵は、ヤマギシに対して攻撃の手段すら見いだせないでいた。


 ついにトラバ軍は人間兵士を投入、最新鋭の魔法兵器を使って魔力弾を打ち出していく。

 しかしそれにいち早く反応したのは、片耳が人間、もう片耳がエルフのハーフ――フェルンだった。


「――魔力よウィザード通さずフェール捕まえろキャプチャー

 

 先頭に立ち、静かに呟くと、敵の攻撃だけは通さない魔力の膜を生成した。

 魔力の弾丸は空中で静止し、地面に落ちていく。

 さらにフェルンは、ベルディ騎士の手元に氷剣グラスエース氷盾グラスシールドを精製した。

 それは、今まで攻撃の通らなかった虐殺蜘蛛デスクリーチャーの外殻を突き通す威力を有しており、氷刃が欠けたとしても自動で再生する魔力が付与されていた。

 魔法は創造の世界である。ヤマギシとの出会いで不可能なんてないと心の底から思えるようになったフェルンの魔法は、究極の域に近づいていた。


「な、なんだよこいつら……」

「こんな化け物、聞いてねえぞ」

「ひ、ひ、ひ、ひぎゃっあぁっあ――」


 そんな中、トラバ兵士のど真ん中に突撃していったのは、アルネと後輩だった。

 ただ影だけが通っていく。


 言葉を交わすこともほとんどないものの、二人は敵の視界に映らないように兵士を倒していく。


 さらに巨剣が操る虐殺蜘蛛デスクリーチャーは、氷の防御が覆われた状態でトラバ兵士に突っ込んでいた。


「な、なんでだよお、簡単に蹂躙できるって話でふぎゃっ――」

「ひ、に、逃げろおおおお」

「こんなの、勝てるわけがねええ……」


 敵前逃亡は死罪だが、トラバの兵士は後退するしかなかった。

 

 

 それを見ていたうえで、ランド騎士団長は油断していなかった。

 ヤマギシの洗練された動きに焦がれながらも、気持ちを引き締める。


「存分に焦がりてえが、今はまだその時じゃねえな。――エリーナ!」

「推しカプかっこよすぎ……ちゅき。だいちゅき。ふたりだいちゅき……あーちゅき。ちゅきぃ……尊いぃ……いっしょに仕返しするぅ」

「おい、エリーナ!」

「は、はい! なんでしょうか!」

「手負いの獣ほど怖いもんはねえ。念のため、ボーリーとヤマギシの護衛をしてくれ」

「ハッ! ありがたき幸せ、承知致しました――あああああ、今行きますわああああああああああああ!」


 雄たけびをあげながら、エリーナは駆けていく。

 ボーリーも合流し、ふたたび前線へ向かっていく姿を見て、ランド騎士団長も勝利を確信したが――。


「ランド騎士団長!」

「なんだデュアロス、メガネが曇ってるぞ」

「だ、大丈夫です。これは魔力の蒸気で――いや、それはいいです! 何やら不気味な魔力反応があります。トラバの後方からです」

「なんだと? どういうものだ?」

「わかりません。感じたことのないものです」


  ◇


「クソクソクソクソ、なんだこれはどういうことだああああああ。なぜ我らの虐殺蜘蛛デスクリーチャーが勝てぬのだああああ」


 バルドラ国王は、地団太を踏みながらその場で叫んだ。その横、ベドウィンは静かに逃げようとしていた。


「おいベドウィン!」

「ひっ!? は、はい!」

「元はと言えばお前の部下のせいだ! ヤマギシを死刑にしようとしたのが間違いだったのではないか!」

「そ、そういわれましても!? あいつはスパイだと国王様も!?」

「黙れ、黙れ黙れ! この戦いに負ければ虐殺蜘蛛デスクリーチャーの存在は明らかになり、私は確実失脚する。そうなればもう……終わりだ……」 


 情緒が不安定になったバルドラは、穴というから穴から液体を垂れ流していた。

 そして、突然に笑いだす。


「はははは、はは、ははははそうだ。わかった、わかったぞ。奴らは善人だ。そうだ。そこをつけばいいのだ」

「こ、国王様……な、何を」

「ベドウィン、最後の命令だ。――死んでくれ」


 それから少しすると、虐殺蜘蛛デスクリーチャーが後ろに下がっていく。

 トラバ兵士もやれ幸いと後方に引く。

 エリーナとボーリーは不気味さを感じ、あえて深追いは避けるように伝えた。


 魔力の不協和音と共に姿を現したのはヤマギシ。


「なんだ、終わりか?」

「――ヤマギシ、降ろしてくれ。魔力がもう尽きる。俺はお荷物だ」

「えー!? まだやりたい必殺技、五個ぐらいあるんだけど!? なんとかひねり出せない!? 足からこう、ぐっと魔力持ち上げる感じでさ!?」

「俺は歯磨き粉じゃねえんだ……無茶いうな」

「そっかあ……」


 項垂れるヤマギシ。フェルンも隣に合流した。


「ヤマギシさん、どうします?」

「追いかけて全員ぶっ殺して終わりかなあ。でもなんだっけ、こういうのってお偉いさんだけ残してたほうがいいんだろ? 政治的に」

「そうかもしれませんね。あれ……あの人……私、知ってます。確か、ベドウィン団長です。私を……捕まえた人です」


 前方からベドウィンが歩いてくる。なぜか、たった一人で。


「え、そうなの? じゃああいつは全殺しだな」

「初めて聞きましたよ。その言葉」


 フェルンは過去の記憶を思い返していた。

 森で一人で暮らしていたら、突然現れたトラバの兵士たちに襲われ、引き離され、捕まえられたこと。


 連行されたあと、檻の中には様々なハーフがいたこと。

 世間では役立たずとされているのに、なぜかハーフばかり。


 すると、ベドウィンは突然叫び始めた。


「ひ、ひあ、ああいあ、偽善者ども! よく聞けええ!」


 呂律が回っていない。様子がおかしいことにベルディの兵士も気づく。

 罠かもしれないと、ランド騎士団長は手を出さないように伝えた。


「お前たちに教えてやる。この馬鹿どもが、この偽善者どもが! 虐殺蜘蛛デスクリーチャーの正体は、お前たちのお仲間なんだよ!」


「……まさか」


 すべてが繋がったフェルン、思わず手に力が入らなくなる。

 ハーフの獣人たちが次々と連れていかれ、そして帰ってこなかった。

 自分はなぜ捕まえられたのか。それが、すべて――。


「へへ、へへ、わかるか? お前たちは仲間を殺したんだよ! わかるか? なあ! 捕虜としてとらえたベルディ兵士もだ!」


 たとえ戦争であっても捕虜は大事に扱う。

 そんな当然の常識を破られたとわかったベルディの兵士は、自らの手で同胞を殺したかもしれないと心を震わせた。


「ひ、ひ、ひ、バカめ。馬鹿どもが。地獄に落ちやが――れぇえっああああああ」


 次の瞬間、ベドウィンは身体をくねらせた。

 魔力が身体の内側から飛び出していくと、血肉が噴き出す。

 関節が折れたかと思えば、なんと虐殺蜘蛛デスクリーチャーに変化していく。


 それを見て、ベルディの兵士はベドウィンの言葉が真実だったことに気づく。


 さらに奥から虐殺蜘蛛デスクリーチャーの慣れの果てが次々と現れた。

 トラバの兵士の姿が現れない事にも気づく。巨剣が操っていたはずの虐殺蜘蛛デスクリーチャーまでもが、敵意をむき出しにしていた。


「……バルドラ国王め、ついに一線を越えやがったな」


 ベルディ国では、ハーフが誘拐される事件が多発していた。

 つまり、トラバが虐殺蜘蛛デスクリーチャーを作るために犯罪を犯していたと、ランド騎士団長は理解した。


 このまま戦うことは、同胞を殺し続ける行為になる可能性がある。

 そんなことはさせるわけにいかない。

 だがしかし、ここで見過ごすわけにもいかなかった。


 ランド騎士団長は唇を強く噛んだあと、覚悟を決めた。


 同時に、エリーナとボーリーもランド騎士団長の顔を見る。


 三人は覚悟を決めて、そして頷く。


「エリーナ、ボーリー、行くぞ」

「「ハッ」」


 しかし、それを止めたのはヤマギシだった。

 巨剣を使って、通れないようにする。


「みんな、殺したくないんだろ」


 ランド騎士団長は「それでもやらねばならぬ」と答えた。


「いいよ。後は全部俺に任せてくれ。――後は、俺だけでいい」


 フェルンはヤマギシの覚悟に気づき、慌てる。


「ヤマギシさん、まさか一人でやるつもりですか」

「ごめんな、フェルン。俺はやっぱりみんなと違う。どこまでいっても、俺は戦うのが楽しくて仕方ない。俺は、殺すのが好きなんだ。それが、俺なんだ。だから任せてくれ。俺が、すべて殺すから。全部、やっつけるから。誰も、傷つかないで済むから」

「ダメです。何を言っているんですか!? ヤマギシさんが全部背負う必要なんて――」

「――フェルン、それにみんな、ちょっと離れといてもらっていいかな。んで、すべてが終わっても俺に近づかないでくれ。どのくらいかわかんねけえど、魔力が抜けるまでは、ちょっとかかるかもしれねえから」


 ランド騎士団長は、ヤマギシの膨れ上がる魔力に気づき、急いで撤退命令を出した。

 エリーナもそれに気づき、ボーリーと共に騎士を下がらせる。


「髪がここにいては死ぬと言っている。引くぞ!!!!」


 虐殺蜘蛛デスクリーチャーは、トラバの兵士の数だけ増え続けていく。

 さらに魔力を底上げする魔法が付与されたのか、先ほどまでよりも強い魔力を有していた。

 それを見たアルネと後輩が呟く。


「せんぱい、どうしますか」

「……今の私たちの魔力では足手まといだ。それに間違っていた。この魔力は狂乱のバーサーカーフレンジー、まさにそのものだ。引くぞ」


「お、おいフェルン、行かねえと!」

「で、でもヤマギシさんが――」

「いいから、離れるぞ!」


 マンビキはフェルンの腕を掴むと無理やりに後ろへ引っ張った。

 ヤマギシは更に魔力を膨らませていく。




 やがて周りに誰もいなくなったとき、ヤマギシは不敵な笑みを浮かべていた。

 おそろしいほどの、殺意も感じられる。


「久しぶりだ。なんも考えずに殺せるのは。――なァ、相棒巨剣

「hifaiiwfw///////」


 虐殺蜘蛛デスクリーチャーが一斉に叫び声をあげたとき、ヤマギシの身体には黒い模様――呪印が浮かび上がっていた。

 さらに髪が伸びていく。目も暗くなっていく。



 それを遠くで見ていたランド騎士団長が、声を震わせる。


「これが……狂乱のバーサーカーフレンジーか」




 そしてフェルンが、



「……人間と、魔族の……混血ハーフ……」



 静かに、答えを呟いた。



 ――――――――――――――――

 ついにヤマギシの秘密が明かされました!(まだ一部)

 なぜ善悪の区別があまりつかなかったのか、人の気持ちがわからなかったのか。

 

 残り三話ぐらいで(多分)、一章完結です!

 最後までよろしくお願いします!


 そして日間、二位になってしまいました。

 最後まで頑張りたいです! カクヨムコン10にも応募しています!

 どうかどうか、☆☆☆をいただけますでしょうか? フォローもよろしくお願いします!


 *追記(サポートさんが増えたので、限定でSSを投稿しました)

 タイトルは『xxxしないと出られない部屋 with ヤマギシ&フェルン (サポート限定)』です。

 後日『xxxしないと出られない部屋 with マンビキ&後輩』も投稿します。

 


 作者を応援するぜ! って思ってくださった方は本作をフォローと☆☆☆をお願いいたします……!


 さらに応援するぜ! って読者様は、作品タイトルの下にある、作者フォローもお願いします! 


 さらさらに応援するぜ! って読者様は、文字付きレビューまでお願いします!!!!



 現在進行形の出来事。


 *虐殺蜘蛛デスクリーチャーは命を犠牲にして作られていた。

 *ベドウィンを含むトラバ兵士が、虐殺蜘蛛デスクリーチャーの慣れの果てになった。

 *ヤマギシが、本当の姿になった?



 これからも、ちょっと変なヤマギシとフェルンをよろしくお願いいたします。


 そしてて是非、フォロー&☆☆☆でぜひ応援をお願いします!


 コメントも!!! ほしいです……!(; ・`д・´)



 


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