第26話 全員、ぶっ殺してやるかァ。

 ベルディ村より数十キロ離れた、南側の前線。

 ランド騎士団長が部隊の先頭で蜥蜴竜カーヴドラゴンにまたがり、敵を見据えていた。

 緑の鱗に覆われ、分厚い皮膚と鋭い爪を持つ魔物だ。

 忠誠心が高く、ベルディ騎士団の大事な相棒である。


 視線の先には、トラバの兵士が陣列を組んでいた。

 何よりも驚いたのは、先頭で待機しているのは、かの有名な虐殺蜘蛛デスクリーチャーだった。


「……どんな魔法を使った、バルドラ国王め」

 

 ランド騎士団長が舌打ちをした後、桃色の髪を揺らしたエリーナが声を掛ける。


「ランド騎士団長、魔法隊はいつでも出撃可能です。今は魔力を高める為の儀式を行っております。アルネたちを除く虐殺部隊ジェノサイドも敵の側面へ移動しており、こちらの“声”を待っております」


 続けて左側。ボーリー・コリンがランド騎士団長に声を掛ける。


「魔剣士隊もいつでも出陣可能です。虐殺蜘蛛デスクリーチャーに対しての有効な攻撃手段も周知しました」

「二人ともご苦労。いつもなら先手を仕掛けるところだが……不気味だな。エリーナ、魔法による使役だと思うか?」

「可能性は考えられます。しかし、通常は従者の能力が遥かに上回っていないと不可能です。私たちが確認していた中で、そのような従者の存在は確認できませんでした。唯一可能性があるのならば――」

狂乱のバーサーカーフレンジー、か」

「さようでございます。巨剣を持ち戦っておりましたが、身体能力だけで攻撃を捌いていたとは考えにくいです。何らかの魔法に長けていたと考えますと、強大な使役能力を持ち合わせていたとしても不思議ではありません」

「されど姿見えぬ……か」


 過去に何度も攻撃を仕掛けたものの、一切の攻撃が通らず、アルネたちですら完全敗北を喫した相手。

 ランド騎士団長は、姿見えぬ相手に畏怖していた。

 

 ただそれとは別に驚いたこともあった。


「いいか、剣士なるもの臆するなよ!」

「「「はいっ!」」」


 ボーリー・コリンがその場で叫ぶ。

 一糸乱れぬ統率力。


 だが驚いたことに“髪”がなかった。


 いや、ある。正しくは、ある。


 一本だけ、ピロロと生えているのだ。


 しかし誰もそのことに言及しない。いや、できない。


 ベルディ国民ならば誰もが知っている。

 精鋭部隊がみな一様に毛根を失ったことを。


 命を賭けて戦ったのだ。

 笑うものはいなかった。

 突然フサフサになったボーリーに対しても言及はしなかった。


 なのに突然のことである。


 ランド騎士団長は当然、困惑と笑いを堪えるので必死だった。


「……どういう……ことなのだ……くっ、騎士団長として、できぬ……笑うなど……」

「……ふ……」


 エリーナも頭部を確認したあと、顔を逸らした。

 

 しかしランド騎士団長は、覚悟を決めて直視した。

 さらに声を掛ける。


「ボーリーよ」

「ハッ、どうされましたか」

「何か……心境の変化があったのか?」


 流石に直接訊ねることはできない。それでも、無視はできなかった。


「心から信じることにしたんです。“髪”の存在を」

「ほう、神をか」

「より精度の高い声を聴くため、すべてを取っ払おうと」

「……なるほど」


 何を言っているのかさっぱりわからないものの、ランド騎士団長はボーリーに全幅の信頼を置いている。

 なので、とりあえず考えるのをやめた。


 そのとき、トラバ軍が一斉に声を上げる。

 同時にランド騎士団長が右手を挙げて全軍に指示を出した。


「ベルディの騎士よ! 決して臆するなよ! 我らが正義だ!」


  ◇


「gh8awrfagw////」

「わかったって、ごめんごめん」


 巨剣がずっとスリスリしてくる。めちゃくちゃ寂しかったのかな。

 ただそれよりも、アルネたちは俺に殺意と敵意を向けてきている。


 魔力の質かー。

 何て説明したらいいんだろうな。てか、狂乱のバーサーカーフレンジーって今、俺に対して言ってなかったか?


「――ヤマギシさん、どういうことでしょうか」


 フェルンが小声で心配してくれている。

 俺としては別に敵意なんてないんだが、どうしようかな。

 いつもなら斬るけど、ベルディの人たちイイヤツばっかりだし、なんかなあ。


 どうしたらいいかな。

 こんなときは! イマジナリーフェルン!


『まずは対話です。私たちにはお口がありますから!』


 よし、ありがとうイマフェル。


「聞いてくれ。俺は元トラバ軍だ」

「……それがどうした」

「ええと、順序だてて話すと、濡れ衣を着せられそうに……いや、これは伝わらないか。――俺は前線で一人で戦ってた。そのとき、お前と会ったことがある。覚えてないのか?」

「忘れるわけがない。巨剣を操り、異様な魔力を放つ男と出会ったことはな」

「それ、俺だって。まあそれより、そのとき会話したろ?」

「……会話だと?」


 アルネの頬がピクリ動く。お、思い出したかな?


「えーと、『部隊入らない? 金は言い値で払う、欲しければ“嫁”も』って言ってくれたじゃん」


 なぜか空気がシーンとなる。

 なんで!? いつも俺が話すとこの空気なるの!?


「せんぱぁぃ……狂乱のバーサーカーフレンジーのことやっぱり好きだったんじゃないですかあ! さんざん否定しておいて、実は愛の告白をしてたんですかあ!?」

「う、うるさい! あのときはちょっと強さに興奮して――い、いや違う! 騙されるな! あいつの言っていることなんて全部嘘っぱちだ!」

「その割には顔真っ赤じゃないですかあ! えー何ですか何ですかあ!? 引退後は子供をいっぱい生んで幸せな家族生活ですかあ!」

「な、なにを言ってるんだ。その前に安定した住居が必要だろうが!」


 そこでまた空気がシーンとなる。

 それから青髪の女性は構えを解いた。


「もういいですお。ヤマギシさんでしたっけ? 嘘ついてる感じでもないし、よく見たらそのネックレス、ベルディ冒険者のですよね。巨剣を操れるのはよくわかりませんけど、とりあえず戦うのはやめときましょうよお」

「お、俺も賛成だ! とりあえず双方の言い分は後で考えるとして、まず喧嘩はやめようぜ!? ヤマギシもフェルンも助けにきてくれたんだしさ!?」


 マンビキが更に声を上げ、アルネも魔力を抑えていく。


「……そうだな。今はどうでもいいことかもしれない。色々とあって頭が混乱していたんだ。助けてきてくれたのに、すまなかった」

「いいよいいよ、気にすんなって」


 ふう、なんとかなったみたいだ。良かった良かった。

 ん、フェルンが俺を見てる?


「ヤマギシさん」

「どうしたフェルン」

「“嫁”探しってなんですか。だからずっとベルディに行きたかったんですか」


 え、な、なにどうしたの!?

 なんか怒ってる? そういえば言ってなかったっけ。


「え、いやただそう言われたってだけで――」

「私を闇から救ったのはただの気まぐれで本当はアルネさんと一緒に幸せな家族生活をしたかったんですか。子供は男女で一人ずつ、日当たりのいい風通しの良い住居も欲しいって感じですか」


 フェルンがものすごく早口で喋っている。

 どす黒い魔力も感じる。


「私は私は……私は……ヤマギシさんのことがずっと――」

「ちょ、ちょっと待った! 恋愛はいいと思うし、結婚もいいと思うが、とりあえず俺の話を聞いてくれ!」


 その瞬間、マンビキが声を上げる。


「どうした?」

「い、言うのが遅れちまったが、トラバ軍が攻めてきてるんだ」

「……何だと? どこだ?」

「南のベルディ砂漠だ。既に交戦が始まってる可能性もある。ど、どうする!?」

「……行くに決まってるだろ」


 マンビキのおかげでなんとか止まってくれた。

 良かった……。


「せんぱい、急ぎますか」

「ああ。――マンビキ、悪いが一緒に来てくれないか。お前の力は頼りになる」

「ここまできたら最後まで手伝うよ。――なあ、二人も来てくれないか? 俺はお前らのことはよく知らないし、何だったらちょっと疑ってた。でも虐殺蜘蛛デスクリーチャーに立ち向かおうとする気概は本物だ。狂乱のバーサーカーフレンジーかどうかは関係ない。助けてあげてくれないか」


 俺はフェルンを見る。

 彼女は少しだけ微笑み、それからネックレスに触れた。


「色々言いたいことはありますが、ベルディの冒険者として金一封をもらいにいきましょうか。ついでに、私たちをいじめた罰を与えてやりましょう」

「お、いいね。じゃあやっつけにいくか」

「hgiajfoafaofwaf!」

「落ち着けって! ちゃんと連れて行くから。なあ、巨剣相棒が――虐殺蜘蛛デスクリーチャーも連れて行くって」

「信用できるんだな?」

「ああ、多分」

「そこ多分なの!?」


 マンビキのツッコミはテンションが高くていいな。


「……信じよう。――行くぞ」


 アルネの掛け声の後、俺たちはまた走り出した。

 巨剣、久しぶりだけどなんか重いな。もしかして命いっぱい吸ったのかなあ?

 ちょっと筋肉質なってない?


 あ、


「フェルン」

「どうしましたか」

「ごめんな」

「……何がです?」

「アルネと幸せな家族生活なんて考えてなかったよ。ただ、フェルンと一緒にできる仕事が見つかれば、これからもずっと一緒に居れると思って探してただけだ」


 俺はまだ完全に人の気持ちはわからない。

 マンビキのことも、アルネがなんで怒ってるのかも。


 でも、フェルンが嫌な気持ちなったことだけはわかった。


 それが、大事なことなんだろうってことも。


「……私こそ勘違いしてごめんなさい。ありがとうございます。――さて、切り換えていきましょうか。ヤマギシさん、存分に暴れちゃってください。私が、あなたの背中を守りますから」

「――じゃあ久しぶりにギアを入れるかァ」


 フェルンはそう言ってくれたけど、俺の気持ちはちょっとだけ違っていた。

 前なら殺したい、殺すのがただ楽しみだった。


 でも今はランド騎士団長、エリーナ、ボーリー、メガネクン、ベルディの奴らが傷つくのを見たくない。


 守りたいって、こういう気持ちなのかな。



 でもま、全員ぶっ殺してやるかァ。


 ――――――――――――――――

 そろそろクライマックスですー!

 さあさあ最後だ! ヤマギシ、出陣だー。

 追記*(一章が終わりとゆう意味ですw)



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 現在進行形の出来事。


 *ヤマギシ、フェルン、アルネ、マンビキ、後輩が軍への加勢へ走る。

 *虐殺蜘蛛デスクリーチャーの一部が味方に。

 *巨剣がなぜか少し筋肉質に。


 *トラバが攻めてきている。

 *ランド騎士団、エリーナ、ボーリー、デュアロスが準備完了。


 ボーリーが、髪の存在をより知るため、カツラを取っ払った。



 これからも、ちょっと変なヤマギシとフェルンをよろしくお願いいたします。


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