Magic3.最後のチョコレート

第23話

いよいよ明日は文化祭、午前中で終えた授業のあとはクラスの準備だったり部活の準備だったりでバタバタと忙しい。


「メリーたちのクラスは何するの?」


「うちは映え写真館」


「え、おもしろそーじゃん!何するの!?」


「映えそうな可愛いオブジェ作ってその前で写真撮れるんだ、メインは自由の女神だよ」


「映えの概念すごっ!!」


でも部活に入ってる私はそっちを優先していいってことで、クラスの方にはあまり参加できてない。当日ちょっと顔出す程度だし、オブジェ作りも部活がない時やってたぐらい。


今だってクッキー作りを終えてそらぴょんとチョコ研の当日の看板を作ってる、LL教室で。


家庭科室は小鳩が明日に向けてチョコレート作ってるから、絵の具の匂いさせるわけにいかないしね。


「そらぴょんのクラスは何するの?」


「謎解き!」


「楽しそう!」


「暇だったら来てよね」


「うん、行く!」


段ボールに白の模造紙を貼って、その上に絵を描いていく。


やっぱチョコ研らしく板チョコをイメージしたイラストを基盤にクッキーをイメージした文字で可愛くアピールできたらいいな。


「メリー、案外絵上手いんだね」


「私お菓子作るよりこーゆう作業する方が得意なの!」


「絶対入る部活間違えたじゃん!」


「商品ポップも全部描いたよ!」


私が描いた下絵に色を着けていく、結構上手くいってる気がする。


「ねぇー、メリー」


「ん?あ、そっち大丈夫?」


「うん、こっちは大丈夫…なんだけど」


「何?」


はぁっと息を吐いたそらぴょんが手を止めた。何かと思って私まで手が止まった。


「文化祭…、森中先輩と回りたいんだけど」


森中部長、って名前を言うだけでも緊張するのか手に持っていたハケを置いて両手で顔を隠した。

きゅっとちっちゃくなって小動物みたいな。


「そらぴょん…、そらぴょんには誘うって行為はハードルが高すぎると思う」


「わかってるよ!全然喋れないし、顔見れないし、でも近付くといい匂いするんだもん!」


「…ちょっと気持ち悪いんだけど」


「男なんてそんなもんだよ!」


まぁ、言いたいことはわからなくもないんだけどね。


私だってそうだったし、だから魔法のチョコレートに頼ろうと思ったんだから。


止まっていた手を動かし始める、今日中に絶対終わらせなきゃいけないし。


「メリーは?」


「え?」


「誘わないの?その…好きな人」


好きな人。


また手が止まった。


「あ…、誘われたんだよね」


「え!?マジ!?オージ先輩から!?」


「うん、昨日LINE来て…」


オージ先輩の方から誘ってくれるなんて思わなかった。


ちょっと前の私からしたら夢の夢のまた夢で、話すことだってなかったのに…



一緒に文化祭回らない?


なんて言われる日が来るなんて。



「えー、超いいじゃん!よかったね、メリー!もう絶対イケるよ!!」


「うん、ありがと」


だから、ビックリしたのかな。


すぐに返事が返せなかった。


「メリー…?全然嬉しそうじゃなくない?」


「え、そんなことないよ嬉しいよ!すっごい嬉しい!」


だって好きな人に誘われたんだから。


私の好きな人はオージ先輩なんだから。


嬉しいに決まってる。



…でもどうしてか、小鳩の笑った顔が頭から離れなくて。


森中部長の前で見せたあの顔がどうしてもー…



「あ、もしかしてメリー緊張してる?大丈夫だよ、メリーなら!」


まぶたを閉じるたび浮かんでくる、オージ先輩の顔よりも小鳩のあの顔の方が。


「ありがとう、がんばってくるね!」


なんでかな…

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