Two Chocolate)文化祭のチョコレート
Magic1.チョコレート研究会
第17話
やーっとチョコレート研究会入部の日、中間テストも終わったからこれで私もついにチョコレート研究会の一員になれるんだ。
でも今日はちょっとだけ緊張する、いつもは小鳩しかいないあの家庭科室で先輩である部長も一緒だから。
“あの人は気分屋なので”
どんな人なのかな、小鳩がそう言ってたあの人って。
「1年の柳澤詩乃ちゃんね、入部してくれてありがとう」
シュッとした眉毛にひとつにまとねた長い黒髪が目を引く、ハキハキとした声で軽く微笑むその人は私の抱く気分屋のイメージとは少し違った。
もっとノリとかグルーブで生きてる人かと思ったのに。
「私は部長やってる2年の
「よろしくお願いします」
さらに緊張は増したんだけど、それよりしれっと隣に並ぶそらぴょんが気になって。
「それと同じ1年の笹原宙くんだっけ?これからよろしくね!」
「はい、お願いします」
チラッとそらぴょんの方を見るとニコッと笑った。
なにその愛想の振りまき方…
左手を口を隠すようにあて、こそっと小声で聞いてみる。
「…なんでそらぴょんまでいるの?」
「メリーのついで入部だよ」
いや確かにそらぴょんだって入りたいって言ってたし、私のために協力もしてくれたし、そもそも小鳩が入部の権限持ってるわけじゃなかったから入部してもおかしくないんだけど…
「このちゃっかりさん!」
私のついでっていうのがなんか、なんかねっ
「2人が入部してくれて嬉しい!これで研究会から部活に昇格できるから!」
パンッと手を合わせて目を輝かせる。
私が最初に小鳩に持ち掛けた部活に昇格できる話、やっぱ部長的にはそうしたかったんだなぁ。部費も増えるし、研究会なのに呼び名だけは部長だし、昇格したいよねそりゃ。
「チョコ研の活動内容は知ってる?」
「あ、はい!なんとなくは…」
「名前の通りなんだけど、チョコレートを研究する部活で内容は主にチョコレートを使ったお菓子の調理ね。美味しく楽しくが私のモットーだから好きにしてくれていいよ!」
うん、今ので気分屋って意味が少しわかった。説明の最初に好きにしていいってあんまり言わないと思う。
「それとねルールってわけじゃないんだけど、これだけは守ってほしくて」
部活の決まり…
みたいなのがあるのかなぁ、学校の部活だもん何かしらあるよね。
「ここで作ったお菓子はまず私に預けてもらうことになってるの」
そういえば小鳩が言ってた、完成品は部長に渡すって。
それがチョコ研のルール…
部長に権限があるのはあたりまえかなって思ってたけど、どうしてそんなルールなのかな。
「簡単に言うと、そのチョコレートに群がる女子が多いから」
クイッと眉が吊り上がった。
それを言うってことはつまり…
部長も知ってるんだ、あの噂。
「ワーワー群がられたらこっちも部活にならないから、もういっそのこと私が全部引き取っちゃおうってね!そしたら誰も言って来なくなったから!」
にこりと笑いながら話してるけど、全然目の奥は笑ってない…。
これは本能が言っている、敵に回しちゃいけないタイプだ…っ!
…あれ?
でも小鳩のチョコレートを手に入れたって先輩いたよね?
あの人はどうやって手に入れたの?
「部長、予算の件はどうなったんですか?」
それまでずっと横で黙っていた小鳩が口を開いた。
「あ、あれね!今年も全ッ然話にならない!」
腕を組んでハァっと息を吐きながらぐったりした表情を見せる。小鳩ほどじゃないけど眉間にしわを寄せて、重々しく言い放った。
「またひっそりと売りつけようかな」
………。
へぇ、なるほど。
今めっちゃ悪い顔してましたね???
ふーん、そうゆうこと…
なんとなくわかってしまった。
少ない予算でやるしかない研究会を存続するために魔法のチョコレートが使われてたってことね。
つまりはお金を積めば買えたって話で、チョコ研に入部するより森中部長と仲良くなった方が早かったかもしれない!
そんな裏取引みたいなことがあったなんて知らないし…!
「あ、でも今日から部活なんだから予算アップだよね!ちょっとその辺も話つけてこ!」
…誰に話つけるのかな。
てゆーか私だって群がる女子には変わりなくて、思えば小鳩に拒否られてたのもしっくり来る。
そう考えたら先に森中部長と会わなくてよかった、よね。
「そろそろ文化祭の準備始めるから、今度の部活は何するか話合おう!じゃあ私は予算の計算と部費の駆け引きに行ってくるね!」
そーなんだ、もうすぐ高校に入って初めての文化祭!
チョコ研に入って初めてのイベントだし、それなりにテンションは上がってる。
それと、最近咲希が嬉しそうで。
「今週光介くんの試合見に行くんだ?」
「うん、練習試合だけどね。来てほしいって言われたから」
「いいなぁ、甘々~♡」
いつも咲希が戻って来た。少し照れながら笑う咲希から感じるしあわせオーラからもう何を聞かなくてもよさそうだもん。
「詩乃のおかげだよ、ありがとう」
「ううん!そんなことないよ、咲希ががんばったからだよ!」
うまくいったんだんぁーって、私もしあわせもらえちゃういそう。
よかったね咲希、もう一度気持ちを伝えることができて…
やっぱり魔法のチョコレートはすごいんだよ、なんてね。
何気なく教室の窓から外を眺め、ほわほわした気分で空を見ていた。
「詩乃は?もうすぐ文化祭で忙しくなるんでしょ?」
「うん、まだ何するかわかんないんだけどね。何するのかなー、何作るんだろう?気になるよね!」
何するか話合おう!って森中部長が言ってたから、私たちも案を出していいのかな。
勢いで入ったけど案外楽しみなんだよね、チョコ研の活動。
何するんだろう~、何がしたいかな~
わー、どうしよっ
「チョコ研だからやっぱチョコレートを使ったお菓子の販売だよね!何がいいかな…」
ふわふわ浮かぶ雲を見ながら、チョコレート味のわたあめって作れないのかなって考えてた。でも色合い的に映えないかってすぐに頭の中で却下した。
そんなことをぼぉーっと考える私の方を見て咲希が何気なく言い放つ。
「チョコレートでいいんじゃないの?」
チョコレート?そのまま…??
「だって小鳩くんが作るんでしょ?てことはそれって魔法のチョコレート、になるじゃないの?」
………。
…え?
一瞬フリーズしたまま咲希の目を見ちゃった。
理解するのに少しだけ時間かかっちゃって、小鳩が作るチョコレートって…
「…っ、本当だっ!!!」
本当だ!!!
気付かなかった!確かにそうだ!!
めちゃくちゃ職権乱用だけど、どこよりも簡単に手に入る方法じゃんっ!!!
「咲希頭いいっ!」
「普通に考えればそうじゃない?チョコレート研究会なんだから、作るよねチョコレート」
文化祭に気を取られ過ぎて忘れちゃってた。
そっか、そうだ、まだ私にチャンスはあるかもしれないんだ…!
「やばい、やる気出て来たかも…」
これならスムーズに小鳩にチョコレートを作ってもらえるかもしれない。
「今度こそ、詩乃の番だよ」
咲希がにこっと笑った。その笑顔に勇気づけられる。
「うん…っ、もう一度私もがんばる」
次は必ず、ちゃんと告えるように。
改めて告白するんだ、オージ先輩に。
だからそのためにも…
「詩乃に魔法のチョコレートもらって、本当なのかなって私も思っちゃった」
「でしょでしょ、小鳩のチョコレートはすごいんだよ!」
絶対そんな力があるんだよ、小鳩のチョコレートには。
咲希に言われてなぜか私が鼻高々に喜んじゃった。
「でも…、その魔法のチョコレートの噂ってどこから始まったんだろうね?」
ふとした咲希の疑問だったけど、それは私も明確に答えを持っていなくて“ねっ”としか相槌を打てなかった。
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