第16話

本日晴天、気分上々!私も絶好調!



「よかったんですか?あげちゃって」


部活に行く途中の小鳩に声をかけた。


今日も小鳩はチョコ研の活動に励むらしく、いつもより荷物も多かった。

今日は何するのかな。まぁ私には関係ないんだけど、下駄箱まで一緒に行って私は帰るだけだし。


「うん、いいよ!だってね、それで上手くいったんだよ?すごくない?やっぱご利益あったんだよ、あのチョコレートに!」


「はぁ…、それはお互いの思いが一致してたからじゃないですか。もしくは熱意が相手に届いた、ってことじゃないですか」


「…小鳩って、わっかりにくいけど悪い奴ではないよね!むしろ実は良いのかなって思ってる!」


「柳澤さんは時折失礼ですよね」


いつもはスタスタと足早に歩く小鳩なのに、今日はゆっくり歩いてる…歩いてくれてるのかな、私の歩幅に合わせてくれてるみたいに。


「…だって私咲希のこと好きだもん、好きな人には変わりないの」


結局オージ先輩には伝えられないままだけど、咲希の想いが光介くんに届いたなら…



私だって嬉しいよ。

気分だって明るくなれる。


よかったね、って笑って言えるもんね。



「ただ…小鳩には申し訳なくて。せっかく作ってくれたのに」


「それは構いませんよ、あげたものなので好きにしてもらえれば」


こーゆうドライなとこも小鳩らしさなんだろうな、前までは冷たいって思ってたのに今はそうは思わない。


気付いたら小鳩に詳しくなってしまった。


「でも次はいつ僕に作る気が沸くかわかりませんけど」


「そっか~~~~~、じゃあまたチョコレートフォンデュでもする?」


「しませんよ」


「だって楽しかったんでしょ~~~?そう聞こえたよ~~~~!」


「チッ」


「舌打ちした!?」


久しぶりで、なぜだか笑ってしまった。


舌打ちにも慣れちゃったのかな、私。


チョコレートの件は…

また1から始めてみればいいか!

そしたらもっと小鳩のこと詳しくなれるかもしれないしね。


それもおもしろそうじゃん?


「じゃあ小鳩ばいばい!部活がんばってね!」


下駄箱に着いた、だから帰ろうかなって思って部活に向かう小鳩に手を振った。


「…今日は来ないんですか?」


「うん、いっぱい邪魔しちゃたし、私部外者だし」


あんまりつきまとってまたしつこいって思われるのもあれだし、しばらくは大人しくしてようかなって。


あんまり調子乗るとね、またね、なんかしちゃいそうだから。


咲希の恋バナでも聞いてモチベ上げよ。


「チョコ研…入ればいいじゃないですか」


「え…」


今日は帰るんだって思ってたから、スニーカーを下駄箱から出そうとした手が止まる。


「いいの…?」


「入りたいなら、どうぞ。というか僕にそんな権限最初からないんで」


「……。」


「柳澤さんが本当に入りたければ、ですけど」


「入る!入りたい!入ります!!」


勢い余って、はいっ!と右手を上げて返事をしたら、ついつい声まで大きくなっちゃった。


そんなこと言われると思ってなかったから、小鳩に。


「何度も言わなくても聞こえてますよ」


その声が今までよりも優しく感じて、心の奥で何かが鳴った音がした。


その正体が何かはこの時の私にはわからなかったんだけど。


「今日の活動はチョコレートマドレーヌです」


「マドレーヌ!?え、じゃあその荷物って…」


「薄力粉です」


「ずっと薄力粉持ってたの!?教室に薄力粉置いてたの!?」


それってどんな高校生…!?



まだまだ奥が深いな小鳩結都…


何それ、ワクワクするじゃん。



小鳩のことをまだまだ知れる気がするね、ふふって笑っちゃうくらい胸がぽわっとした。


それはなんだか不思議な気持ちで、心地よかったんだ。



歩き出した小鳩を追いかけて隣に並ぶ。


少しだけ慣れたこの小鳩の隣も、悪くない。




悪くないよ?

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