38話 縄張り
「ここ?」
「おう」
「こりゃあ、ひどいな」
「もっといいとこなかったのかね」
私たちは新しい部室を見物しに来ていた。場所はゴミ捨て場近くの倉庫だった。倉庫自体もかなりボロついており、ゴミの異臭もする。こんなところを部室として使うのは嫌だったが、致し方ない、暫くの辛抱だった。
「よし。じゃあ、開けるか」
辻は扉を勢いよく開けた。中の様子を確認すると、私たちは一旦、扉を閉め、顔を見合わせた。えっと…なんかのドッキリ?
私たちは再度扉を開けた。やはり、状況は変わっていなかった。須賀。なんでここにいるんだ。
私たちが理解する時間も与えられぬまま、扉の開け閉めの音で目を覚ました奴は、こちらを見た途端、怪訝な表情を浮かべた。
「なんか用か?」
私たちは言葉を詰まらせていると、奴は急にハッとした表情を浮かべた。なんだ。
「おまえら、もしかしておっぱじめようとしてたんじゃねえだろうな」
奴はニヤニヤしながら言った。下品なんだよ。お前。
「申し訳ないけど、今日から暫く、ここを部室として使うことになったんだ」
辻は説明した。奴はふっと笑った。
「ここを?こんな小汚ねえとこ、よく使えんな」
お前だって使ってたじゃねえか。早くどっかに行ってほしい。
「売り言葉に買い言葉をしない内に、早くどこかへ行ってもらえるか?」
米屋は言った。気分を害しているのがわかった。南に関してはさっきから口をつぐんでいるが、これは相当きてる。須賀。早く出て行った方が身のためだぞ。
「ここは俺の縄張りだぞ。出てけ」
「ちょっと。困るよ。これじゃあ、活動できないじゃん」
私は嘆いた。
「知るか。ほらさっさと行け」
奴は私たちを追い出すために、私たちの体を押しだそうと手を伸ばした。
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