33話 暗がりに集う仲間たち
部室に向かうために廊下を歩いていたが、電気がついていなかった。部室近くは割と人が寄りつかないため、節電対策なのかもしれない。部屋の明かりがほんの少しついているところもあったため、向かうまでに困難はなかった。
部室に着くと、鍵は空いていた。しかし、電気はついておらず、冬で日が短くなったこともあり、室内の様子はあまり確認できなかった。人は、おそらくいなさそうだった。
置いてあるものを考えると、リアルお化け屋敷だ。なんとなく不気味に思い、私は部室に入り、早々に電気をつけようとしたが、上手くつかない。
「あれ、おかしいな…」
何回か押しても、調子を戻さないスイッチに私はイライラしていると、後ろから声をかけられた。
「それ、壊れてるんだよね」
「わあっ」
びっくりして後ろを振り返ると、両手が荷物で塞がっている辻が立っていた。荷物の中身はアルコールランプやらマッチなど理科の授業で使う道具だった。
「ごめん、驚かせるつもりじゃなかったんだけど」
「う、うん」
やっぱり、いざ目の前にすると気まずかった。何回か会話のシミュレーションをしてみたのにも関わらず、言葉が出てこなかった。私は辻にとって恋敵のような存在なのだから、自分から馴れ馴れしくするのはなんか違う気がするし、私はどうすればいいかテンパってしまった。
「気遣わないでいいよ。これ、火つけるの手伝ってもらっていい?」
そう言って、辻は持っていたものをひょいっと上げた。私はいつも通りの辻であることがわかって安心した。
「勿論!」
「アルコールランプとか使うのちょー久々なんですけど」
「俺も」
アルコールランプはサイズが小さかったため、いくつか火をつけて、部屋を少しでも明るくする必要があった。作業自体は単純なため、そこまで時間は要さなかった。
「これって、もしかしてあそこから取ってきたの?」
「そうそう。俺らが閉じ込められた、あの場所からね」
「やっぱり!」
「うん。あと、どうやら直すのに少し時間がかかるらしいから、次の活動日から暫くの間、別の部室を用意してくれるって。今日は急に活動するの決めちゃったからここでだけど」
「なるほどね」
そうして、最後のアルコールランプをつけ終わり、私は部屋の空気感に圧倒されていた。
「なんかホラー感増してない?」
「思った」
「ところで、2人はまだ来てないの?」
「南は来たんだけど、アルコールランプの話聞いたら、干し芋炙りたいから買ってくるって言って、コンビニに行った。多分そろそろ戻ってくると思う。米屋くんは南が言うには、店番を頼まれちゃったらしいけど、彼もそろそろ来れると思う」
「そっか」
「いやー!おまたせ!」
噂をすれば、この部屋の雰囲気に似つかわしくない元気な声をあげて、南は入ってきた。南は持っていた袋をガサガサと音を立てながら、こちらに向かってきた。見た感じ、買ってきたのは干し芋だけじゃなさそうだった。
「随分といっぱい買ってきたな」
「この時間、お腹空くじゃん?」
「にしてもねえ。お、さきいかもあるじゃん。ナイス」
「ありがと。さあ、米屋には悪いけど、先に食べよ食べよー」
薄暗い中、ガサゴソ音を立てて袋を漁る姿は、泥棒と間違えられてもなんら不思議ではないレベルで怪しかったが、私たちは今目の前にある食べ物に自然と傾倒していた。しかし、それを遮る奴が現れた。
「悪い!ちょっと遅れた。これお詫びにうちの店で余った惣菜持ってきたんだけど、」
米屋はまだ話そうとしていたが、口を動かすのを止めた。
「盗人?」
「「「失礼な!」」」
思わずハモっていた。
「俺がボケるのなんて、珍しくないか?いつもはツッコミ担当なのに」
「うん。珍しいね。いいから、その惣菜よこせ」
「ちゃんと聞けや」
米屋にツッコまれても、尚、南は惣菜に釘付けだった。私と辻も惣菜の漏れ出た匂いに嗅覚が刺激されて、空腹度はMAXに達した。
「あ、でも出来立てではないから、少し冷めてる。すまん」
「大丈夫。アルコールランプやマッチと一緒に鉄製三脚と金網、それにアルミホイルも持ってきたから、それで温め直せばいい」
「待って、辻、天才?」
私が言うと、辻はそうだろうと言わんばかりの顔をかましていた。本日、見るのは2回目のドヤ顔である。
「なんか、ちょっとキャンプっぽいね」
南は言った。確かに、食べ物を揃えたら、そう見えてきた。物は言いようだった。
「じゃあ、始めますか!」
私は南が買ってきてくれたペットボトルを掲げた。それに続いて、残りの3人も同様にした。
「「「「乾杯ーー!」」」」
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