29話 決意

「Bが急にいなくなっちゃったんだ。理由はわからないけど、夜逃げっていうことが後でわかった。私たちは何も知らなかった。今考えたら、デリケートな問題だから話すのを躊躇ってたのかもしれない。だけど、当時、私たちはBにとって、頼りなくて、信頼できるような関係性じゃなかったのかもって。それで、私たちは思ってたよりも浅い絆だったのかもしれないって考えるようになっていった。争いごとも増えたし、話す機会は減っていった。結局、Aとは自然消滅になって、Cとはあの一件以来から元々気まずかったから、極力話さないようになった」

 私はどう反応すればいいかわからず、困った。

「はは。ごめんごめん。重い話して。そんな挙動不審にならなくていいよ。話聞いてほしかっただけだからね」

「そっか」

「うん。それでね、私は決めたの。勿論、Bのような件を防ぐことは難しい。だけど、自分の身勝手な行動に気をつけて、友達を気遣うことはできる。だから、それを心がけようって思った。決意のおかげか、私は楽しい学校生活を送れてる。でも、新たに問題が出てきた」

 そう言って、南はこちらをじーっと見た。はい。私のことですよね。

「正直、私は米屋を恋愛対象に見たことはないよ。友達って思ってたから」

「だろうね」

「うん。でも、黒崎くんと南と話して思ったんだ」

「何を?」

「米屋や辻の思いに向き合う必要があるなって。例え、どんな形になったとしても」

 南の顔は少し暗くなった。しかし、首を横に振った。どうやら、南も決意したようだった。

「応援してるよ」

 南は言った。私は深く頷いた。

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