第7話 オーク討伐 1
「じゃあ、今日はありがとうございましたー」
大きく手を振って屋敷へと戻っていくサーラ様。
とりあえず今日はサーラ様に何事もなく依頼を終えることができた。
俺は緊張が解け少し脱力する。
「あれ、そういえば依頼報酬もらってなかったぞ?なんでだ?」
「ああ、アルベルト様からギルマスに渡して、それを俺たちが受け取る形になるぞ。昨日領主様のお屋敷で話しただろ?」
「いやー、俺にはほとんど理解できなかったからな。ほとんど聞いてなかった」
やっぱりか、屋敷ではずっとぼーっとしたような顔をしていたからな。
「では、私たちも解散しましょうか。そういえば、依頼報酬がもらえるのって明日でしたっけ?」
「ああ、そうだったぞ。多少は遅れたりすることもあるだろうけど」
「じゃあ、明日の二の鐘(十二時)にギルドに集合しましょうか」
「ああ」
「わかった!」
そうして、俺たちはその場を後にした。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
俺たちはギルドに集まってギルマスから依頼報酬を受け取ろうとしていた。
「あー、皆さんこんにちはー」
なぜかギルマスと一緒にサーラ様もいた。
(......あれ、今日も来るって言ってたっけ?いや、聞いてないんだが)
俺たちが困惑していると、サーラ様が話始める。
「あっ、すみません、今日は何も伝えずに来ちゃって。お父様に無理言って来ちゃいましたー。あっ、依頼報酬はちゃんと出るから安心してくださいね」
「...あっ、そうですか」
一瞬反応が遅れてしまったが、どうやら今日もサーラ様の護衛をするようだ。
「今日もサーラ様の護衛をしていただきますが、その前に昨日の依頼報酬を渡しておいたほうがよろしいでしょうか?」
ギルマスがそう尋ねてくる。
「ああ、そうしてくれると助かる」
なんせ、一昨日の打ち上げでアリシアが食いまくったせいで俺には金がないからな、まだ少し余裕はあるが。
「わかりました、では、これをどうぞ」
そうしてギルマスが懐から取り出したのは、一つの革袋。
「ここに六枚の金貨が入っています。自分たちで分けておいてください」
「ああ、わかった」
そうして、俺はみんなに金貨を二枚ずつ分ける。
正直この護衛依頼、デメリットを抜けばかなり割のいい仕事だよな。
「では、早速行きましょうか」
「はい!」
そうして、俺たちはまた森へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
森に入った。
「それで、今日はどんなことをしたいですか?」
「そうですね......昨日のゴブリンよりも強い魔物を倒してみたいです!」
強い魔物か...オークあたりがちょうどいいかな。
オークとは二足歩行の豚のような見た目をしているCランクの魔物だ。C+ランクほどの実力の俺だったら、一人で二、三頭ならぎりぎり相手にできるくらいだな。
ちなみに、ゴブリンはDランクの魔物だ。
「では、オークを倒してみましょうか。まあ、ゴブリンと違ってそんなに数がいるわけじゃないので一日に二、三頭見つけることができたらいい方ですけど」
ゴブリンよりも個体数が少ないからな。
「わかりました!オークですね!」
まあ、そんなに簡単には見つからないと思うけど......
一時間後。
「前方二十メートル付近にオークを二体確認しました」
「おお、今日はオークが多いな!」
「しっ、気づかれますよ」
おかしい、今日だけでもう六体目だぞ。いつもはこんなに多いことなんてなかったのに......
少し不安を覚えながらオークがいるところまで近づいていく。
「
サーラ様がそう唱えると、二つの風の刃がオークの首めがけて飛んでいく。
そして、その風の刃はオークの首を勢いよく刎ねた。
「やりました!」
「ええ、すごいですね、魔法の威力」
ギルマスが、サーラ様にはBランク相当の実力があるって言っていたのも頷けるな。
「そういえば、かなり森の深いところまで来ましたね」
ふと、気づいたようにアリシアが言う。昨日ゴブリンを狩っていたときは森の浅いところにしか入ってなかったからな。
「そういやそうだな、確か近くに村があったような...」
「そうだったか?」
ギルバードはやっぱり覚えていなかったか。
「ああ、小さい村だけどな。昔俺がまだ駆け出し冒険者の頃、森で迷った時に助けてくれたんだよ、みんな優しい人たちでな」
「へえー、そんなことがあったのか」
前のお礼も言いたかったし、ちょっと寄ろうかな。
「少し寄り道をしたいんですけど、良いですか?」
「はい、いいですよー」
念のためサーラ様に了承を取った。
「じゃあ、私は進行方向に魔物がいないかどうか偵察してきますね」
「ああ、頼む」
アリシアは一人静かに走っていく。
しばらくすると、アリシアが慌てた様子で戻ってくる。
「......ギークがさっき言ってた村らしき場所が、オークの集落になっていました」
「...なに?」
オークに、占拠されたのか?
「人の気配はあったか?オークはどれくらいいた?」
「人の気配は全くなくて、おそらく全員オークに......オークは全部で十数頭くらいいました」
「十数頭か...」
それくらいの数なら俺達でも対処できるか......
「じゃあ、今からそのオークを全滅させるぞ、サーラ様も覚悟はいいですか?」
「はっ、はいっ!」
こういう護衛対象を危険にさらすような行動は、護衛依頼を引き受けている者としては取るべき行動ではないのかもしれないな。
だけど、世話になった、いや、世話になっていなくても、村を襲って村人を殺したオークたちを見逃すことは、俺にはできそうもない。
「じゃあ、行くぞ」
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