甘く溶かされたのは――読者でした

人とのかかわりを極力排除して森の中で静かに暮らす魔法薬師のエルナ。
そんなエルナのもとに、数少ない友人であるタングリーがよれよれの青年を連れてきます。
その人物とは、ある事情により国政の表舞台を退いた「引きこもりの王」オルリアでした。

王宮に渦巻く陰謀や彼女自身の出生の秘密に翻弄されながら、いつしか惹きあうオルリアとエルナ。
なかなか進展しない関係にやきもきする場面も多いですが……ゆっくりと確実に変化していく二人の感情がとても丁寧に描かれていることで、まるで自分のことのように応援する気持ちが湧いてきます。

脇を固めるキャラクターも敵味方問わずみんな魅力的で、それぞれを主役にしたお話が作れるのではと思うほど。
気付けば物語に没入し、登場人物とともに笑って悩んで……感情を共有していました。

だからこそ喜びもひとしおのハッピーエンド、密かにエルナに思いを寄せるタングリー君がちょっと可哀想ではありますが……彼の後日談もちゃんと用意してある親切設計です!!

何から何まで百点満点、自信を持ってお勧めできる作品です!!

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