ディストピアで家畜扱いされてるケモミミヒロインを助けようとしたら、結局世界を壊しちゃいました。世界が完全消滅する前にスキルでどーにか作り直します。 ~スキル『増築』で魔王城はセカイになる~
土皮畳
1
第1話 解体ショー
肉の香ばしい湯気に揺られる様々な光。
月明かりの作り出す影を拒む町。
あまり気にいらねーけど、キレイなもんだ。
それに、こちら側が実に寂しくも思える。
「つまらない景色を見て何が楽しいんだい? こんな高いとこにいたら危ないし、早く寝る準備しなよ……」
欠伸しながら興味なさそーに呟く隣、いいや肩からの声。
この青髪全裸小人妖精は、この城で唯一の同居人で他人には見えない。
オレが小さい頃から右肩にずーーーーーっと座っていて、時々こんな風に喋る悪霊のようなものだ。
もう16歳だってのに、見張り台の屋根上で飯食って何が悪い。
外出だっていちいち止めてきやがるし、いい加減にオレから離れろっての。
パッと、遠くに見えるビル群が強い光に照らし付けられた。
何だ? よく分からんし……最近は寝付けねーし、見に行ったるか。
城内を通って降りるの面倒だ、こっから飛ぶッ!
「あんなの、わざわざ見に行かなくていいのに。それにこんなところから飛び降りて、どういうつもり? 死ぬかもよ」
「死なねーよ」
風を切りながら城壁を、崖を落ちていく。
そして緑の生い茂る森に突っ込み、ゔぐぅ! 頭が……。
奇妙にも道の外側から曲げられたガードレールを、オレは作り上げてしまった。
……まー、無茶したが。
休むほどじゃねェ。
よし、ここからでも光は見えるな。
すぐに消えちまうかもしれねーし、何やってんのかさっさと見に行こう。
この辺りのはずなんだが、人集りで進めん。
入り口のアーチにぶら下がった看板には、白いペンキでデカデカと何か書いてある。
第203回獣人解体ショー……?
奥で何してやがるんだ。
「おい妖精、ありゃ何だ?」
「帰りなよ。シヘタが気にすることじゃない」
アーチによじ登り、全員の向いている先へと首を向けた。
そこでは斧を持ったデカい男の人形、その他には数人が壇上に立ってジッとしたまま動かない。
ん……?
何だ何だ、あの座り込んでる裸の子は?
薄桃色の髪で、フワフワしたツノと先の白いヒモみたいなのが付いてて妙に惹かれる。
そして果実のような暖かさのある赤くキレイな瞳はどこかを凝視し、怯えている様子だ。
しかしどうして裸……まずいぜ、ギリギリ髪で隠れちゃいるがおっぱい見えちまう!
「うわ。シヘタってこういうのが趣味なんだ。それともハダカに興奮してるの? いずれにしても上級者だね」
「オマエが褒めてくるなんて珍しいな」
「褒めてないよ。とにかくこんなことには関わらない方がいい。帰って寝るんだ」
「ヤダ」
あの子といい、この場所は何かが異質だ。
壇上をよく見ると、男が二人倒れている。
デカい血溜まりだ……まさか、死んでんのか? 回復魔法は……間に合わないか。
「では皆さーん。準備ができましたので、若いメス獣人を生きたまま解体していきたいと思いまーす。そちらへ逃げたら捕まえてくださーい」
壇上に白髪の女が上がっていき、あの子の手を掴み、小さなナイフで小さな指先をなでる。
解体って、切り刻んでバラバラにするってことかよ!? させねェ!!!
アーチから滑り降り、人集りを押し退けて進む。
最後の障害物を抜けた先で、何となく感じていた奥の視線と目が合う。
「おい! お前ら、何してやがる! オレは勇者の仲間、城の警備兵シヘタだ。場合によっちゃ全員殺すぞ!」
白髪の女は驚いたような顔をした後、俯いてその黒スーツの裾を揺らしていたかと思うと、笑い声を上げ始める。
途端に下から笑い声が湧き立ち、鳥肌を立てさせるような不快な騒音になる。
うっ、何が面白いんだよ、コイツら……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます