第1話

3人家族の長男で今年新高1となったのだが、幼い頃から親しんでいた祖母の家は、特に恥ずかしさの欠片もなくいれる数少ないところの一つであった。そこには、父の漫画が沢山あり、ドラゴンボールもその一つだ。全巻なぜか背表紙の絵を完成させないバラバラの状態で入っていて、僕はそれらを好んで読んでいた。小学生の頃から勝手に読んでは勝手に棚ごと整理しており、そこに何の漫画があるのかは何となくわかっていたつもりだった。ある時までは。


ミーンミンミンミーン、ジージージー

ミーンミンミンミーン

2024年の夏、期末テストの最終日の夜にテスト明けということでひと休みするために俺はおばあちゃん家に寄っていた。

家のある東京の板橋区〇〇から徒歩5分のところにある祖母の家に、俺は小さい頃から足繁く通っていたのだ。

その日は夏と言うにはちょうどいい、風の吹く日であった。祖母の家には18:00集合と呼ばれていたが、僕は父のであろう北斗の拳やキン肉マンの漫画を、実は未だに読んでおらず今更ながらとても興味があったので、とにかく急いで祖母の家に向かって走った。着いたのは16:30前後であったと思う。手を洗いちょびっとうがいなんかをして、急いで階段を登った。そして棚の中をさっと見て、いつものところにある今1番見たい漫画に目をくれた。すると、視界の端に見慣れないゲームがあった。タイトルは『何でもないけど』

「おかしいな?俺の知らないブツがあるだと・・・」そう心のなかで言うと、階段を駆け下り確認のためにすぐに祖母に見せていた。すると一瞬空気が凍り、そして勢いよく爆発した。

「なんでそんなもの持ってるの!」

彼女は激昂し、驚き戸惑い急いでそのブツをタンスの奥にぶち込んだ。そのゲームはRPGもので年代も90年代だったことからおそらく父のであろうものだった。しかし、そんなことはお構いなく彼女はとにかく勝手に乱暴に扱っていた。ましてや、ゲームのげの字しか知らない祖母がその聞いたことないゲームを自分のものと言い張るのを見て、僕はおかしく不気味に思った。いかにも大切に保管されていたそのゲームを、自分のものとすら言うそのゲームを、タンスに勢いよくぶち込んだその奇妙さに僕は大きな矛盾を感じた。そしてできるだけ言葉を選んで、不快にならないように彼女を問い詰めた。それでも祖母は聞く耳を持たなかった。そしてぶち込まれた棚の中には、多分祖母のではないであろう模造銃やトルネコの大冒険といったゲームと一緒に、洋楽邦楽ごちゃ混ぜで何十枚もあるCDが入っていた。僕は怖くなった。いつもの少しふわっとしている何でも許してくれる優しい祖母はそこにはいなかった。なんか不気味で、お笑いのネタにしても2回戦までしか行けないようなとっつきづらい少し理解不能な祖母がそこにいた。そして、タンスに物をぶち込む様子を見たら、僕は今日のところは何も教えてくれないだろう火に油だろうと思い、その日は帰って悩みながら寝た。

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何を隠そう俺は俺。 りんごの芯は食えない? @iJpeo

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