第6話 サイド小町
茉莉ちゃんは覚えてないんだろうな。
そんなこと、わかってたはずなのに、仕方ないって知ってるのに、それでも少し悲しいよ。
本当はね、一緒にドライブ行ったんだよ。
茉莉ちゃんが運転して、私は助手席でさ。何時間もかけて県外の海まで行って、泳ぐ気もなかったから水着も持ってかないで、二人ですごく後悔したよね。
結局、ご当地料理のお店だけ行って、すぐ帰ってきたんだっけ。
本当はね、お盆休みで茉莉ちゃんが岩手に帰省する時、私も付いて行ったんだよ。
私の実家はアパートから近いから、帰ろうと思えばすぐに帰れる距離だけど、茉莉ちゃんは岩手からの上京だから、お盆休みには毎年帰っちゃうじゃない? それが寂しくって、無理を言って一緒に行かせて貰ったよね。
緊張しちゃって上手く話せなかったかもしれないけど、茉莉ちゃんの実家に何泊もできて楽しかったよ。
本当はね、妹ちゃんとも会ってるんだよ。
自己紹介してくれた時に『詩歌の「詩」に華美の「華」で、ウタゲです!』って可愛らしいこと言ってたなぁ。これは内緒にしてるけど、たまに連絡してる仲なんだよ。
マツリとウタゲって、どっちも縁起の良い名前だよね。
あぁ、本当……本当に。茉莉ちゃんたら、本当に綺麗さっぱり忘れちゃってさぁ。
あ、違った。まだ経験してないんだっけ。
忘れられない私がバカみたいじゃん。忘れたくない私が、バカみたいじゃん。
茉莉ちゃん。思い出さなくてもいいから。むしろ、思い出せないままでいて。
だから、ずっと、そのままでいてね。
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