サバイバル・メーカー! -トランプゲーム創造企画部-
沼津平成
1
鈴木が社長をやっている、鈴木ゲーム舎の本社は沼津の和気あいあいとした街だ。
鈴木の作った仮想空間「NEXTEARTH(ネクスト・アース)」は地球に近い“近未来の街”だ。ゲーム内のスポット『沼津』では富士山を望む
2024年12月14日。
鈴木佐直は、ビルの一階へ降りて、コーヒーメーカーと向かい合った。紙コップをノズルの下に差し込み、ボタンを押すと2つのノズルから茶色と白の液が出てきた。カプチーノの完成である。
鈴木が満足そうな表情をした。両手でコップを抱えながら階段を上がる。揺れる揺れるぞ、大丈夫かわがカプチーノ!
と、そのとき階段で一人の女性社員と鈴木はすれ違った。名刺にはこうある――『
』。
*
鈴木は電卓をたたいていた。隣には税理士の男。さっきから5桁から6桁の足し算が続いている。昔はこれが7桁や8桁の時もあった。でも、今はせいぜい1回。それが、さっきの1回――
社員325名とその家族を養う鈴木ゲーム舎の未来がふと心配になって、鈴木は電卓をたたく手を休めた。
「大丈夫ですか。それとも、レシートが汚れてる?」 税理士の声がとんだ。鈴木は我に返った。
「いえ、そんなことはございません」
「そうですか。それならよかったです」敬語こそ使うものの、そっけない。――税理士とはそんなつめたい社会を生き抜く職業である。
サバイバル・メーカー! -トランプゲーム創造企画部- 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel
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