サバイバル・メーカー! -トランプゲーム創造企画部-

沼津平成

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 鈴木すずきなお、三十七歳。ゲーム制作方面でそこそこの成功を起こし、数年前は「遊戯革命王・鈴木」として話題になった。

 鈴木が社長をやっている、鈴木ゲーム舎の本社は沼津の和気あいあいとした街だ。

鈴木の作った仮想空間「NEXTEARTH(ネクスト・アース)」は地球に近い“近未来の街”だ。ゲーム内のスポット『沼津』では富士山を望む駿河するがわんに近い、大海原が埋め立てられ、約十畳ほどの島が作られるというブームがやってきて、それによる漁獲ぎょかくなどの問題に直面しているところである。

2024年12月14日。

鈴木佐直は、ビルの一階へ降りて、コーヒーメーカーと向かい合った。紙コップをノズルの下に差し込み、ボタンを押すと2つのノズルから茶色と白の液が出てきた。カプチーノの完成である。

鈴木が満足そうな表情をした。両手でコップを抱えながら階段を上がる。揺れる揺れるぞ、大丈夫かわがカプチーノ!

と、そのとき階段で一人の女性社員と鈴木はすれ違った。名刺にはこうある――『風見かざみ瑞穂みずほ

』。


            *


鈴木は電卓をたたいていた。隣には税理士の男。さっきから5桁から6桁の足し算が続いている。昔はこれが7桁や8桁の時もあった。でも、今はせいぜい1回。それが、さっきの1回――

社員325名とその家族を養う鈴木ゲーム舎の未来がふと心配になって、鈴木は電卓をたたく手を休めた。


「大丈夫ですか。それとも、レシートが汚れてる?」 税理士の声がとんだ。鈴木は我に返った。

「いえ、そんなことはございません」

「そうですか。それならよかったです」敬語こそ使うものの、そっけない。――税理士とはそんなつめたい社会を生き抜く職業である。

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