第48話 術を止められてしまった
「はぁ〜」
白い息で両手を温める。
一面の銀世界。そう表現するのが一番しっくり来る。
雪が雑音の吸い込み、ただ深々と雪が降っている。
騒ぎの元凶のガマの動きがとまった。霜辰先生の
それを確認した瞬間、空気を揺らす声が沸き立った。今まで逃げ惑っていた生徒の声だ。
数十にも及ぶ象ほどの大きさのガマを次々と攻撃していっている。
「十環も行ってくる!」
寒々しい格好をした十環も参戦するように校庭の中央に向かって駆けていった。その中で、雀の姿を探すも、ここからでは見当たらない。
ここで何をているのかって?
私は戦えないから、ここで結界の維持だよ。
どうもあの大きいガマが気になって結界を解くことができない。それに
そして鬼頭はというと、何が気になっているのか、周りの方を警戒している。
「鬼頭。どうしたの?」
「いや、鬱陶しい気配があるだけだ」
何かさっぱりわからない。
「何か。罠でも仕掛けておこうか?」
「そうだな……」
鬼頭はそう言って、刀を取り出して、鞘がついたままの刀で地面に何かを書き出した。
ん? これ? 特に意味があるように思えないけど。
しかし別に大した作業ではないので、懐から紙を四枚取り出し、そこに地面に書かれていたものを書いていく。
『ンゴォォォォォォォ――――――――!!』
そこにガマの鳴き声が響いてきた。やはり、あの大きさで冬眠まで持っていくのは難しかったらしい。
そしてドンドンと飛び跳ねて、地面に積もった雪を舞い上げている。
「鬼頭真白! ガマの動きを拘束しろ!」
霜辰先生からのご指名だ。仕方がないので、この場から動く。書き上がった四つの紙は飛ばして待機だ。
しかし拘束しろと言われてもあんな巨大なものを拘束できるのかという問題がある。
たぶん、桔梗はそれに失敗して喰われたのだろう。今いるメンバーの中で一番力があるのが桔梗だったのだ。
そもそも戦える者達は何かと外に行って依頼をこなしている。だから必然的に残っているメンバーは戦いには不向きな者たちが多いのだ。
「拘束と言われてもねぇ。串刺しでもいいと思う?」
「動きを止めたいということだろう」
「そうだよね」
あの大きさでは拘束は無理だ。
飛び跳ねているガマに近づきながら、たもとから小石のようなものを四つ取り出して、手のひらに乗せる。息を吹きかけて四つの石を指で弾いた。
「『星の欠片は天から落ち頭を落とす、風の息吹は空を切り裂き身を切り裂く、木の鉾は地を貫き心を突く、雨の矢はすべてを削ぎ骨を削ぐ、すべからくみよ、そこに残るは……』」
何故か術の途中で口を封じられた。それも冷たい手で
『
いや、それはこっちで制御しているよ。私の目には取り込まれた人がどこに囚われているか見えているから。
文句を言おうにも口が凍っておいてできない。
その冷たい手を叩き切る勢いで刀が振るわれた。鬼頭だ。
そして私は鬼頭に抱えられていた。
「雪女如きが真白に触れるな」
『これは怖い怖い。鬼は怖いのぅ』
その方向に視線をむければ、宙に浮いたガマが力なく存在していた。その姿は頭が潰れ、下から心臓を貫かれ、身体がボロボロに切り裂かれた姿だった。
「鬼頭。ガマの腹を切り裂いて」
その中でも大きく膨れた腹は膨れたままだ。そこに食べられた者たちがいる。
鬼頭は私を抱えたまま移動していく。私は置いていっていいよ。
「鬼頭、下ろしてよ。地に足を付けたほうが簡易結界の維持がしやすいし」
まだ結界は解かない。これを解くのはまだ早い。
私を置いて宙に浮いたガマの下まできた鬼頭は、軽くガマに向かって刀を振るう。するとスッと切れ込みが入り、中のモノの重さで大きく膨れた腹が割れた。
中から、何かしらの液体にまみれた者たちが次々と落ちていく。その中に桔梗も混じっており、ホッと安堵のため息を吐いた瞬間。
その瞬間。私の胸に銀色の刃が突き出ていた。
「え?」
それもこの刀。何か呪がかけられている。
『ギャッ!』
その声に振り返ると、鬼頭が白い毛並みの獣を切り捨てているところだった。その式神は……
「呪いつきの刀で心臓を刺されたのに、平気なんだぁ」
この声は……でもこれは……。
「雀もどきさん。それはどういうことなのかな?」
いつもは、目を隠すように長い前髪を下ろしているのが私の知る
だけど、私の視界に映る雀は長い前髪を横に流して、金色の目を私に向けている存在だった。
「もどきって、酷いなぁ真白ちゃん。雀だよ」
「背後に三角の耳が生えた女性が見えるけど?」
「ちっ! 見鬼ってそういうのも見えるの。それで、不死身ってわけ?」
いや、不死身ではないよ。
「真白! その刀!」
「鬼頭。大丈夫。問題ない。ただこの刀には触らない方が良い」
そう、これに触れると、かなり強力な呪いが発動する。
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