戦国おっさん! ~タイマーと現代知識チートで、織田信長の軍師になります
武蔵野純平@蛮族転生!コミカライズ
桶狭間の戦編
第1話 スキマバイトのタイマーさん(転生前)
「タイマーさん! お疲れ様! また、頼むね!」
「ありがとうございました! 失礼します!」
俺は元気よく挨拶して、スキマバイトをしたファミレスを出た。
俺は浅見爽太。四十歳。
スキマバイトのアプリ『タイマー』で仕事を探して生活している。
俺はずっと派遣で働いてきたのだが、派遣契約を延長してもらえなかった。
四十歳になると、次の派遣仕事を探すのも苦労するし、正社員など夢の又夢だ。
そこでスキマバイトのタイマーである。
タイマーは、便利なアプリですぐお金になる。
今、手伝ってきたファミレスは厨房補助のお仕事で、夜の忙しい時間帯を三時間だけ勤務だ。
タイマーでスキマバイトするのは気楽だ。
ちょっと働いてお金をもらえる。
年齢が上でも、助っ人扱いだから敬遠されない。
嫌な職場だったら、次は行かなければ良い。
けれど収入は安定しないし、名前で呼んでもらえない。
浅見さんではなく、タイマーさんと呼ばれてしまう。
そして何より未来がない。
それでもタイマーで働かないと生活が出来ない。
税金に保険に年金。
家賃、電気代、携帯代、ガス代。
何もしないで息をしているだけでお金が出ていくのだ。
働かざるを得ない。
「さて! 次だ!」
俺は自転車に乗って次のスキマバイト先へ向かった。
次のスキマバイトは、宅配便の仕分け場だ。
夜間の仕事だから時給が良い。
「うう! 寒い!」
十二月になると自転車移動もキツイ。
昔買ったMA-1ジャケットのジッパーをしっかり上までしめて、手袋、ネックウォーマー、ニット帽を身につけて完全装備で自転車をこぎ始めた。
暗く寒い冬の夜は嫌いだ。
一人で自転車をこいでいると、気持ちも暗くなる。
「大学出て就職出来ればなぁ。社員だったらボーナスもらって、結婚して、子供がいて、一戸建てに住んで……。夢だな……夢……」
俺はブツクサと愚痴りながら自転車をこぐ。
「あれっ!?」
気が付くと、後ろに車がいてあおられていた。
ナンバーはぞろ目で、黒いガラの悪い車だ。
ここは二車線の広い道路で俺は車道を走っている。
道はガラガラなので、自転車の俺を抜くのは簡単だ。
なのにガラの悪い車は、俺の後ろについている。
多分、車道に自転車がいると目障りに感じるドライバーなのだろう。
俺は『抜いて下さい』とギリギリいっぱい左側に寄った。
だが、後ろの車は空ぶかしをして、クラクションを鳴らしてきた。
怖い。
歩道へ逃げようと思った。
後ろの車が急加速して俺を追い越そうとした。
それもギリギリの距離だ。
「あっ!」
追い越した車が、自転車のハンドルに当たった。
俺はバランスを崩して、そのまま電柱に顔面から激突した。
「ぐっ……あ……」
俺は言葉にならない声を発して、立ち上がろうとするが体に力が入らない。
意識が遠のいていく。
「おい! ヤバイって! スゲエ血が出てる!」
「逃げろ!」
車に乗っていた人だろうか?
声が聞こえ、車のエンジン音が遠ざかっていく。
(ああ……死ぬのか……)
俺は微かな意識の中で死を実感した。
(これで終わりか……。もっと……充実した人生を送りたかったな……。もっと……活躍したかったな……)
『その望み叶えてやろう』
(えっ……誰……?)
どこか遠くで声が聞こえた。
俺の頭の中は真っ暗になり、意識が喪失した。
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