第6話 自分のバイアスを見つける鏡

確証バイアスの話を続けてきて、ふと思うことがある。私たちは他人の偏りや誤解にはすぐ気付けるのに、自分自身のバイアスにはなかなか気付けない。まるで、自分の姿を映す鏡が曇っているようだ。


「なぜ、自分はこう考えるのだろう?」


この問いを持つことが、自分のバイアスに気付く最初の一歩だ。


1. バイアスに気付けない理由


確証バイアスは無意識のうちに働くため、自分では気付きにくい。以下のような心理が関係している。

1. 安心感を求める心

• 自分の考えや価値観が「正しい」と感じることは、精神的な安定をもたらす。反対意見に直面すると、それが脅かされるような気がして、受け入れたくなくなる。

2. 過去の経験の影響

• 人は過去に得た知識や経験に基づいて物事を判断する。そのため、同じ情報を見ても、過去の経験が違えば、異なる解釈をする。

3. 情報のフィルタリング

• 日常的に触れる情報源(SNS、ニュース、友人の意見など)が偏っていると、その影響を受け、自分も偏った考えを強化してしまう。


2. 自分のバイアスに気付くための3つの問い


確証バイアスを見つけるためには、以下のような問いを自分に投げかけることが有効だ。


A. 「私はどの情報を信じやすいか?」

• 普段、自分がどのニュースやSNSアカウントを信頼しているかを振り返る。

• 例:特定の政治家や組織の発言を「どうせ正しい」と無条件に信じていないか?


B. 「反対意見をどう扱っているか?」

• 自分と違う意見を見たとき、すぐに否定していないか、感情的になっていないかを考える。

• 例:SNSのタイムラインで「こんなバカな意見あり得ない」と思ってスルーしていないか?


C. 「本当に全体像を見ているか?」

• 一つのニュースやデータを鵜呑みにせず、他の情報源や異なる視点からの報道を確認しているか。

• 例:環境問題について、メリットだけでなくデメリットの情報も探したか?


3. バイアスに気付いたときの発見


私自身、ある出来事を通じて自分の確証バイアスに気付かされた経験がある。


数年前、私は外国人労働者の受け入れに賛成する立場を取っていた。その理由は、彼らが経済に貢献しているという記事を多く読んでいたからだ。しかし、ある日、労働環境の悪化や治安に関する別の視点の記事に出会った。


最初は「こんなの大げさだ」と思ったが、よく読むと、その主張にも一定の根拠があると感じた。その時、私は自分が「賛成の立場を強化する情報だけを選んでいた」ことに気付いた。


その後、両方の立場を比較し、自分なりにバランスの取れた結論を出すことができた。確証バイアスを超えると、視野が広がり、新しい発見が増える。


4. 自分のバイアスを克服するためのアクション


確証バイアスに気付いたら、それを克服する努力が必要だ。以下はそのための具体的な方法だ。

1. 異なる意見を意識的に探す

• 自分の立場に反する意見をあえて読んでみる。

• 例:普段見ないニュースサイトや異なる立場のSNSアカウントをチェックする。

2. データや事実を優先する

• 感情的な意見や煽り文句ではなく、信頼できるデータや研究結果に目を向ける。

3. フィードバックを受け入れる

• 自分の意見に対して他人が批判的な意見を述べたとき、それを防御ではなく学びの機会と捉える。

4. メタ認知を鍛える

• 自分の思考プロセスを客観的に観察する。「今、自分は確証バイアスに囚われていないか?」と内省する。


5. 偏りを超える旅の続き


私たちは、日々の中で確証バイアスに囚われがちだ。しかし、その存在に気付くことで、偏りを超える第一歩を踏み出すことができる。次回は、他人との対話の中で確証バイアスをどう乗り越えるかを考えていきたい。


自分自身を映す鏡を磨きながら、一緒に真実への道を探っていこう。

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偏りの世界で真実を問う 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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