第3話 批判的思考という羅針盤

「この情報、本当に正しいのかな?」


そう疑問に思う瞬間が増えてきたのは、SNSやニュースの情報の偏りに気付き始めてからだった。確証バイアスに気付いていても、それを克服するのは簡単ではない。なぜなら、私たちは無意識に「自分が信じたいもの」に手を伸ばしてしまうからだ。


この偏りの海を泳ぎ切るために必要なもの。それが「批判的思考」という羅針盤だ。


批判的思考とは?


批判的思考は、単に「疑うこと」ではない。むしろ、情報を多角的に検証し、事実と意見を区別し、論理的に考える力のことだ。感情や先入観に流されず、情報の価値や信憑性を冷静に評価するスキルとも言える。


例えば、以下のようなプロセスが批判的思考の一部となる:

1. 情報の出所を確認する

• 誰が発信しているのか?その人や組織の意図は何か?

• 信頼できるデータや専門家の意見に基づいているか?

2. 反対意見に目を向ける

• 自分の信じたい内容だけでなく、それと矛盾する情報をあえて探してみる。

• 両方の立場を比較し、どちらにより強い根拠があるかを考える。

3. 感情に流されない

• ショッキングな見出しや煽り文句に引っ張られず、内容を冷静に読み解く。


実際の体験:フェイクニュースに惑わされる


数年前、私はある記事を見て衝撃を受けた。「外国人労働者の犯罪率が急増!」というタイトルが大きく書かれていた。内容を読むと、具体的なデータは曖昧で、いくつかの事例が極端に強調されていただけだった。それでも、コメント欄には「やっぱり外国人は危険だ」という意見が溢れていた。


当時の私は批判的思考を十分に持っていなかったため、その情報を鵜呑みにしてしまい、自分の中に漠然とした不安が芽生えた。数日後、別のニュースサイトで、実際には外国人労働者の犯罪率が全体の1%以下であることを知ったとき、私は愕然とした。


「あの記事は、私の不安を煽るために作られていたのかもしれない。」

そう気付いた瞬間、批判的思考の重要性を強く感じた。


なぜ批判的思考が難しいのか?


確証バイアスに支配されると、批判的思考を働かせることが難しくなる。特に以下の要因が影響している:

1. 感情の影響

• 怒りや恐怖といった強い感情が絡むと、冷静に情報を評価するのが難しくなる。

2. 情報の洪水

• SNSやニュースが流れるスピードは速く、いちいち考えている暇がない。

3. 自己肯定の快感

• 自分の意見が正しいと感じる瞬間は気持ちが良いため、それを壊す情報を避ける傾向がある。


批判的思考を鍛える第一歩


私は、「疑問を持つこと」を日常の習慣にすることから始めた。例えば:

• SNSで「いいね」を押す前に、「これ、本当に正しいの?」と考える。

• 記事の内容を、その反対意見と比較してみる。

• 信頼できる情報源や、異なる視点を探す。


こうした習慣を続けるうちに、情報に対する受け止め方が変わっていった。


まとめ:批判的思考が私たちを導くもの


批判的思考は、情報に溺れる現代社会を生き抜くための重要なスキルだ。それは、自分の偏りを認め、真実に近づくための手段でもある。


次回は、メディアがどのように確証バイアスを利用し、私たちの考え方を形作るのかを掘り下げていきたい。偏りの影響を知ることで、さらに広い視野を持つためのヒントを探っていこう。

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