第2話 SNSが作る「見たい世界」
朝、スマホの通知音で目が覚める。手に取ると、いつものようにSNSのタイムラインが埋め尽くされている。そこには、私の好きなジャンルの記事や、共感できる意見ばかりが並んでいる。何気なくスクロールしながら、ふと疑問が浮かんだ。
「なぜ、こんなにも自分にピッタリな情報だけが表示されるのだろう?」
その答えは簡単だった。SNSのアルゴリズムが、私が「好き」と思うものだけを選び出して見せてくれているのだ。
SNSのアルゴリズムは、私たちが何に「いいね」し、何をシェアするかを記録し、それをもとに「あなたが興味を持つだろう情報」を優先的に表示するように設計されている。これが「情報フィルタリング」という仕組みだ。
一見便利なこの仕組みは、私たちの生活を効率化しているように見える。しかし同時に、私たちを「偏りの牢獄」に閉じ込める危険も孕んでいる。なぜなら、このフィルタリングによって、自分の考えや信念に反する情報が排除されるからだ。
例えば、ある環境問題について調べていたときのことだ。私は再生可能エネルギーを支持しており、そのメリットを解説する記事に「いいね」を押した。すると、翌日以降、再生可能エネルギーの利点を賛美する記事ばかりがタイムラインに現れるようになった。
しかし、その裏では、再生可能エネルギーが抱える課題を指摘する記事も存在していたはずだ。でも、私の目には届かなかった。それは、私が「見たいもの」だけを求めた結果であり、SNSがそれに応えた結果でもあった。
確証バイアスは、SNSのアルゴリズムと組み合わさることでさらに強化される。自分が信じたいものだけが目の前に現れ、それが「自分の考えは正しい」という確信を生む。このループは、一種の心理的な快楽でもある。自分が正しいと感じるたび、私たちは安心感や満足感を得られるからだ。
しかし、それは同時に「異なる視点を見ない」という危険性も持っている。
私はある日、意図的に反対意見を探してみることにした。自分の考えと真逆の記事をクリックし、読んでみる。最初は「こんな意見、間違っているに決まっている」と思ったが、読み進めるうちに気付いた。
「反対意見にも、それなりの根拠がある。」
その瞬間、確証バイアスが作り出した狭い世界から、一歩外に出た気がした。
SNSは私たちの思考を一方的に操作するものではない。私たちがどの情報に触れるか、何を信じるかを選ぶ自由は、私たち自身にある。次回は、この「選ぶ自由」を持つために必要なスキル、つまり批判的思考について考えてみたい。SNSの世界で迷わないための羅針盤を、一緒に探していこう。
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