✕✕✕✕マンション

知人はAさんから「うちで話さない?

ゲストルームあるの」と言われ、

数日後にAさんのマンションへ向かった。


そのマンションはコンシェルジュがいる、

いわゆるお高いマンションでしかも分譲。

地域の治安も良く、悪い噂も聞かない住宅街で、そんなところにお呼ばれした知人は少し怯んだらしかった。


少し大きめのボリュームでおしゃれな音楽が流れているエントランスでAさんを待っているとAさんが降りてきた。

そしてコンシェルジュがAさんに何かを耳打ちしていたのが見えて、住む世界が違うってこういうことだな…と実感しているとエントランスにAさんが来て

「ごめんなさいね、ゲストルームが使えないから家に行きましょう」と行ってきて、

知人は更に怯んだらしい。

エレベーター内で独り言のようにAさんが「あの音楽の日は…使えないから…」と言ったので「そうなんですか?」と尋ねると、

「やだ、私、口に出してた?」とAさんは困った顔をしていた。


高い化粧品とか壺とか買えないよ〜と怯えながらAさんの部屋に入った。

部屋はお高いマンションなのもあるが、

とても物が少なくてがらんとしていた。

色々と話したが化粧品や壺を勧められることもなく、お茶をして話しただけだった。


帰る時にAさんがおもむろに「あのね、あの音楽が鳴ってる日はエントランスもすぐに抜けたほうがいいわ」と言われて「エレベーターでの話ですか?」と聞き返した。


少し考えた後に「あの音楽の日はエントランスとかゲストルームがおかしくてね。

…少しボリュームが大きかったでしょう?

かき消すためなのよ、あれ」と

「……何をですか…?」と尋ねるとAさんは「数人の誰かのぼそぼそと話すような声が聞こえるのよね…。無視して、そのままいると更に良くないことが起こってね…。

色々、調査も入ったけど何も分からないし改善されなくて…」と言われて頷いていると半笑いになったAさんが

「まぁ、でも、もうこの部屋は望んでた値段で売れたからいいけどね」と言ったのを後にして足早にマンションから出た。そんな話。

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