第10話「決断の時」



巨大な人型の影が、研究所上空を覆い尽くす。


「あれは……完全体人工ヴォイド」

グレイ副所長の声が、指令室に響いた。


「どういうことですか!?」

九条が詰め寄る。


だが、その問いは新たな衝撃で遮られた。

影から放たれた光線が、研究所の防壁を貫く。


「発進します!」

陽斗が閃機神へ向かう。


「待って!」

美咲が緊急データを示す。

「あれ、量子共鳴波と同じ波長を持ってる。まるで……機神みたい」


「なに!?」

レイの暗機神が、すでに上空で戦闘態勢。


「みんな、違う!」

凛の悲鳴のような声。

「あれは、相馬博士の——」


轟音が響き渡る。影が、研究所の地下を狙い撃つ。


「まさか!」

陽斗の脳裏に、父の言葉が蘇る。

『量子共鳴の真の目的は——』


地下施設が大きく揺らぐ中、グレイ副所長の命令が下る。

「最終防衛システム、起動!」


その瞬間、研究所の地下から巨大な装置が姿を現す。

「人類進化促進装置……完成です」


副所長の声に、狂気が混ざる。

「相馬博士の研究、ついに実を結ぶ時が!」


「違う!」

陽斗が叫ぶ。

「父は、こんなこと望んでいなかった!」


閃機神が光を放ち、装置と影の間に立ちはだかる。


「レイ!僕には、父の声が聞こえる。あの影から!」


「分かっている」

暗機神が閃機神の横に並ぶ。

「仲間を、守るんだろう?」


その時、影から不思議な波動が発せられる。

すべてのパイロットの量子共鳴腕輪が、呼応するように輝き始めた。


「これが、父さんの……本当の意志?」

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