第14話 姉の涙のワケ
翌日、
「色々聞かれたくなかったのかな」
朝ご飯を食べながら、男二人で色々考えてみるが、あの楽しそうなデートからどうして泣くことになったのかわからない。
「姉ちゃんが泣くなんてよっぽどだよね・・・
「ダメだよ。お姉ちゃんが話すまで待っていよう」
確かに神原が原因とも限らないし、原因でないのにそんなことを言ったら誤解を生むだけだ。
大学のキャンパスを歩いていると、たくさんのカップルとすれ違う。
手をつないでいたり、腕を組んでいたり、本当に幸せそうだ。
(俺もいつか
「俺もいつか美園ちゃんと・・・とか思ってんだろ?」
ズバリ言い当てられて動揺しながら、「ち、違うし」と声を裏返しながら、
「それにしてもカップルが多いな」
「クリスマスがもうすぐだからじゃない?」
「そういや、そうか」
クリスマスまであと約一ヶ月。
この辺りで相手を見つけようと動き出す男女は多い。
「
「うーん、決まってないなぁ。何人かの女の子に誘われてんだけど、めんどくせぇし」
「面倒くさいってお前世の否モテ男子を全員的に回したぞ」
「それは申し訳ない。お前は蛯名誘わねぇの?」
可愛くて純粋無垢という言葉がぴったりの女の子。
彼氏はいないらしいが、自分みたいなまさに平凡な男子が誘うにはあまりにもハードルが高い。
「それはなかなか・・・」
「なんでだよ?旅行まで行ったのにさ」
「グループでだろ?」
「それはそうだけど、仲良くはなってんだから、クリスマスにどこか行こうくらい言えるだろ?」
浩太は目を引くほどの美形ではないが、柔和な顔立ちと服のセンスの良さやコミュ力の高さでその辺のイケメンよりモテる。
兄や姉が美形なので忘れがちだが、浩太もまたイケメンなのだ。
「・・・お前にはわかんねぇよ」
その日の帰りに、
どれも叶夢の好きな料理を作るための材料だ。
そんなことで慰めれるかはわからないが、美味しい料理が少しでも傷を癒してくれるかもしれない。
家に帰って、材料を置くと、着るとパンダになれるルームウェアをきた歩夢がひょこひょこと寄ってきた。
イケメンでも高身長の奴が着ると、かわいさより怖さが勝つ。
「つーちゃん、お姉ちゃんが晩御飯いらないって」
「兄ちゃんに連絡きたの?」
「うん、LINEきたよ~」
料理を作っているのは
違和感を覚えつつも、明日に使おうと食材を切って保存する作業に取り掛かった。
その日の晩、叶夢は帰ってこなかった。
早朝にお風呂と着替えはしたのか、洗濯物だけが増えている。
「ねぇ、兄ちゃん。なんかおかしくない?」
「ん?何が?」
「姉ちゃんだよ」
「いつもおかしいじゃない」
「そうじゃなくて、なんか俺・・・避けられてる?」
「そんなわけないよ~つーちゃん何もしてないじゃん」
「まぁそうなんだけど・・・」
あの日からの行動を見返してみても思い当たることはない。
しいて言うならデートを覗いたのは悪かったが、それは歩夢も同じだ。
「気にしすぎだよ」
歩夢にそう言われて、確かにそうかもなと思い、次男は気を取り直して朝ご飯を食べた。
今日はアルバイトの日だ。
叶夢の様子も少しはわかるだろう。
「あれ?なんか人少ない?」
次男がそうつぶやくと、後ろから「今日は会議です」と白井に声をかけられた。
「会議?」
「えぇ。今日は定期的な会議の日です。先輩方だけの会議なので、私はお留守番です」
「そうなんですか。えーっと、姉ちゃんは来てます?」
「そりゃもちろん来てますけど?」
「そうですか・・・」
「では早速、今日のアルバイトの仕事内容は、こちらです」と白井に案内されて、パソコンの前に座る。
どうやら職場でも姉の顔は拝めないようだ。
ところが、仕事と終わりに突然チャンスが訪れた。
「
「こちらこそありがとうございました」
神原がいつも通りの笑顔でこちらを見ている。
どうみても姉を泣かせた相手に見えない。
「あのさ、今日の仕事終わりに飲みにいかない?」
願ってもない話だ。
何か聞けるかもしれない。
アルバイトが終わってから1時間後に神原はやってきた。
近くの居酒屋で飲むことになった。
ビールで乾杯をして、どのタイミングで叶夢のことを聞こうかと思っていたら、神原がにこりと笑って「
予想外の質問に戸惑って返事を出来ずにいえると、神原が
「俺じゃダメかな?」
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