第2話 「転校」

通学中に信号待ちをしているアカネは、

急に声をかけられたので驚いた。


彰「いつも見てます…!」

アカネ「あ、ありがとうございます…。」

彰「めっちゃファンで、応援してます!」

アカネ「あ、ありがとうございます…。」

彰「…。あの…アカネさん…!」

アカネ「はい…。」

彰「…。えっと…その…す…。」

アカネ「す…?」

彰「すぅ………」


信号が青に変わり音が鳴る。


アカネ「じゃあ私学校があるから、またね!」

彰「は、はい…!また!」

(…ん?また…?また…またがあるって事か…!!)


彰はテンションが上がり、アカネが去った方と反対側の学校へ走って登校した。


そしてその日の学校のホームルームが終わった瞬間、彰は駅に向かった。


彰(アカネさんに…また会えるかも…!!)


駅に到着し、アカネを探すこと20分、ついにアカネの姿が見えた。

彰はアカネに近づいていき声をかけた


彰「あ…アカネさん…!!」


しかし、朝会ったアカネとは、まるで別人のような暗い顔をしていた。

そう、アカネは今日も、学校で不良グループから嫌がらせを受けていたのだ。


アカネ「あ…ごめんなさい。今日はもう帰るので…。」

彰「あ…わかりました…。」


彰は暗いアカネの表情を見て驚いていた。

そしてアカネはそのまま駅の方へ歩いて去っていく。


彰「何か嫌な事あったのかな…。」


と考えながら同じ駅の方へ歩いていった。


アカネは自宅に帰った後、

ベッドの上で膝を抱えてしばらく泣いてた。

学校に行けば嫌がらせにあう。

そして心の中にある気持ちが芽生えた。


アカネ(転校…しようかな…。)


翌日アカネは父親に、


「転校しようか考えてるんだけど…。」


と伝えた。


アカネの父親は放任主義だが、

嫌がらせをされている事は知っていて、

東京に住んでいる祖母に少し前から連絡をしていた。


アカネの父「わかった。もし、本当に転校すると決めたら言ってくれ。東京の母さんはウェルカムだって言ってるからさ。」

アカネ「…うん…わかった。…行って来ます。」


アカネはまだ決断出来ず、いつものように登校した。

電車を降りて駅を後にし、

学校に向かおうとしたらまた彰が声をかけて来た。


彰「アカネさん…!おはようございます!」

アカネ「お、おはよう…。え、まさか待ってたの?」

彰「…。いや…まあ…。」


彰は、昨日アカネが暗い顔をしていたのを見て、

帰ってからずっとアカネのことを考えていたのだ。

そして朝早くから電車に乗り、アカネを駅で待っていた。

アカネは彰の優しそうな印象から、

良い人そうだと感じていた。


アカネ「今日、学校終わったら予定ある?」


彰は驚いて即答した。


彰「ないです!毎日ないです!1ミリも!!」

アカネ「それはそれで…どうかと思うんだけど…笑 

じゃあさ、今日学校終わったらまたこの駅で会わない?」


彰「…。え…?もちろんです!!是非!是非会わせて下さい!」

アカネ「会わせて下さいって何?笑 

まあいっか…。じゃあまた放課後ね!」

彰「はい!また!楽しみにしてます!」


アカネは信号を渡り学校へ向かう。

彰はテンションが上がり、学校の方へ走って行った。


放課後、彰は走って駅へ向かう。

駅に到着して10分後、アカネが現れた。


アカネ「早いね、待った?」

彰「いえ!待ってません!1ミリも!」

アカネ「1ミリもって…笑 君たまに日本語おかしいよ笑」

彰「すいません…!緊張してて…。」

アカネ「じゃあ、すぐそこにカフェがあるから行ってみない?」

彰「いいですね!行きましょう!」


2人はカフェに向かって歩き出した。


アカネ「そう言えば名前は?」

彰「鳥谷彰って言います…!」

アカネ「彰くんね。私は…って、SNS見てるから知ってるか。」

彰「そうですね…。」


まさかの下の名前で呼ばれたことに静かに喜ぶ彰。


彰「アカネさんはアカネさんですか?」

アカネ「アカネさんはアカネさんです…笑 

本名で活動させていただいております笑」

彰「そうだったんですね…!

しかしまさかアカネさんとカフェに行けるなんて思わなかったです…。」

アカネ「ははは、そうだね。私も誘ってる自分にちょっとびっくり。」


そしてカフェに到着した。


アカネ「ここだよ。来たことある?」

彰「いや、ないです!と言うかそもそもカフェに行く文化が僕にはないので…。」

アカネ「文化ってなに…笑 彰くんってちょいちょい面白いよね。」

彰「え!?何がですか!別に面白くしようとしてないんですけど…。」


そして店内に入り向かい合って席に座る2人。

彰は震えていた。


彰(だめだ…可愛い…。)


アカネがメニュー表を彰に渡した。


アカネ「彰くん何飲むの?」


彰はカフェに来た事がほとんどなく、

メニュー表を見てもどれにすれば良いか決められない。


彰(やばい、優柔不断って思われるかも…)


彰「アイスコーヒーで!」

アカネ「アイスでいいの?寒くない?」


今は11月、気温もかなり下がって来ている。


彰「むしろ暑いので!内側からくる何かによって…!」

アカネ「あ…そうなんだ笑 私はホットのカフェラテかな〜。」


彰(カフェラテってなんだ…カフェオレしか知らないぞ…。)


彰「い、いいですね!カフェラテ…!」


彰は知ったかぶりをしてアカネに合わせる。

アカネが店員を呼んで注文をした。


アカネ「そう言えば彰くんって今いくつなの?」

彰「16です…。」

アカネ「16か〜、じゃあ私より1つ年下だね!先輩ぶっちゃおうかな〜。」

彰「いや、16ですけど。高2ですよ。」

アカネ「同い年かーい!!なんかごめん、初めて会った時から年下かなと思ってた…。」

彰「いや、大丈夫です。良く高1に見えるとか、中学生見たいとか言われます。背も低いんで。」


彰の身長は160センチもなく、アカネの方が背が高かった。


アカネ「まあ…。うん、話題変えよう!笑 で、私の事SNSで知ってくれたんだよね?」

彰「そりゃあ〜そうですよ!!ダンス上手いし、歌も上手い。フォローワーもどんどん増えてるし!みんな知ってますよ!(何より可愛い)」

アカネ「いや…褒めすぎ…。でも嬉しいよ。ありがと…。」


アカネは少し照れていた。

店員が飲み物を運んできた。

テーブルにホットカフェラテとアイスコーヒーが並ぶ。


アカネ「ここのカフェラテ美味しいんだよね〜。」

彰「そうなんですね〜。」


2人とも飲み物を口にした。


彰「うっ…にがっ…。」

アカネ「え?ちょっと大丈夫?砂糖とミルク入れないの?」

彰「いいえ!入れません!1ミリも…!!」

アカネ「ね〜、強がるとこおかしくない?別に入れれば良いじゃん!」

彰「いいえ、僕はブラック派なんで!」

アカネ「いやいや、絶対嘘でしょ笑 まあ彰くんがそれで良いならいいけど笑」


コーヒーを少し飲んで彰は昨日の話を切り出した。


彰「そう言えば…昨日すごい表情暗いように見えたんですけど、何かありました?」


アカネは下を向いて少し考え、何故か彰には話しても良いかなと思い、学校で嫌がらせを受けていることを話した。


彰「そんな事が…あったんですね…。SNSじゃあんなに明るく振る舞ってるのに…。」


彰の目には涙が溢れていた。


アカネ「ちょっと彰くん、泣かないでよ…!」


アカネは自分のハンカチを彰に渡した。


彰「だって…あんなに毎日投稿して頑張ってるのに…学校でそんな酷いことをされて…。おかしいじゃないですか…!夢もあるのに!」

アカネ「まあでも、もう良いんだ。私ね、転校しようと思って。」


彰は驚いて表情が止まった。


彰「転校ですか…。」


彰は心の中で、もう会えないのかなと思っている内に涙が止まっていた。


彰「でも僕もその方が良いと思います!そんな嫌がらせを受けながら学校生活送るなんて辛すぎますよ!」

アカネ「うん…。しかもね、おばあちゃんが東京に住んでて、そっちの高校に行けそうなんだ。私の夢も東京に行けば、もっと近づけると思うし…。」

彰「それはいいですね!今後仕事するようになったらアクセスも良いし、ちょうど良いんじゃないでしょうか…!」

アカネ「ね…!まあそうゆうことなんだよね…。」

彰「じゃあ…もうアカネさんとは会えないってことですかね…。」


ここは静岡県。東京まで頻繁には会いに行けない。彰にはお金もない。


アカネ「そうなるよね…。」


沈黙する時間が続き、彰がアイスコーヒーを一気に飲み干して口を開いた。


彰「じゃあ…高校卒業したら僕、東京に住みます!」

アカネ「いや、ちょっと待ってよ、就職とか進学とか色々あるじゃん…。」

彰「あ…まあ…それはそうですけど…。でも何とかして、行きます!」

アカネ「…。わかった…。じゃあ大人になってから…だね。」

彰「はい!あと、離れていても僕はアカネさんの事、ずっと応援していますからね!!」


アカネはドキっとした。

今までSNSでは良く聞いていた言葉だが、直接言われたのは初めてだったのだ。


アカネ「ありがとう…。」


アカネは手を膝の上に置き、下を見ていた。

目頭が熱くなっていた。


アカネ「じゃあそろそろ帰ろうか!お会計は私が払うよ!」

彰「いやいやいや!それくらい払えますって…!!」

アカネ「いいのっ!今日誘ったの私だし、楽しかったから。」

彰「…。…じゃあ…お言葉に…。1ミリだけ甘えます…。」

アカネ「もっと甘えんかーいっ!!」


そして2人はカフェを出て駅に向かった。

彰の家は電車で下り方面、アカネは上り方面だ。

改札口に入り階段の前で2人とも立ち止まった。


アカネ「じゃあ…またね。」

彰「はい…それじゃあまた。」


2人とも背を向けてそれぞれ階段へ向かう。

彰は1度振り返ったがアカネは階段に向かって歩いている。

そのあとアカネは1度彰の方を見たが、

彰はもう階段を上がろうといているところだった。

タイミングが合わない二人。


階段を登っている途中、彰はハッした。


彰(そう言えば連絡先聞いてない…。)


彰はすぐ引き返しアカネのいる方へ向かった。

階段を駆け上がったが、すでに電車のドアは閉まり、出発した。


彰(まあDMがあるからいっか。)


彰は少し後悔しつつも気持ちを切り替えて電車に乗り、自宅に帰って行った。


そして1週間後、

アカネは転校が決まり、この街を去って行った。


つつぐ


※このストーリーから生まれた楽曲もあります。

 「カフェラテ」よろしければお聞き下さい↓

https://youtu.be/8qRv16p4Z1Q?si=mr4tA57ZYiTFgTKp

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画面ごしの君に恋をした ダッテー @dattee24

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