変なひともたくさんいた。

 そう、変な人もたくさんいた。

 だけど、僕はそういう人たちと話すのが案外好きだった。


 変な人というのは、なんていうか、普通の会話のテンプレートから外れてる人たちだ。いきなり「宇宙人は実在すると思う?」って聞いてくる人とか、延々とカエルの鳴き声のモノマネをする人とか、急にパンツをずり下ろすひと、泣き出すひと。生粋のメンヘラから水商売まで。


 普通なら「なんだこの人?」って引くような話題も、声ともだと妙に許せてしまう。


 ある日、誰かが「幽霊って雨の日に傘を差すと思う?」と聞いてきた。


 なんて文学的なやつなんだ!と文学少年のボクは歓喜した。


 その質問があまりにツボにはまって、僕たちは延々と幽霊の傘事情について議論した。「傘を差す幽霊は、雨に濡れたくない未練が残っているんじゃないか」という結論に至り、二人で大笑いした。


 そういうひとたちとの会話は、自分の世界がぐにゃりと広がる気がした。普段の生活では出会えない発想や視点が、彼らとの会話からぽろっと出てくる。それが、僕にとってたまらなく魅力的だった。


 きっと彼らも僕のことを「変なやつだな」と思っていたかもしれない。でも、それでいい。そういう異質さを認め合える場所が、声ともの一番の魅力だったのだと思う。



「声だけでつながる」という行為は、ふとテレクラの話を思い出させる。


〈つづく〉


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