百物語をやってみて

クロシー

第1話 羽音

これはまだ暑い夏の夜の出来事です。

1人暮らしをしている私はいつものように就寝準備をし、照明の電気を消しベッドに入りました。冷房のひんやりとした風を肌に感じつつ、目を閉じました。遠くに聞こえる蝉の鳴き声とエアコンの稼働音が聞こえる中、私の耳元に嫌な音が鳴りました。

「ぷーん」

この時期のこの音。おそらく蚊が私の周りを飛んでいるのでしょう。無視して寝ようとしてもその音はなり続け、何ともむず痒い感覚を覚えてしまう。私はベッドから出て電気をつけて蚊を探そうとしました。しばらく探しては見るものの見つけることはできず、私はあきらめて寝ようと試みました。暗闇の中で目を閉じる。するとやはりあの音が聞こえてくる。

「ぷーん」

視界が見えなくなった分、聴覚が敏感になっているのでしょうか?先ほどよりもより一層音が大きく聞こえ、一度気になると寝ることができませんでした。再度電気をつけ、蚊を見つけようと必死になって探します。しかし、先ほど同様見つけることは叶わずより一層不快感が募るばかり。私はイライラしながら電気を消し、目を閉じる。(どうせまた羽音が聞こえるんだろう)

そう思うとさらに聴覚に集中してしまうような気がする。とりあえずあきらめて寝ようとした時聞こえてきたのは

「ちがうよ」

羽音ではない。今までとは違う、高く、ゆっくりとした声が私の耳元でささやかれました。私は理解できず、数秒後全身を寒気が襲い、その夜は寝ることができませんでした。

結局それが何だったのか。何が違うのか。未だにわかっていません。

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百物語をやってみて クロシー @omio964

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