新時代の女性に贈るおとぎ話

古典的なおとぎ話『シンデレラ』を現代的な視点で大胆にアップデートした秀逸な作品です。
滑稽さと爽快感が同時に味わえる展開に、飽きることなく最後まで読むことができました。

元のお話のような受け身の女性像とは一転して、シンデレラは過剰な完璧主義と冷静な性格を持つ知的な女性として描かれています。
まるで天才超人が転生してしまったかのようなシンデレラの姿は個性的で、文章中にもその設定を思わせる描写があります。
特に王子と対峙するシーンでは、強い意志と自立心が鮮やかに表現され、現代的な価値観を示す印象的なシーンとなっています。
舞踏会がロマンスの舞台ではなく、社会問題を問う場となっているところには、おとぎ話の枠を超えたメッセージを内包しているように思います。

そうした深いテーマを持ちながらも、「継母の名が廃る」といった表現など思わず笑ってしまうほどの軽妙さもあり、真面目な文体の中にも絶妙なユーモアが光ります。
全体のテンポも非常に良く、シンデレラの超人的な効率性がストーリーのリズムにも反映されている傑作です。

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