心の傷を抱えた二人が比翼連理になるまで。そして二人の少女達の成長物語。
- ★★★ Excellent!!!
(少々改訂)
これまで読んだ最高の物語の一つ。多くの登場人物のキャラ設定や複雑に絡み合うストーリー展開、作者の技量が余すことなく発揮されている。
少しサスペンスの予感もさせ、最後は幼馴染との一つのハッピーエンドを読者に予想させつつ、もう一つのハッピーエンドを用意していたとは!
(本音は個人的にはこちらを期待していたので、万々歳です)
作者は途中、遠藤の【悪事】が元教師から語られる場面で、遠藤を少し気遣う発言を何気なく入れており、その回収をしてくるなんて、なかなかですね。
また、最終話で、中学時代のように髪を染めた遠藤の前に、主人公も髪を染めて来た。二人共、中学生時代に出会い、屋上で傷を舐め合い、過ごしたあの時のように。
これは作者の上手いメタファーなのだろう。あの頃からお互いが惹かれ始めたその時に戻り、二人で人生を歩いて行くという決意表明。
彼女も、【罪】を犯したという罪悪感に囚われていたが、彼からの思いがけない告白に涙した。そして、完全に母親の呪縛から解き放され、お互いの魂が繋がり、改めて二人で生きていくということを決意する。始まりの場所から。こらからは、深い魂の繋がりがある本当の凸凹(小川糸:小鳥とリムジン)をするのだろう。
一方で、幼馴染には悲しい結末になった。しかし、彼への【愛情】は、後悔と自分への罰が根底にあったのではないか。基本的に幼馴染は天然の自己愛が強いキャラだと思う。しかし、その幼馴染もやっと長い間の呪縛から解放され、新しい人格を得たのだろう。きっと、これから素晴らしい新しい出会いがあるだろう。
これはラブストーリーであるとともに、二人の少女達の【成長物語り】でもあったと思う。
タイトルがラノベ風であることを除けば、読後感も再生と希望を感じさせ、辻村深月の作品に勝るとも劣らないものだと思う。
次の作品も期待できます。