第31話:超月揆団
「そこの君!大丈夫かい!?」
恐らくリーダーと思われる灰色縮れ毛で太眉の男が最初に声をかけてきた。ラーヴァは答える体力も残っていない。
「ラーヴァ君!」
男女四人の内の一人はメグメグだ!メグメグはすぐにラーヴァの治療を開始する!
「メグ……メグ……!」
「生きて!死んじゃやだ!死んじゃやだよ!」ポアアア……
「うっ……おっ おおっ……。」
ラーヴァの意識は次第に明瞭さを取り戻す。
「は……ああ……?」
「二の腕……これもしかして自分でいじったの!?痛かったでしょ……?」
「まあな。でもこうでもしないとどうしようもなかった……。」
「彼女の回復能力……何度見ても実に素晴らしい!」
「『ガザリ』様はあの娘を気に入った感じですか?」
灰色縮れ毛男の隣の女がその男に話しかける。そのオレンジのサイドテールの女は男とは明確に一回り年下であり学生ほどに見える。
「そうだな!彼女は我ら『
「……そうですか。」
「なに気にする事は無い!我が愛すのは生涯君一人だ!」
「……。」
女はガザリから視線を逸らす。分かりやすく不貞腐れている。
「はいっ!治療完了!」
「ありがとう助かったぜメグメグ。」
「どういたしまして!でも元はといえば私があの場に残ってなかったのが悪いから!むしろごめんね!あっ!」
メグメグは右腕の断面から血を垂れ流す茶髪の女を見つけた。
「大丈夫ですか!?今治します!」
「待て……先にこっちを……!」
「させねえよ。」
無関係の人間のふりをしてメグメグからの治療を受けようとするショットの足下にラーヴァが移動する。
「ラーヴァ君その人は……」
「俺と戦ってた奴だ。後々一般市民に危害が及ぶ。ここで殺す!」
「牢屋に入れて置けないの……?」
「
「だそうだ。どうしようもないな。」
「かきくけこいつはショットか……?神の名の下に悪魔の弾丸を撃つという……。」
二人目の男はサムソーだった。
「それにしてもお前の仲間は一人も来ないな……。残虐な事すれば勝てるというわけでも無いみたいだな。俺の勝ちだ。」
(ぐううう……!クソ……私は全てにおいて負けたのか……!?……いや!)
「ポポ……ポーッポポポ!一つだけ勝っていた!私は!」
ショットは血を吹き出しながら爆笑する。
「!?」 「あ、今ここで倒せ!まみ無駄に煽るな!」
「ふんっ!」
ボヒュッ!
すっかり元気になったラーヴァはショットに火を付ける。ショットは抵抗できずその身を焼かれていくが死に際勝ち誇ったように捨て台詞を吐いた。
「お前はフリジットを罵倒されてもすぐには反抗しなかったな……!我が身可愛さで!対して私はどんな状況でも
ジュウウウ……
ショットは絶命した。
「最期まで……後味の悪い奴だったな……。」
「はい!治療完了!」
「ありがとうなの!」
メグメグは女の治療を終えるとショットの下に歩み寄る。
「メグメグ……お前死者の復活できるのか!?」
「ううん……。ただ顔……これじゃ誰だかわかってもらえないと思って。せめてこの人を大切に思ってた人が弔える様にしたいんだ……。駄目かな?」
「……いや、お前のスタンスだ。蘇らせないならそれで良い。好きにしてくれ。」
「ありがとう。」ポアァ……
メグメグは炎で爛れたショットの顔を回復させた。ショットの正体はまだ成人して間も無いと思われる美青年だった。
「幼さを利用されたのだろうな……!許せん!
義憤に駆られるガザリにラーヴァが話しかける。
「えっと……ここから見える中屋上にも気絶してる人がいるので、その人の治療もさせて良いでしょうか?」
「ガザリ様。無駄にあの女に生命力を使わせるのはどうかと……。それにどうせ相手は憎き
「むう……だが我々が狙うのはトップだ!いたずらに下っ端の命を軽んじる行為に意味があるとは思えん!彼女や彼が満足するならそれで良いだろう!」
「……甘いですよ。そんなんだから……。いえ、何でも無いです。」
ラーヴァ達は下の階に降りていった。メグメグは金髪の男の治療を始める。その間ラーヴァは恐らくメグメグと共に行動していたサムソーと情報交換をする。
「サムソー、俺達の装備ってどこかに置いてあるのか?剣も鎧も剥奪されたままなんだが……お前は今刀持ってるよな?この組織は腐ってる。もう駄目だ!万全の状態で先輩を奪還しに行きたいんだ!」
「さしすせ装備のある部屋は知っているが……フリジットもジャックとの積もる話もあるだろう。更に言うとフリジット程のビッグネームが秘匿されたまま死刑になる事はまずあり得ない……あいつを奪還しに行くのはもう少し後でいいだろう。万全の……というなら今日は一旦休め。」
「そうは言うが……。」
「だぢづ出来ないなら案内はしない。」
「……分かったよ!今日は大人しく引き下がるから案内頼むよサムソー!」
「あ一階のある部屋に置いてあった。たちついてこい。」
二人は三階から一階に降りていく。
カツン……カツン……
「お前らはすぐに尋問終わった感じか?」
「ああ。さしす船員達と殆ど同じで事情聴取だけで終わったよ。さしすせそもそも
「はぁ〜。ついてない……。」
「相性的には当たったのがお前だったのは極めて幸運だったがな。さしすぐに解放された僕達はその後外でお前を待っていたんだが、外で大きな騒ぎがあってな。さしすせそこに急行したら
「ほえ〜……。そういえばお前ら外から窓割ってきたけどあの二人の内のどっちが空飛べるんだ?それともお前のチャージ羽ばたきで来たのか?」
「ああ。さしすせそれはガザリ団長の風魔法でな。」
「……なぁ、さっきから魔法って……何だ?」
「さしすぐに分かる。か今日は取り敢えず本部アジトとは別のセーフハウスで一晩過ごすそうだ。ラーヴァお前も回復こそすれど精神的に疲労しているだろう。なにぬね乗せてってもらうと良い。あ、ここの部屋だ。」
「おお……有った!ありがとうなサムソー!誰も居ないのはさっき逃げ出した人達の影響か……それとも上でやってる何かの影響かな……?」
「さしすせそうかもな。」
「ああ、皆を待たすと悪いか。ありがとう戻ろうサムソー!」 「ああ。」
二人は三階へ戻った。
「治療完了!お大事にね〜!」
「うっは……え、彼氏いる?俺様と付き合わない?」
メグメグは金髪男の治療を終えたようだ。金髪男は意識をすっかり取り戻したようだ。目の前の美少女に興奮するだけの余裕が有った。
「彼氏いる?だって!あ、帰って来た!ラーヴァく〜ん彼氏って事で良い〜!?」
「いや良くない。」「まだ駄目か〜……。」
「うおっ じゃあ……。」
「う〜ん私は良いんだけど……ガザリさんが許してくれるかな……?ごめんねぇ〜。」たったったっ
メグメグとサムソーは中屋上の柵の手前まで行く。既にガザリ達が待っているのだ。
「ええ!?敵同士って凄いロマンチックで良いじゃん!」
メグメグを追う金髪男。
「何なら俺様この組織裏切っても「ああもう行ったいった!一般人脅迫して金取ってるお前なんかじゃメグメグとは釣り合わねえんだよ!回復してもらっただけありがたく思え!」
そんな金髪男をラーヴァがあしらおうとする。
「お前はどういうポジションだよ!彼氏じゃねえなら黙ってろや!」
「うっ どういうって……う〜ん仲間?」
「な逃げたな。」
「サムソーうるさい!……じゃあ親友!俺の親友だから手出すな!じゃあな!」
「はぁ何じゃそりゃ!むしろ親友の恋ってのは……」
ちゅっ
「ひゃっ!?」
「今日はこれで我慢して……ね♡」
「はひぃ……。」 「お前ホント……。」
金髪男は引き下がった。一方既にガザリは何かを口走っている。魔術とやらを行使するのだろう。
「……偉大なる『フランツ』『エアーズ』『カタゴラス』『デュオセントラ』『霊亀一門一同』(敬称略)に感謝を表明し魂の誓いを以て今奇跡を起こさん!」
「
ふわっ
「うおおっ!?」
ラーヴァ達は空中に浮き上がる。ラーヴァの炎はひたすら進行方向に押されるといった感覚だがこれは重力が奪われ自由になるという感覚だ。
「何だこりゃ!?う……うわわっ……。」ふよふよ……
「まずは慣れだね!ラーヴァ君ここまで移動してみて!」
「いや……どうやって……。」
「手や足に限らずとにかく前に体を押し出すイメージで!頭を前に突き出すだけでも前には進めるよ!」
「おおっほん……あああああ!?」くるくる
「あっ でも重心には気をつけないとだったね……。ごめんごめんまずは私と一緒に移動しよっ!」すすすー
「ばびぶべ僕も手伝う。」すっ
「おっ おおっ イケるイケる!ああ成程そういう感じね!これ同じ側の手と足出すを繰り返すと上手くいくぜ!」
「離すぞ。」「その調子で頑張れ!」
「あれ?あっ あわわっ またっ」くるくる
「ラーヴァ君ちょっと猫背?前傾姿勢になりがちだよ!」
「あ、いっその事横になって泳ぐようなやり方の方が良いかもな。」
「それで頼むサムソー!」
ラーヴァは最初慣れない感覚に戸惑いつつも空中で一回転したりサムソーやメグメグの肩に寄りかかりながら移動する事を通して感覚を養い周りと遜色無いレベルで動けるようになった。
「うおおっ 慣れると楽しい〜!」
「ラーヴァ君下見られる?」
「ん〜?」
「わああ……。」
ラーヴァの下に広がるのは眠らぬ都市、最大都市ナイロンの夜景だ。ランプの明かりですら文明を感じる極限環境にいた田舎の少年ラーヴァにとってその街並みは魅惑的かつ幻想的な力に満ち溢れており、空中をプカプカと移動している事もあってラーヴァの頭の中はもはや夢を見ているように感じていた。
「きれー……。中央大陸のヘンプや東方諸島のビニロン共和国でもこんなきらびやかな景色は見られなかったなぁ……。あ!おい見ろよメグメグ!」
「ん〜?どうしたの?」
ラーヴァが指差す先には紫色に照らされた塔がある。
「あれめっちゃ良いな!他の光よりも明るさも色彩も全然違う!なんだろうなあれ!」
「電波塔って言うんだって!紫は多分ここ『紫色のカリウ区』のイメージカラーから来てるんじゃないのかな?」
「町ごとにイメージカラーとか有るのか!」
「ああ!年に一度区の代表が集まって会議する時なんかも議員達がこのイメージカラーに合ったスーツを着てたりするんだ!更に区毎に条例が違ったりもする!」
「そうなんですね!ありがとうございますガザリさん!」
「はぁ〜……。なんか俺ずっとこうして漂ってたいかも〜……。先輩が情報収集してくれって仰ってたのもこれを見て欲しいって事だったのかな〜……。」
「……ラーヴァ。まみむめもうそろそろ現実を教えて良いか?」
「えっ 言っちゃうの?」 「ああ、いずれ知る羽目になるからな。」
「ん?なんだ?まさかこれ全部不知火の竜の能力とか?」
「あ、いやそうじゃないんだが……今目に見えている光は、もっと言うならこの魔術という技術は全て不知火が与えたものなんだ。」
「……!」
ラーヴァは戦慄する。美しく見えた下の景色は一瞬で下品で、暴力的で、侮辱的な物に変わっていく。今目に見えている全ては他でも無い憎き地球人の侵略の軌跡なのだから。自分を包む魔法の空気もアレルギーの様に触れた皮膚全てに痒みを与えていく。
「うっ うわああああ!!お、俺は飛べますから!解除してください!か、痒い!痒いぃ!」
「ええ!?どうして!?フリジットさんの氷符術札だって地球人の能力を利用したものじゃん!」
「それは利用してやった!って感じだけど……ここは利用させてもらってるって感じだろ!?不知火って奴がどんな顔してるかまだ見てないけど……そいつのニヤケ面が想起されるんだよ!」
「……馬鹿らしいな。」
チクリと刺すサムソーの一言。
「え!?」
「確かに地球人が憎いのは分かる。だがだからって地球人と奴らの全てを否定するのは頭のいい奴のやる事では無い。ばびぶべ僕達が普段使っている物や技術だって皆を幸せにする為に作られた物では無い。勿論誰の利にもならない物は殆ど無いが大抵の物は誰かの犠牲を前提にして成り立っている。はひフリジットの使う符術は地球人が来る前から炎と雷には戦闘用があった訳だが……それだって人間同士の戦いで発展した物だ。た地球人が来るまで氷系の戦闘用符術札が開発されなかったのは技術面での問題も有るが人や獣を殺めるのには炎の殺傷力と煙の猛毒が一番効率的だったからだ。はひふへ北方大陸で大人気、僕の仲間達もよく食べるチョコレートも原料は中央大陸に連れてこられた狸人間が無理矢理作らされていた物だ。」
「倒す為なら……地球人を倒す為なら何でもするんだろう?なら技術を拒むな。あいつらの持ってる良いものを全て盗んで、応用して、上でふんぞり返ってる所を突き落としてやれ。」
「……!お前の言う通りだサムソー。悪い。少し俺は冷静さを欠いていた。」
「分かれば良い。」「でもラーヴァ君のこの星への愛は立派だよ!七聖獣の私よりも!」「いやお前は負けちゃ駄目だろ。」
「……ただ理解した上で言わせてくれ。俺の術は解除して欲しい。」
「……何で?」
「なんか……凄い……おしっこしたくなってきた。利尿作用って言うのかな……なんか飛んでたら急に酷くなってきてさ!あそこ出た時は何もなかったのに!」
「え!?」「ああ〜……。」「ガザリ様これは……。」
「クク……」
ガザリは笑ってみせる。
「それは仕様だ。……実を言うと我も出そう。」
「ええ〜!?じゃあ後何分くらいで着くの!?」
「大分田舎よりの方だからな……後四十分位だな!」
「あっ……ああ……。」
「ラーヴァ君絶望しないで!頑張って耐えよっ!」
「もう頑張ってる!」
「ごめん!ああじゃあもう駄目そう!」
「かき空中にぶちまけるか?」
「「……。」」
四十五分後、ラーヴァ達はセーフハウスに到着した。
「皆ただいま!」
「「「団長おかえりなさい!」」」
ラーヴァ達は団員達に出迎えられた。団員は合わせて二十人に満たない程度だ。団長というのはガザリの事だろう。
「襲撃されたという割には皆さん元気ですね。」
「メグメグさんに皆治療してもらったからな!」
「メグメグお前本当凄いな。体力持つのか?」
「じゃあちょっと吸わせて……。」ぼす
メグメグはラーヴァの頭皮に顔を埋める。
「……これ楽しいか?」
「んふー んふー」
(……温かい呼気がかかって頭頂だけぼんやり温まって……なんか日向ぼっこしてる時みたいだ。案外吸われるのって気持ちいい……。)
「ぷはっ 終わり!」
「……って生命力吸って無いじゃないか。」
「ううん吸ったよ!ラーヴァ君も疲れた時は吸ってね!」
「誰が吸うか!」
「はひ夫婦漫才も板についてきたな。」
「いや夫婦じゃ無いから!」ビシッ
「ククク……。」
ガザリはラーヴァ達三人を奥の部屋へ案内する。オレンジサイドテールの女もついてきた。
「
「俺は良いですけど皆は?」
「たち付き添いでいるだけで僕達はもう挨拶を済ませている。か気にするな。」 「むしろ居て!その方が楽しいよ!」
「では。」
「まずは我から行こう!我が名は『ガザリ・エアウォーク』だ!」
“超月揆団 団長 ガザリ・エアウォーク”
「そしてこちらが『オータム・プロジェクション』だ!」
「皆様よろしくお願いします。」
“超月揆団 副団長 フォール・プロジェクション”
「二人共よろしくお願いします!俺の名前はラーヴァ・ジェノサイドです!これから当分お世話になります!
「ああ!おお素晴らしい!何てやる気に満ち溢れた少年……!フリジットさんも君に慕われてさぞかし幸せだろう!」
フリジットが話題に上がるとラーヴァは露骨にテンションが上がる。
「えっ!フリジット先輩の事知ってるんですか!?」
「ああ知っているとも!というのも我はかつて
「俺達の目標は……ああもう二人から聞いてますかね?意気投合したって事は。」
「今晩捕まってしまったフリジットさんの解放だね?我としても彼を解放したいと思っているよ!そうだからこその意気投合だ!」
「フリジット先輩はとってもかっこいいですよね!」
「我もそう思う!」
「あ、待ってくださいかつて
「聞きたいかい?」
「はい!とっても!俺もここまでの道中での先輩のかっこいいところと可愛いところをですね〜……。」
ファンボーイ二人はすっかり自分達だけの世界を作ってしまった。
「混ぜてもらえそうにないな。」 「東方諸島での一ヶ月で結構距離縮んだと思ったんだけど、まだまだラーヴァ君のナンバーワンはフリジットさんだなあ……。」
「あの……お二人共良ければ手伝って欲しい事が有るのですが……。」
フォールは暫くガザリの方を見て話が終わるのを待っていたが当分終わらないと勘づき二人に小声で話しかけて来た。
「どうしたの?」
「少々外へ……。」
三人はセーフハウスの外に出た。
「都市部はすんごい暑さだったけどここは幾分か涼しいね。」
「ああ本部が潰されたから荷物が外に積み重なったままなのか。」
「はい。ちょっと運ぶのを手伝ってほしくてですね……。」
「どんとこいだよ!私一人で百人力だから!」
メグメグはそう言うと団員達が二人で苦労して運んでいる荷物を一人で持ち上げてしまう!
「んえいしょお!で、これはどこに置けば良いの?」
「ああ……。取り敢えず二階の一番奥の部屋に積んでおいて下さい……。」
「はいはい!うんしょ……うんしょ……。」
「負けてられないな……。あいうえおい、僕にももっと積んでくれ。」
「ええ!?大丈夫です……?」
「呪術師を甘く見ないでくれ。」
二人は引越し作業でも大活躍を遂げた。
「いや〜二人のおかげですぐに終わったよ!」
「まさか一晩で片付くとは……。」
「えっへん!」 「かきくけこの程度どうということはない。」
「あ、そういえば皆は襲撃前に夕飯は済ませてたの?」
「いや……それが……。」 「すっかり忘れてたぜ……。」
「じゃあ私が作るよ!新人歓迎会も兼ねて!」
「おお本当か!助かる!」 「新人歓迎会なのに新人が作るのは良いのか!?」
「私は皆の喜ぶ顔が見たいから!腕によりをかけちゃうよ〜!」
メグメグは右腕で
「本当に何から何まで……ありがとうございます。ただお二人には少し見て欲しい物が有って……。」
「なになに?」「まだ他にも仕事が有るのか?」
二人はセーフハウスから少し離れた所に案内された。
「……成程確かに。」 「新人が必ず見るべきものでは有るな。」
連れて行かれた先は墓場だった。一族毎というわけでは無く、個人名が刻まれているので今までに亡くなった団員達の物だろう。
「本当は先程の団長、副団長としての挨拶が終わったら見せに行きたかったのですが……ガザリ様の邪魔はしたく有りませんので。先にお二人だけでも……。」
「うん……。」
メグメグは亡くなった団員達に思いを馳せる。一方基本的にサバサバした気質のサムソーは現実的な事が気になったようだ。彼はフォールに質問する。
「そういえばこの組織はどれ程前に成り立った物なんだ?不知火……というより地球人が来たのが四年前、フリジット達三人衆がここを発ったのがAD198年4月2日。成り立ちは意外と最近か?」
「実際に組織として立ち上がったのは人類最高戦力三人が旅立ってからですが、既にAD197年頃には今の超月揆団のメンバーの大半が所属しているグループが成り立っていました。組織内部に残らずこうして独立したのは内部だとどうしても腐敗の影響を受けやすいというのと実際に独立した組織として存在する事で民衆を苦しめる
「成程な。理解した。ありがとうオータム。」
「それなら良かったです。」
フォールはサムソーとの話を終えると一つの墓の前まで移動した。その墓にはこう書いてあった。
《フォール・プロジェクション 十八歳 ここに眠る》
「ねえこのお墓……オータムさんの姉妹さん?」
そこには既にメグメグがいた。フォールは話を始める。
「はい。これは
「……。
「はい!」
「さて、そろそろ行くか。多分あいつらが腹空かせて待ってるし。」ぎゅうぐるる……
「……。」
サムソーは空腹からかお腹を鳴らしてしまう。
「サムソーさん可愛い〜♡ふふ、今晩だけで色々あったもんね。お夜食頑張っちゃうぞ〜!」
「ああ、いや……これは……。」
「サムソーさんも意外と人間味のあられる御方で。」
「あああ……ぐう。」
三人はセーフハウスに戻った。
「うおおメグメグさん帰ってきた〜!」「肉じゃがでお願いします!」「いやここはクラムチャウダーで!」
「わっわっ ちょっと待っててね手洗ったらすぐ始めるから!取り敢えずジャガイモは確定かな!?」
「……〜!で、結局メグメグが歌歌うってなって先輩と俺がバックダンサーになったんですけど!もう最初の一週間はまあ他の仕事も有ったんですけども全然先輩のレベルについてけなくて!」
「フリジットさんあれで人に教えるのはそんなに上手じゃないみたいだしな〜……見様見真似って感じだったんだな?」
「まあ正直言うとそうでしたね!でも先輩一つずつ出来るまで一緒にやってくれて……」
「まだ話してるのかあいつら……。」
「ガザリ様……。」
北方大陸に上陸後、早くもその洗礼を浴びたラーヴァ達。なにはともあれ、何とか七月十三日を乗り越えたのであった。
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