第29話:乗り込め!北方大陸!

船で北方大陸へ向かうラーヴァ達。北方大陸には一日もすれば着くだろう。船に乗せてもらったフリジットだがその顔色は優れない。彼は夕食の後ラーヴァとメグメグそしてサムソーの三人を自室へ呼んだ。

 「船員達の人達にはもう説明したんだが……。おれは実は世界中で指名手配されていてな。」

「そういえば中央大陸で先輩の事とやかく言う人がいましたね。」

「そういう理由でこの船は表向きは凶悪犯罪者オトノコ・フリジットに脅され占領された船という事になっている!三人も口裏を合わせてほしい!そうでないとこの船がAEA反地球同盟の検閲に引っかかった時に三人も捕まってしまうからな!」

「えっ!?そんな突き放すような事言わないで下さいよ先輩!捕まっても俺達と脱出しちゃえば良いじゃないですか!」

「それとも外で私達にも役割があるの?」

「そうだメグメグさん。役割……というよりかはやって欲しい事なんだが三人には惑星一の都市……最大都市ナイロンを素性を隠して観光してほしい!」

「「「!?」」」

 フリジットは至って真剣な表情を崩さない。彼は話を再開する。

「あそこは今まで見てきた全ての場所とは一線を画す大都会だ。しかもそれはある地球人によって成り立っている!」

「地球人……!?」

「そういえば小鳥遊さんも上の女の人の居住スペースの文明レベルを無理矢理引き上げてたね。……あれ以上なの!?」

「ああ。あれ以上だ。きっとおれがいなかったこの数ヶ月で更に発展している事だろう。観光して欲しいというのは即ち、何処に何が有るのかの情報を入れてきて欲しいって事だ!」

「成程……。」

「それから一旦おれの事は置いておいてAEA反地球同盟についてフラットな視線で見てみてほしい。おれはあの組織を裏切ってしまったが……電気の符術師のクアリアさんを始め多くの人と縁も有れば恩もある。出来れば正面衝突は避けたい……。組織がうまく機能してるなら文句は無いわけだしな!もしかしたらおれの仲間の一人が状況を良くしてくれているかもしれない!それも確認してきてほしい!」

「ハンダーを見るにまともな奴は全滅してそうですけどね……。」

「分かんないよラーヴァ君!ねえフリジットさんその仲間って人は同僚さんなの?」

「ああ!唯一裏切らなかった……というより理由あっておれ達の為に残ってくれた良い人だ!今は多分『最後の人類最高戦力 ジャック・オブ・オールトレーズ』と呼ばれているはずだ!」

「先輩達と同格……!仲間になったら戦力大幅アップですね!」

「ああ!何なら同じ肩書なだけでおれは人類最高戦力最弱だしな!ジャックさんがいれば一気に楽になる!」

「あい上手くいくと良いが……。」

「皆さん港につきました!やはりAEA反地球同盟の連中が検閲を行っています!」

 マリオの声だ。

「もうそんな時間か……!それじゃあ三人共、頼むぞ!」

「分かった。」 「うん!」 「ああでもまた先輩と離れ離れ……。」

「どきなッ小僧ッ!」

「うわあっ!」

 扉の向こうでマリオのうめき声がする!

「何をしているんだ!?」ガチャ

 フリジットは扉を開ける。

「何って検閲ですよ〜ッ はいじゃあ怪しいものもとい欲しい物貰いますよッと……えッ?」

 検閲に来たAEA反地球同盟の職員とフリジットの目が合う。

「う……うわあああッ!!本当にフリジットが出たぁ〜ッ!」

「くっ バレたか!逃げるぞおれは!今自室にいた人達は関係無いからな!」だっ

 (フリジットさん嘘つくの下手すぎるよ!棒読みになってる!)

「あ、待て!俺に捕まえさせろ!お前捕まえると褒奨金めっちゃ貰えるし!お前らは後だ!」だっ

 その後フリジットは大して抵抗もせずAEA反地球同盟職員に捕まった。ラーヴァ達が甲板に出ると外はすっかり大騒ぎになっていた。

「見ろ〜ッ!俺があのフリジットを捕まえたぞ〜ッ!」

「やられた〜……。」

「すげぇ!」 「かっこいい〜!」 「写真撮らなきゃ!」

「船員の皆さんを保護します!フリジットが運ばれるまで皆さん甲板に待機しててください!」「いいけどお土産の引潮鯛は取らないでよ!?」「そうはいきません船長!爆発物が仕込まれている可能性が有りますし、うへ……美味そうなので……。うへへ。」

 (やっぱり腐ってるこの組織!)

 (AEA反地球同盟の悪名は僕達の耳にも届く程だ。たちつて特にここ北方大陸にいる奴は特段腐ってるらしい。)

 (こういうのって地方に駄目な人左遷するものじゃないんだね……。)

 (発想がゲスいぞメグメグ。)

 (いや一般論としてね!)

 ラーヴァ達は他の船員達と同じ様に事情聴取に向かった。

「……つまり君達はフリジットとは関係がないと?君達はたった三人であの大きな船を貸し切りにしていたのかい?」

 フリジットの部屋にいたラーヴァ達は特別怪しいと疑われ、それぞれ個室に案内され職員二人に尋問を受けていた。今は長髪の職員が質問を繰り返しているところだ。

「そう言ってるでしょうが!天下のAEA反地球同盟職員さんは話を一度で覚えられないんですか!?」

「……!貴様この……!」

「おちつけ!いちいち煽りに乗るなあああ!!」

「「お前も落ち着け!」」「ぐう……。」

 床に髪が付くほどの長髪の職員は隣の赤眉スキンヘッドの職員を宥める。長髪の方が立場は上のようだ。

「……特別金を持っているようには見えないんだがな〜……。明らか未成年の君も水色と茶色の髪の奴隷民族たぬきにんげん達も。てか戸籍登録されてるやつ一人もいないし。」

「え〜とあの船員さん達、中央大陸の商人たちと縁が有るって知ってます?その商人の人達が俺達に恩があって、それで船に乗せてもらってたんです!」

「ふ〜ん……。ただ君達が乗ってた船中央大陸や北方大陸で使われてるやつじゃないんだけどな〜。」

「それは一度東方諸島に漂流しちゃってですね……。そこで現地の方から貰ったやつてして……。」

「どう?他の連中と話一致してる?」

「奇跡的に一致してるぜ!」「そっかー……。」

職員達はやり方を切り替えてきた。

「貰ったって言ったよね?さっき。」

「はい。」 

「貰った?奪ったじゃなくて?あのゲスのフリジットにそそのかされて。」

「……!」

 (耐えろ俺……!確固たる証拠が無いから切り替えてきただけだ!ここで怒るのは先輩の為じゃない!このまま凌げば……)

 がちゃ

「「「!!」」」

 尋問室のドアが開く。ドアの前に来たのは茶髪の男……ハンダーだ。その隣には白髪の老人がいる。扉から見える左の横顔はダルダルの皮により構成されておりかなり歳がいっているのが伺える。手足は今にも折れてしまいそうな程に貧弱だ。

「彼が赤髪のラーヴァ君……で合っているのかい?」

「はい。間違いないです。そいつがラーヴァです。」

 ぎこちない敬語だ。あのハンダーが敬語を使っているあたり温かな声の老爺は相当高位の者なのだろう。

「何だよお前ここに来てたのか!頼む俺達が各地でしてた事を報告してくれ!」

「こいつが世界各地をフリジットと荒らして回ってるラーヴァ・ジェノサイドです。」

「はあ……?」

「そうか……。では行こうかのう。」すたすた

 老人は歩いて去っていく。ハンダーが扉を閉める直前彼は司令を出す。

「拘束しておきなさい。彼はフリジットさんと共に処刑すべき存在じゃ。」

 がちゃん

「……あの野郎!やっぱり駄目なままか……!」

「駄目なのはそっちだ!過激派野郎!」

「過激派だと?話し合いで解決できる次元に奴らはいないだろうが!もうこの際だから言ってやる!お前らは腐ってやがる!反地球同盟等と名乗っていながら地球人と全く交戦してないじゃないか!俺達がやったのは本来お前らがやる事だ!しかもそれだけじゃない!あろう事か実際に活動している先輩を裏切り者扱いして……。さっきお前らは先輩の事をゲスだと言ったがそれはお前らだ!どうせ地球人のゲスが移ったんだ!」

「おい君。今誰の事をゲスと言ったのか?」

「耳が遠いな本当に!それとも一度じゃ理解できない位腐れ脳みそなのか!?」

「死ねぇ!」チャキ

 髪の長い職員はラーヴァに銃を向ける!

「おい捕らえておけだぜ!殺すのは」

 ダン!

「うっ」

 髪の長い職員は弾丸を発射する!

 ギュイン  ビス

「えっ?」どさっ

 ラーヴァの頭を射貫くと思われたそれは急激に逸れ隣の赤眉の職員を射貫く!

「てめえも黙れ!鉛玉咥えてな!」

「な……何を……?」

「私は……確かにさ?職権使って身内の問題揉み消したり気に入らない奴を過激な『反融和派』として牢屋にぶち込んだ事もあるよ?父さんが再婚出来るように上京して住民票移してきた子とお見合い組んであげたのなんて数え切れないし……。」

「やっぱりゲスじゃ……」

「でもさ、分かるんだよ。本物の悪は。」

 長髪の職員は勢い良くラーヴァを指差す!

「それは君だ!悪魔フリジットを信奉し不知火様をそしてその名の下に正義を保証されたこの私を愚弄した!血継呪術!『七分の六の必中弾ザミエルルーレット』!不知火様の名の下に君を撃つ!」

「先輩ごめんなさい……やっぱ和解は無理です!」

 テーブルとイスそして天井の照明があるだけの狭い尋問室で戦いが始まった!

「喰らえ!」ダン!

 髪の長い職員は一発の弾丸を射出する!

「ふん!」

 ラーヴァは席を立つと自身の周りを炎で覆う!

「鉛を溶かす程度の熱量なら余裕で出せるぜ!」

 ジュッ

 鉛玉は炎の中に入っていき虚しく消えた。

「炎の異能か……ふうん……。」

(こうして防いでいればリロードする時間が出来るはず!改造人間二号もそうだった!そこで周りの炎を解除してあいつの脳内に炎を叩き込んでやる!)

 ズゾゾ……

「へっ?」

 パキパキパキ

 炎の円の内側で溶けた鉛の弾丸が再構築されていく!

「はっはあ!?」

 クルクルクル ビシュン!

 回転運動を取り戻した弾丸がラーヴァの眉間めがけて突っ込んでくる!

「うっうわあああああ!!」

ドジュウ!

 ラーヴァの眉間に鉛玉が触れる。ラーヴァを取り囲む炎は解除された。

「早くも決着……。」

「はあ……はあ……。」

「とはいかないか。」

 ラーヴァは自身の右手を頭に当て体そのものを超高熱にすることで鉛玉を防いだ。

 (間一髪!もっと早く使うんだった……。ただこれも無敵ではない……。肺の中の空気が膨張するから実質的に呼吸が出来ない……!)

「自身を熱してもなお死なないとは……。君は竜なのかい?」

(竜……じゃない!竜を殺す為の能力だ!)ばっ

 ラーヴァは左手で遠隔の炎を出し職員の脳を炙りにかかる!

「喰らうものか!」

 職員は左に避ける!ラーヴァの掌もそれを追う!

「はっ」ダン!

 弾丸は照明を撃ち抜く!その後ラーヴァの眉間に飛んでくるもそれは問題なく溶かすことが出来た!しかし外界と分断されているこの部屋は真っ暗になってしまう!頼りは遠隔で出した炎だけだ!

(ちぃっ 何処に行った!?)

 ……シーン……

 (不味い……!まさか俺の弱点がバレてるのか!?このままやり過ごして窒息を狙うつもりか……!?)

相手は中々見つからない。

 (くっ 遠隔の炎じゃ範囲が狭い!ここはやはり……)

 (前方豪炎噴!)ボヒュウウウ

 ラーヴァは前方を焼き払う。しかしそれでも相手を見つけられない!

(い……いない!?まさか外に……!?)

 ラーヴァは部屋の外へ脱出した。外は先程の発砲がありどよめいている。ラーヴァは自身の能力を解除すると職員の一人、への字口の職員に話しかけた。

「お……お前は!」

「助けて下さい撃たれそうになりました!あっちの部屋で……」

「お前がやったんじゃないだろうな?反融和派あかがみこぞう!」

「違います!銃なんて持ってないですし!大体俺の武器や防具は皆今没収されてるじゃないですか!」

「ちっ……となるとお前の尋問をしてた奴が発砲しおっぱじめたってことになるが……どんな奴がお前に対応してた?」

「髪の長い人で……正直声も高くて性別はどっちか分からなかったんですけども……」

「髪が長い!?どの程度だきゃっかんてきには!?」

「前も目が見えないくらいですし、後ろに至っては床につくレベルで……」

「……!完全理解わかったぜ……!しかしこんな事あるガチかよ……!」

 への字口の男は汗を滲ませる。表情から恐慌が見て取れる。 

一般人ごまあぶら徴収しぼって敵対政治家アンチさらしあげなきゃ乳飲み子ママっこ扱いされる俺達だけどよぉ……!」

「こいつは……『ショット』の奴は特段異常者やばいやつだぜ!親父おきにが好きすぎて町一つ武力と権力わがまま支配するオトす程の重職権濫用者ヘビーユーザーだ!」

「で……その人逃げ出しませんでしたか?」

「いや……見ざる聞かざるちかくしてないぜ!多分お前の責任たんさくぶそくなんじゃないか……?」

「そうですか……。あの……付いてきてくれませんか……?」

「ちっ……お前はさらしあげなきゃならないしな……!了承したわかったぜ!」

 ラーヴァは先程の暗闇の部屋に戻っていく。明かりを手前から少しずつ奥にやっていく。最初に見つけたのは扉の前で血を流している赤眉職員だ。

 「せめて冥福あれなむあみだぶつ……。きれーに眉間を……やっぱ他者再現不可能あいつしかいないか……!」

 更に奥に炎を動かしていく。すると何か棒状の物を焼いた。テーブルの足だ。

微調整要求ちょっとずらせ。」

「はい……。」

 足元には四発の弾丸が落ちていた。ラーヴァに飛んだものは全て着弾し、それを溶かして無力化したはずである。

 (まだ撃ってない玉を捨てたのか……?)

そこから更に少しずらす。

 ボヒュ!

「「!」」

 髪に引火した。

 (そうか……!灯台下暗し……!俺のそばのテーブルの下なら狙われづらいと踏んだのか……!)

 「このまま焼き払って……!」

 ダンダンダン!

 一度に三発の弾丸が発射される!

「うっ」

 ラーヴァは咄嗟に頭を熱し保護する!

 ドシュ ドシュ ドシュ !

 しかし弾丸は左右の二の腕を撃ち抜いた!

「ぎいっ!?」

 「あれっ?もう一発は……。」

「ぐうあああ!!」ドン!

「うわっ」 「ぶねっ」

ラーヴァの右肘が破壊され遠隔の炎の位置がズレたのを良いことにラーヴァ達を押しのけショットが出てくる!彼は自身の左腕を押さえている!

「まさか自分を撃ったのか!?待ちやがれこのっ」

 ラーヴァは足の炎でショットを追う!

 カショカショカショ カランカラン……

 ショットは残り四発の弾丸を全て落とす!

 「リロード!部位変更だ!喰らえ悪魔の手先!」

 ドンドンドン!

 ショットは前を向いたまま三発発砲する!勿論弾丸は急激に逸れ今度は三発全てがラーヴァを狙う!

 「うっ!?」

 ラーヴァは左に曲がり避ける!弾丸は尚も追尾をやめない!流石のラーヴァといえど弾丸より速く動く事は出来ない!

「なら……!」

 ラーヴァは前傾姿勢をやめ足を下に向けた。つまり逃げるのをやめたという事だ。

「お前何を……」

 ジュウウウ……

それは上に上がらなくなってしまった両腕を腿に当て足全体を熱することで保護する為だ。

「ふう……。」 「おお……。」

 案の定左右の腿を狙っていた三発の弾丸はラーヴァの体に触れると肉まで到達できず霧散した。

「奴は!?」

 黒の長いウィッグが燃えている。途中で捨てたようだ。

「動くな〜!容疑者このばにいるものは一人も動くな!動いた者から始末さようならだ!」

「「「!」」」

 への字口の男は大声を出し廊下にいる者を引き止める。

「お前……!」

「上からのお達しだからな!お前に死なれるのは不味い!ショットの執念深さからいってここで取り逃がしたら間違いなく暗殺される!何より仲間フレンド手にかけるファイアする奴と合同作業しんしょくをともにするのはシ◯トだしな!」

「助かった!必ずここで倒そう!皆妙な動きはするな!ここに集まれ!」

 そうして招集をかけると四人の男女がラーヴァ達の前に集まった。

「この中に仲間を手にかける恐ろしい呪術師ショットがいる!まずは皆自己紹介をしてくれ!何でここに居たのかも言ってな!」

 四人は顔を見合わせ順番を決めていく。最初に二人の前に現れたのは金髪で気の強そうな大男だった。

「俺様は『グロッケン』。今さっき『紅色のストロン区』でみかじめ料徴収に行ってた。今はその報告の帰りってわけ。今日上の方ゴキブリみたいに人群れててさあ……端の方にある階段の方が人少なくて便利なんだよ。それでここ通ってたわけ。一応来てやったけどもう行って良い?俺様が時間取られるとかマジ無いから。」

「上からのお達しだ。協力しなかったと密告すチクるからな?」

「けっ!」

「おいちょっと良いか?」

 ラーヴァは一つ重要な事に気付いたようだ。

「あん?」

「お前その左腕の包帯は何だ?」

「おっ さっそく犯人判明か!」

「あ〜……これさっき言った徴収の時でさ、店主が払えないです〜もう勘弁下さい〜とか言っちゃって。それで恐喝してたらナイフぶっ刺してきやがったんだよ。まあ返り討ちにしてやったけどな。そんだけ。良いか?」

「分かった。とりあえず下がれ。」

「後三人分話すまで帰れないとか最悪〜……。」

「どうだ?今の奴?見覚えあるか?」

「いや……俺人の顔覚えられなくてさ。ぶっちゃけ代表として出てくる上の人以外容量圧迫価値無おぼえてないんだよね。」

「ええ〜……。」

「そういうそっちはどう?今の奴。」

「怪しい部分はあるんだが……身長が合わないんだよな。あんなデカかったかな……?」 

 次に来たのは薄毛の若い男だ。

「私は『ソソゲラ』。今日不知火様の座談会があるんだが上のホールは待機する人が騒がしくてどうにも性に合わなくてね。ここで待機してたのさ。」

「さっきから出てくる不知火様ってのは地球人だよな?ネーミング的に……。」

「うん。なんか偉いらしいぜ。皆言ってる。」

 への字口の男が答えた。

「軽っ!ところでその……頭髪のことなんですけど……。」

「ばっ馬鹿にしないでくれよ!」

「あっ いや……馬鹿にするとかじゃなくて……。ウィッグとかは……」

「これから不知火様に生やしてもらうんだ!フン!」

 (成程……不知火って奴に乗っ取られてるのかこの組織は……!)

 男は腹立たしそうにして次の者を呼んだ。来たのは小柄で小動物を思わせる茶髪の女だ。

「サミュは『サミュ』なの!今日は治安維持でパトロールした後なの!だからちょっと臭いかもなの……。」

「……確かに酷い硝煙かました後の匂いがするぜあんた……。」

「今日も犯罪者を裁いて回ったの!悪を討つのはとっても気持ちいいの!」

「まともな奴もいるのか……?」

情報開示するとちなウチの冤罪発生率は三十パーオーバーだぜ。だけでも。」

「期待した俺が馬鹿だった……。ただこの人は小さすぎる気がするが……。次の方来てくれ。」

 最後に来たのは黒髪の目つきの悪い男だ。

「ぼっ僕は『ウキシ』です。ここにいた動機は六階にいる最後の人類最高戦力ジャックさんにご飯を渡す為です。」

「ふ〜ん……。ジャックって人は君から見てどう?」

「同志です!とても良い人ですよ!気遣いを忘れない方ですし!」

「そうか。ありがとう。身長的には君が一番近い気がするけど……。確固たる証拠が見つからないな……。」

「そういえば皆銃は持ってるか?持ってるなら一度に七発撃てるやつか?」

 全員自身の銃を見せた。金髪の男は少々いじってあったがラーヴァを撃った銃はAEA反地球同盟職員共通装備のようだ。

「こんな物あっても地球人は殺せないだろうに……。」

「今のAEA反地球同盟は治安維持組織の側面が強いの!大事なの!」

「はあ……。」

 (相手はやっぱり隠し通して不意打ちをかますつもりか……。一撃で致命傷を与えられる上真正面からだと熱で攻撃を防がれる以上当然ではあるが。もう能力抜きで探すのは厳しそうだな……。)

 ラーヴァはまだ燃えきっていないウィッグを掴む。

「これに何かあるかも……。昇華憶火閃!」ボッ

「燃やすとなんかあるのか?」

 ……キーン……

 ラーヴァにはウィッグの記憶がなだれ込んでくる!作られた時の記憶やショットが被った記憶等が入ってくる!しかし入ってきた記憶に登場する人物は四人の内の誰でもない!

 (ウイッグを取った後に見た目の情報を足してるのか!くそ……手慣れてるな……!)

「え……とああはい!この炎で燃やすと燃やされた生き物や物の記憶が読めるんです!」

「「「!」」」

「はぁ〜?スピリチュアルにも程があるだろ。あんまふざけんなよお前俺様はもう帰るから。」

 金髪は背後を見せ立ち去ろうとする。

「あっちょっと……」

「犯人確定だな。独断と偏見であいつって事で焼いちまえ!」

 への字口の男が金髪の男に大声を浴びせる。

「んぁあ!?」

「お兄さん呪術の存在も知らないの?サミュ分かったのね!お兄さん馬鹿なのね!それにAEAここに来たくせにさほど鍛えてないのね!」

「黙れこの……。じゃあ俺様のこの包帯を焼け!それで潔白証明出来んだろ!」

「話が早くて助かります!では失礼して……。」ボッ

 ラーヴァは右手で金髪の男の包帯を焼く。ラーヴァは腕を上げられなくなっていたので金髪の男に跪いて包帯を手の前まで持ってきてもらった。その時だった!

 バン!

「「「!?」」」

 ビス

 「ぐああっ!」

 薄毛の男が痛みにより声を荒げる!彼の腿は血で染まっている!だがしかし悲しい事に薄毛の男の怪我に注目する者は一人もいなかった!なぜなら彼の手には銃が握られていたのだから!

「お前か犯人は!しかし運が無かったな!」

 「ち、違……」

 がしっ

 ラーヴァは膝をつく男の頭に触れる!

「萎牙気殺爆炎掌!」ジュウウウ……

「うああっ」どさっ

 ラーヴァは薄毛の男を失神させた。

「殺したのか!?」

「いや、ちょっと気絶させただけだ。こいつを俺と一緒に牢屋に放り込んでいてくれ。」

了承したわかったぜ!」

(こうなってしまっては仕方が無い。一度先輩と合流して一緒に脱獄なりなんなりしよう!)

「万事解決なの!」 「人騒がせな……。」 「怖かった〜……。」

ラーヴァは自らの意思で地下牢に閉じ込まれる事となった。薄毛のソソゲラはラーヴァの様な政治犯とは別の場所に収監される事となった。

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