第28話:小象対大蟻②
――島・少し前――
「駄目だぜメグ子ちゃん!この島草や低木ばかりだ!」
「何お前俺の呼び方パクってんだよ!」
「いいじゃん!」
「ばびぶべ僕も見つけられなかった。」
「「いやお前ずっと地下いたじゃん!」」
「まみ寧ろついてこなかったインフェルノがおかしい。は一目見ればまともな木がないなんて分かるし。はひファットとやらに仕込みを完成させておいたぞ。あい受け取れインフェルノ。」
「……ちっ おうありがとな!」
サムソーはインフェルノに特注の大きな符術札を渡した。
「ありがとう!でも皆見つけられなかったか……。立て続けで悪いんだけど、皆服とか靴に植物の種入ってない!?」
「種!?ンマ〜長らく船での生活だったもんで……。」
「あ。さしすせそういえば僕達は一度北方大陸に戻ったな。」
「万年樹の種がありゃあ……。あ!」
「サムソーあんじゃねえか!靴に付いてるぜ!」
サムソーの右の靴の溝には万年樹の種が挟まっていた!
「サムソーさん貸して!」 「はい。」
「はあああ!」ポアアア
メグメグは種を植え生命力を吹き込む!
ピク……ピクピクニョキメキメキメキメキ メ キ メ キ メ キ メ キ !
木はどんどんと成長していく!
「皆乗って!上から圧力をかければ横にそれて成長してくはず!」
「ンマ〜半端ねぇ!」「頼むから内陸の方にそれるなよ〜!」「やいゆえ横からも圧力かけとく。」
木は海の方へ成長していく!
「これで小鳥遊さんの所へ行けるね!」
「あれ!?でもあいつ居なくなってるぞ!?」
「あ居なくなってるわけじゃない。ざ呪力レーダーを活用しろギャンブ。はひふへ北西水面下に悍ましいほどの強者の気配が漂ってるだろう!」
「え!?あっホントだ!」
「北西だな!今度は南側に圧力をかけて……!」
メ キ メ キ メ キ メ キ
「いい感じだな!見えてきたぜ!」
女王小鳥遊を視界に捉えた一行!水面下から出ているのは羽だけだがそれでも下の視界全てを覆い尽くせる程のスケールだ!
「さあどう叩き込んでやるか……。」
ゴ ゴ ゴ ゴ ……
「なんか浮上しそうだぜ!?」
「あの人の上に乗っちゃおう!皆私に掴まって!」
「おう!」 「ああ。」 「あったけ〜……。」
三人は未だ巨獣形態を解除しないメグメグに飛びつく。メグメグは羽の先端めがけ飛びかかる!
ド ッ パ ア ア ア ア ン !
「えっ」 「高ぁ!?」 「ぶつか」
ド ン ッ
女王小鳥遊は浮上する!その高さは想像を絶するものだ!血痕飛行で移動しかなり島に近い浅瀬に移動したこともあり、足を立てると足だけで高度五百メートルを超えた!想定よりも女王小鳥遊が高い所まで立ち上がった為に大質量に真っ向からぶつかったメグメグはその衝撃を殺しきれずダメージを負う!
「ううう……。み、皆大丈夫だった……?」
「お陰様で何とかな!」 「想像以上のデカさだぜ全く持って……!」
「ああ。かきくけここは恐らく奴の胸の背面側……。何をどう攻撃する?」
「あら。来たのねブタども。」
「「「!!」」」
女王小鳥遊は背後を向く。彼女は視覚でメグメグ達を捉えた。複眼の一つ一つすらこの中で最も大きい体長八メートル強のメグメグを遥かに上回るサイズだ。
「ちょっと見てなさい。ゲームセットの瞬間を。」
そう言うと女王小鳥遊はくるくると回り始めた!すると大海原に巨大な渦が出来る!
「構うな!まずは羽を落とすぞ!」
「そこにはいないほうが良いと思うわよ?私がほんの少し動かすだけでたとえ当たらなくともソニックウェーブが起きるもの。もっと見やすい所で観戦すれば?特にブタギツネとブタゴリラ。あんたらにはよ〜く見てもらいたいから。」
「誰が……」
「かきくけここは大人しく従おう。か牙を向く瞬間を間違えるな。羽を飛ばした所で致命傷にはならないし。」
「ふざけんなよ!それで私達だけ助かってどうすんだ!あいつらどうなっても良いのかよ!?」
「私もそう思う!生命力……」
「ふん」ブ ア ッ
バ チ コ ー ン !
女王小鳥遊がほんの少し羽を動かしただけで爆風が起きる!羽に攻撃しようとした女子二人はあっさりと弾き飛ばされた!
「うああっ」 「フェルちゃん!」
インフェルノはメグメグの毛を掴み、高度約千メートルから落ちるのは何とか防げた。
「首のくびれが下を見下ろすのには向いてるわよ。そこに行きなさい。早く。」
「ンマ〜頼むぜお前らぁ!」
「クッソ……!」
胸の辺りに駐在していた働き蟻が来た。持ち上げられたインフェルノは半ば強引に皆に押し込まれ首のくびれに移動させられる。渦を形成して暫く経ち四人が首の辺りで待機していると渦の中心に巨大な乗り物が見えてきた。
「あ……ああ……。」
それはやはり潜水艦だった。完全に渦に巻き込まれていると言えるだろう。というのも、滑らかな曲線の刃からなるスクリューは岩がこびりつく、というより岩に埋まるといった方が適切な状態になっており、まともに機能していないからだ。
「み……皆は無事かな?」
「まあ致命的な穴は空いてないし圧壊してる様子もないから生きてるでしょうね。これからどうやって殺すか考えてたから生きてて良かったわ。」
女王小鳥遊は渦の勢いをわざと弱めていく。
「聞 こ え て る か し ら 〜 ? お 話 し ま し ょ 〜 !」
潜水艦は揺れが安定した所でハッチが開き、一人が出て来た。フリジットだ。船長の顔面には巨大な蟻の目が迫る。首にいるメンバーは急激な降下に落ちそうになるもぐっと堪える。女王小鳥遊は更に働き蟻小鳥遊を一匹頭からずり下ろしてきた。こちらは話を聞く用だろう。
「……おれが代表者だぞ。」
「フリジットさん……左足がもげちゃってる……。」
フリジットは何かが詰まった不透明な皮袋を手に持っている。
「それは何?供物?寄越してみなさい。」
「ああ……。」
働き蟻小鳥遊がフリジットから皮袋を奪い中身を確認する。
「え?なにこれ……ふふっふふふふ……あっははははは!!はぁ〜あ笑ったわ。素直で良いじゃない。降参ね?これは。」
フリジットは答えない。
「何も喋らないのが……かえって……ふふふそうねこれなら私が
「何が入ってたんだよオイ!」
「男性器よ!哀れな負け犬の
「「「!?」」」
「あらぁ?言われてみればあなた股が赤いわね。ふふ、自分から
「……なんだ?」
「あなた達の事だいちゅきなクソブタどもにぃ〜……これとあなたの生まれ変わった姿を見せてあげなさい。君をアンアン言わせてた僕の男性器もげちゃったよ〜ってね!そうだあの赤髪も仲間でしょ?船丸ごと引き上げてあげるわ。」
フリジットは皮袋を再び手に持つと船内に入った。女王小鳥遊はその大顎で大きな潜水艦を平然と持ち上げ自分の首元まで持ってきてやる。
「う……うそ……。」
「まじかよ……。」
カチッ
ハッチが開く。中からラーヴァとフリジットを含む三十四名の男達が出て来た。
「ラーヴァ君!フリジットさん!」
「ほら!早く見せなさい!」
「メグメグさん……。」 「メグメグ……。」
「「今がチャンスだ!!」」
「……は?」 「そうこなくっちゃな!」 「弱体をかけるぞ!」 「ええ師匠!」 「……!」
「「氷炎大爆発!!」」
ボ ッ ガ ァ ー ン !
ラーヴァ達の闘志は燃え尽きてはいなかった!全ては首の上まで移動する為の作戦だったのだ!下手に空にいると羽で移動された時危険なので二人は地面に足を付けた状態で二十メートル先の首筋を攻撃する!
「やはり
ブ ブ ブ ブ ブ ……
小鳥遊は再び浮上し始める!
「全員落としてやるわあああ!!」
(空中で一回転!寄生虫をふるい落とす!これで赤羽虫以外全滅ね!)
「うおおっ喰らえ!お◯ん◯んアタック!」
ボ ガ ア ア ア ン !
ラーヴァは皮袋を爆風で前方へ吹き飛ばす!
ゴ ロ ゴ ロ ゴ ロ ……
女王小鳥遊の頭を皮袋は転がっていく!
「いいやああああああ!!」
女王小鳥遊は自分の目の上を転がっていくソレの存在に我慢できない!前からの一回転を諦めバックからの一回転を試みる!
「このまま首を落としきる……!」
「「(ざ)弱体呪術・大蚊の法!」」ズ ア ッ
呪術師二人が弱体技をかける!
「「氷炎大爆発!」」
ボ ガ ガ ガ ガ ー ン !!
「分子の繋がりが弱くなった分爆発しやすくなってますね!」
「ああ!」
「私達にできる事は!?」
メグメグに話を振られ女子二人の方を振り向くフリジット。
「おいフリジットさん……。」
「アレ、撃てるぜ。」
インフェルノは鋭い目つきと僅かに左に上げた口角を見せフリジットに自身の作戦を察知させる。フリジットも同じ符術師故言われるまでもなく アレ が何なのかを理解した。
「……!メグメグさんは……生命力を
「え!?」
「ぺちゃくちゃ喋ってるんじゃないわよ!」
グ ル ゥ ン !
女王小鳥遊は後ろ側に回転する!彼女が頂上に到達した時ラーヴァ達は遂に落とされてしまう!
「うわあああ……」 「ひいいいい……」 「ンマ〜何とか空を泳げねぇかなァ〜!」
船員達は皆落ちていく!
「頼むぜメグ子ぉ!」
「うん!『毛玉広げ』〜!」ボ フ ァ ッ
一方女子二人はメグメグが毛を広げ表面積を増やし空気抵抗を大きくしたことで落下のスピードを落とす!
「船員達が……これで最後の一発!」
((飛ぶ相手の軌道を捉えて……!))
「「氷!炎!大!爆!発!!」」
ビュゴオオオボヒュウウウ
空を回る女王小鳥遊の軌道を見透かした一撃!
カ ッ
それは確かに命中した!それも二度攻撃を撃ち込んだ損傷部位にだ!
「げっ」
ド グ ァ ア ア ア ア ン !!
女王小鳥遊の首筋には合計三度の爆撃によって大きな傷が出来る!
ブ シ ャ ア ア ア ア !
「まずい心臓が!」
「ようやくダメージ入ったかよ怪物女郎!」
蟻の心臓にあたるものは背中側に細長い線上にある!遂に二人の攻撃は心臓に到達した!体液の混じった薄緑の血が大空を駆ける!
ぴちゃぴちゃっ!
「ぎゃ〜目があああ!」
「うっせーぞギャンブッ!おい!後は任せろ野郎共!フィニッシュは俺が決める!」
「頼むぞ!」「インフェルノさん……頼みます!」
ラーヴァはトドメをインフェルノに託し足に炎を宿すと船員達の保護に回る。
「かきく血継呪術。はひ
後ろに強く反らせた両腕を勢い良く前に飛ばすサムソー!バネのように力を蓄えられた両腕が巻き起こす風は船員達をラーヴァ達の下へ飛ばす!
「船員同士で纏まるんだ!」
フリジットはその巨体と鍛え上げた腕で船員達を捕まえていく!
「重量は大丈夫そうかラーヴァ君!」
「はい!何とか!最悪空気を爆発させて推進力得ます!」 「やべっオレ反対側〜!?」
ギャンブだけはラーヴァ達と合流できていない!
「逃さ……ないわよ!」
女王小鳥遊は一回転の直前で止まりラーヴァ達に腹を差し向ける!凝酸だ!
「嘘だろあの大きな腹から!?」
「直径百メートル以上!?よ……避けられるかどうかの次元じゃない!!」
「皆今助けに……」「何の札を使えば……!」
フ ァ ー ン フ ァ ン ファンファンファンファンファン……
「うわあああ来るぅぅぅ!!」
「煌牙竜殺爆炎掌!遠隔!遠隔!」
「さし少しでも風で距離を……!」
「うおおお符術解放!『
「『
ビ ュ イ イ イ イ イ イ !!
バ ギ ゴ ガ ゴ ガ ゴ ゴ ゴ ……
……シーン……
女王小鳥遊から放たれるは超威力・超広範囲・超高密度の凝酸の激流!恐ろしい事にラーヴァ達を取り囲む大気が丸ごと岩にされてしまった!
「あはっ ざまあないわ。」ペ キ ッ
腹の毒腺と繋がった巨岩の端っこは女王小鳥遊が腹を振るとあっさりと折れ、少しラグビーボールに似た形に固まりきった巨岩は回転しながら落ちていった。
「うわあああ!!皆!!」
(嘘……ラーヴァ君も……フリジットさんも……皆死んで……)
「気にしちゃ駄目だ!こいつを倒さなきゃ誰も報われねえ!」
「ゲームセットね。じゃあ私どっか空飛んでブタの屠殺待ってるから……」
(嘘だろ!?あいつら全員やられちまった!どうするオレ……多分今歯牙にもかけられてない感じだが……)
「ンマ〜ちやがれ!オレの必殺を喰らえ!」
(どうせ落ちて死ぬんだ!やるっきゃねえ!最期に漢咲かせてやる!!)
「「!?」」
唯一ラーヴァ達と合流できず女王小鳥遊の頭側にいたギャンブが女王小鳥遊に声をかける!
(メグメグちゃん!ここはオレを信じてくれ!)
(わかったよ!)
「は?あの狸の金魚の糞だったあんたに何が出来るの?」
「その人を舐めないほうが良いよ!私達が三人がかりでようやく勝てた人……次やったら負けてもおかしくない!」
(!?言葉に嘘がない……この
「死ねえええ!『ジ・エンド』ぉぉぉぉぉ!!」ブウン
ギャンブは女王小鳥遊の顔面に迫り右手を勢い良く振るう!
「ちっ」ばっ
小鳥遊は後退しほぼ元いた場所に戻った。即ち……
ゴ ツ ン !
小鳥遊の首筋に潜水艦がぶつかる!
「ぐっ」
「オラ!オラ!」スカッスカッ
「やっぱり
「二人共後は頼むぞおおおお!!」ひゅううう……
「ありがとう!ギャンブ君!!」
空気抵抗を増やしている二人と異なりギャンブはそのまま落ちていった。
「
「ゔん!」
メグメグは涙を抑え今目の前の強敵へ狙いを定める!もう残されたのはゆっくり落下していた二人だけだ!
「この……サムソーから渡された特別な札……『炎王』級の札をまずは飛ばす!」
インフェルノは斧で札を飛ばす!札は女王小鳥遊の首筋に勢い良くぶつかる!
「効かないわよそんな打撃。」
「そしてあれ目がけて!全力の一撃だああああ!!」
「はああああああ!!」
「『
ド ッ ゴ オ オ オ オ オ ン !!
二人は先に落ちた符術札に全力の一撃をお見舞いする!特にインフェルノの強烈な斧の振りかざしは本来竜でも死を覚悟するものだろう!
……シーン……
しかし何も起きない!
「……またブラフ?ブラフがいくらあっても本命の攻撃がなきゃ意味ないわよ?人の裏をかくのに執着しすぎたわね?本末転倒よバーカ!」
女王小鳥遊はもはや勝負は決まったと言わんばかりの余裕だ。
「逃げるぞ!メグ子ぉ!」
二人は女王小鳥遊から落下する。
「あっ 尻尾巻いて逃げたわね!」
女王小鳥遊は背を向ける二人に嘲笑を贈る!二人が落ちたのは高度千メートル超からだ!空中を浮遊できるラーヴァと毛玉を広げて空気抵抗を増やすことの出来るメグメグ以外でこの高さからの落下を防げるものは居ない!
「メグ子ぉ!お前一旦人間に戻れぇ!」
「えっ!?うん!」シュルルルル
「オラァ!」ぶんっ!
バ チ ー ン !
メグメグから離れれば最後、待っているのは落下死だけだ!にもかかわらずインフェルノはメグメグを下に叩き飛ばす!
「えっ!?」
インフェルノはメグメグの目を見て話す。
「ここらでサヨナラだメグ子!お前はギャンブを保護して……そんでもって生き残れ!……とりあえず目と耳覆っとけよ!」
わざと突き放すようなぶっきらぼうな声だ。
「なっ何を」
「符術解放……『
――フ ッ
ボ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ッ !!
ジ ュ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア !!
「ぬぁにぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「メグメグちゃん何が起きてんだ!?み、見えねえ!」
「見ちゃだめ!」
メグメグはギャンブの上から覆い被さり失明してしまいそうな光と熱量そして爆音から彼を庇う。
「ブタが……下らない……仕掛けを……」
ギ ュ ア ア ア ア ……
「何よ今度は!?」
カ ッ
ボ バ バ バ バ バ バ バ ゴ オ オ オ ン !!
「はあ゙っ!?」
二度目の大爆発。その爆心地は古代人の潜水艦だ!どうやら一度目の大爆発で動力源が破壊され制御が効かなくなったようだ!
「メグメグちゃん……。」
「そろそろ海が近いかな?私に掴まって!巨獣に戻ってあなたを守るよ!」
「うん!」
メグメグはギャンブの不安を和らげようと優しく話すと巨獣に戻りその毛と体を広げ落下速度を低減していく。
(そろそろ良いかな……?)
メグメグが目を開けると目の前には大海原が広がっている。眩しい光は過ぎ去ったようだ。ここから落下速度を落とせば上から勢い良く落ちていくインフェルノと合流できそうなものだが、ずっと下を向いていた事もありメグメグはすっかり彼女を見失ってしまった。そもそも先程の爆発の余波を食らっていない保証も何処にもない以上優先するべきは託されたギャンブだろう。
「海に着くよ!」 「ああ!」
バシャシャシャシャ……
「う……海だ!あの天空の島から帰ってこれた……!」
「うん……!」
二人は女王小鳥遊とインフェルノがいた方を振り向く。女王小鳥遊は羽を失い落ちてきているようだ。
「まだ終わりじゃないね!高波からちょっとでも逃げよう!」
「ンマ〜……あいつ一挙手一投足迷惑すぎんだろぉ!」
ヒ ュ ウ ウ ウ ウ ウ ……
ド ッ ブ ァ ア ア ア ア ア ア ア ン !
女王小鳥遊が墜落した勢いで海には高波が巻き起こる!メグメグは少しでも影響を下げようと島の方へ向かって泳ぐ!
「私の毛皮が有れば寒さも安心だから!絶対離しちゃだめだからね!」
「おう!」ぎゅっ
ザザザザ ザ ザ……
「お……終わった……?」 「勝ったのか?オレ達……。」
「「あっ」」
高波を凌いだ二人は女王小鳥遊の方を振り返る。……嗚呼なんということだろうか!彼女は平然と動き、全身を以てその生を見せびらかしているではないか!
「あ……あ……。」 「頼むもう死んでくれ……!」
「あはは……ははは……あっーはっはっは!生き延びたわぁあああ゙!!」
女王小鳥遊はその爆発により確かにダメージを負ったがそれは致命傷には至らなかった。
「ブタあんた……無知も良いところね……!私達竜は……熱には強いのよ!残念だったわねえええ!!」
「……みてー……だな……。」
「え?生きてるの?ブタゴリラゴキブリて……。動物コンプリート目指してる感じ?」
女王小鳥遊の上で爆発があり下側にいた者は比較的被害が少なかった事、連鎖的に発動した炎型符術札の爆発が運良く下に発動し、巻き起こった風が落下ダメージを低減した事、手足から海に着くようにし生存確率を上げた事……様々な幸運と実力が絡み合い、奇跡的にインフェルノは生存していた。四肢のすべてと相棒の斧を失いながらも彼女は生きていた!
「……一瞬で死ねなくて可哀想。」
「ほっとけ。体が生きようとしちまったんだよ。……どうもやり残したことがあるみてえでな!お前の死を見る事かね?自分でもまだ分かんねえが。」
「私の死?無理よそれは。でもまぁ非地球人にしてはよく頑張ったと思うわよ?足も一本飛んだし羽も焼け落ちちゃったし……体の上にいた働き蟻は九割型爆発と落下の勢いで死んだわ。二日持つとはいえ心臓も傷つけられたしね。」
プ カ プ カ …… プ カ プ カ ……
「と。ブタ共に希望を持たせるのはここまでにして。……あんた覚えてる?私が最初何してたか。」
「メグメグちゃん……あれ……。」
「ああ……そっか……元から……主戦場は……。」
「私が東方諸島百三の島のコロニーから栄養をたっぷり蓄えた働き蟻のイカダを移動させてた事。」
遂に本体に到着した働き蟻小鳥遊。彼女達は女王にその栄養を分け与えていく。
「ああ〜……。体が栄養で満ちていくわ〜……。激闘で失った生命力が戻っていく……。じきに欠損も治るわね。雑魚共、最後の仕事よ?私の足が治るところ見てなさい。」ザ ッ パ ア ア ア ……
グ ニ グ ニ グ ニ
「ふふっ ちょっとくすぐったいわね。あ、今のセリフ性的だと思った人は社会の癌なので自首してくださ〜い。」
ポ ア ア ア ア ア ア ……
ラーヴァ達一行が命を賭して与えた外傷は、全て治されてしまった。
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