第28話:小象対大蟻

島竜 小鳥遊 孤高亜。彼女の竜形態の肉体は実に驚異的といえる。まずなんと言っても圧倒的体躯。形状の違い上単純な比較は難しいものの全身を外に出した際の面積は日本の屋久島にも匹敵する。体表面に生えた毛は森林となり蟻としても異常なまでに盛り上がった二つの腹柄節は二千メートルにもなる。その巨体が持つ膂力と生命力は竜全体で見ても上位であり、彼女がその気になれば星を破壊する事も不可能ではない。そしてさらなる脅威として彼女は普段はフェロモンで操作しつつ場合によっては自分と意識を同接できる小型の働き蟻を生み出す事が可能である。(蟻の単為生殖で生まれてくるのは本来オスだが、全て雌な辺り子分を作るシステムはコモドドラゴンの様な爬虫類系に依っているようだ。)

 ――島――

 ド ー ン ……

 遠くに見える女王小鳥遊から爆発音が聞こえてくる。

「聞いたか!?お前ら避難しろ!」

「岩が飛んでくる可能性があります!皆さん地下へ〜!案内の方に従って〜!」

 島に残った組は避難の指示を出す。地下では男性の船員達が避難民達をまとめていた。

「きゃあああ!」

「くっ島に滞在してた働き蟻の小鳥遊か!」

「行くぞメグ子!」 「うん!」

「もう大丈夫だよ!避難所はあっちだからね!」

「はいぃ……。」

「あ、来たわねオスの受け皿ゴミ箱ちゃん達。」

 働き蟻の小鳥遊は十匹いる!

「お久しぶりねメスブタ共……。」

「骨が折れるな……。」

 一匹倒すのにも苦労する強敵が十匹もいるこの状況にこの先の苦労を思い戦う前から汗を滲ませるインフェルノ。一方メグメグは自信満々といった表情を浮かべている。

「ううん!もう大丈夫だよ!今までは出せなかった私の真の姿を見せちゃうから!」

「そうか!お前も七聖獣か!」

「服お願い!」

「うおっ」ばさっ

「公然わいせつしないでくれるかしら?睾丸みたいな無駄乳晒して……」

「はぁぁ!変身!」カッ

 メグメグの体が光る!

「うおお!メグ子お前……!」

「何だ!?」 「嘘後輩ちゃん……」 「美しい……」

 メグメグは遂に真の姿を現した!水色と白、目尻のみ翠緑の毛皮を持つ巨大な狐だ!細い鼻先から頭部にかけての滑らかな曲線はイヌ科特有の美を感じる。つり目の流し目やその毛色・毛並みを含め彼女を見た者はその姿を流れる水や瑞々しい命の輝きの隠喩と捉えざるを得なかった。

「ババーン!どう?」

「超カッケー!!」

メス媚女ブタなのに狐なのね。見た目だけの虚仮威しこけおどしじゃないと良いけど!」

「はぁああ!」バシュッ

 ガ ブ ン !

 メグメグは目の前の働き蟻小鳥遊に突進し噛みつき攻撃を行う!今までとは馬力がまるで違う!その岩と龍鱗の鎧を砕き彼女は牙先から生命力を奪い去る!

「へえっ!?」どくんどくんどくんどくん……

「あ……」ド ズ ゥ ン !

「吸い取る速さが前とは全く違う……!?」

「でも下の腐った環境で衰弱してただけでしょ!すぐに吸収限界が来るわ!」ばばっ

 飛びつく二匹の働き蟻!メグメグは一度その大顎で攻撃をさせてから間髪入れず牙を突き通す!

 「ぎぃやああ……」 「あひぃぃ……」

 ズ ズ ズ ゥ ン ……

「残念だったね!この調子じゃ後五百匹は平らげちゃうよ!」

「それなら凝酸で……」

「符術装着!加熱・斧頭ニトロアックス!」ブオンッ

 ギャシィン!

 インフェルノは腹部の毒針を斧で切りつける!

「別に覚醒も何もしてないあんたに切り刻まれる私じゃないわよ!凝酸!」

 ビ ュ ガ ガ ガ ガ ッ !バ ギ バ ギ バギ ……

 メグメグを凝酸から庇ったインフェルノの斧は岩まみれになってしまう!

 「はぁああ!」キュウウウウン

「ぐっ」ド ズ ゥ ン ……

「フェルちゃん大丈夫!?」

「問題ねえよ。寧ろこれが欲しかった。」

 ぞろぞろ……

「丁度俺達を残り六匹でおあつらえ向けに囲んでくれた事だし……」

「俺の斧でたたっ斬ってやるよ!」

「オラアアアアア!!」ぐるんぐるんぐるんぐるん!

 インフェルノは全身を回す!斧頭に取り付けられた符術札によりその威力はさらに上がっていく!

「メグ子!お前は飛べ!」 「分かった!」

「いいの?狐女が居なくなったらもう私には裏切り者あなたを押し潰さない理由は」

 ガ ツ ゥ ン !

 インフェルノの回転斬が働き蟻の小鳥遊に当たる!

「がっ」

 (嘘切れてる!?)

「木で岩は切れなくとも岩なら岩を切れるだろ!」

「いやその理屈はおかしい……」

 ズ バ ア ン !

 一体の首を刎ねる!

「なってんだろがあ!!」

「ブタギツネの相方はブタゴリラってわけね!死になさい!」

「フンっ」

 メグメグを凝酸で狙っていた者達もインフェルノを脅威と判断する!インフェルノは自分一人で全員を相手取ろうとはせずリングを回るベーゴマの様にあちらこちらに移動し小鳥遊同士をぶつける!そこを上から背後に回ったメグメグが狙う!

 (意外とクレバーね!)

 「はああ!」

 ガ ブ

「ううっ」ド ズ ゥ ン

「やっ……うごご!?」

「どうしたメグ子ぉ!」

 一体を倒したメグメグだがその個体から牙を抜かない。

「凝酸を体中に無理矢理逆流させたのよ!一人死んでも問題ない!これが数の力ぁ!」バッ

 残り四体の小鳥遊は寄って集ってメグメグを攻撃する!力任せに足を振るうものもいれば大顎で肉を抉り取る者もいる!

「死ねっ!このあばずれがァ〜ッ!」 「媚びた体して……恥ずかしいと思わないの!?」

 ボ ゴ ッ ボ ゴ ッ ブ チ ブ チ

「〜っ!〜っ!」

「オラ俺に構えやああ!」

 一匹の首を落とすインフェルノだがまるで見向きもされない!

「ブタはミンチにして加工しないとね!下の飢えてるオスども乞食どもに食べさせてやるわ!オス負け犬だいちゅきなあなたには本望でしょ〜?」

「くそっ このっ」

「かきく血継呪術・はひ呪いも力も溜めて待てフルチャージ。らり累積居合斬。」

 サムソーがやって来た!

「鉄で!?いけるかサムソー!?」

「ばびぶべ僕一人では無理だ。だが」

 ズ バ ン ッ !

「弱体呪術・『大蚊の法ががんぼのほう』!」

「あいつがいれば話は別だ。」

 ギャンブの放った弱体呪術により急激に硬度の落ちた働き蟻小鳥遊の首はサムソーに落とされる!

「一旦口切るぞメグ子ぉ!」ズバンッ

 インフェルノは岩にされたメグメグの鼻口部を叩き切る!

「もがが……」

 ニュグニュグニュグ

「ありがとうフェルちゃん!」ガブ

「うっ」

 巨獣のメグメグは再生力も段違いだ!すぐに欠損部位を治すと働き蟻の首元に右から噛みつきをかます!

「いくぜサムソー!ダブル斬り!」 「はいはい。」

「なっ」

 インフェルノとサムソーは左右から働き蟻の首元に刃をぶつける!

 キュウウウウン!  ズバアン!

 ド シ ャ ア ア ア ……

 十匹の蟻は全滅した。

「二人共助けてくれてありがとう!」

「ンマ〜良いって事よぉ!避難の方も完了したぜ!」

「さ島にいるのは片付いたな。」

「んあ?もっと居なかったか?」

「あ今僕達と交戦した奴以外はもう海に行った。」

「海〜?」

「まみむめもうこの島にはあいつは興味ないみたいだ。浜辺へ行くぞ。」

「おう!」 「ラーヴァ君達の方に行くのが本隊なのかな?」 「師匠今のオレの術どうでした?」 「た中の下。」 「ンマ〜そこは中の上って言ってくださいよ嘘でも〜!」

 浜辺へ着いた一行。

「おいおいまじかよ……。」

 海は働き蟻の小鳥遊に埋め尽くされていた。彼女達は数十匹の個体で円を作り表面張力を上手く使いプカプカと浮いているようだ。彼女達の向かう先は勿論本体だ。

「あの巨体で浮けんのかよ……!」

「何だかあの子達お腹が大きくない?」

「恐らく栄養分を溜め込んでんなありゃ……。本体の再生に使う為だ!」

「ンマ〜ホント便利だな働き蟻!」

「俺達もずっとここにいるってわけにはいかねえな。」

「あいつら乗ってくのは嫌だぜオレ〜……。」

「ざじゃあお前だけここに残れ。」

「ちょっと良いかな皆!」

「「「?」」」

 メグメグは提案する。

「この島にこう……大きな木とか!いや若い芽の状態でもいいからなかったかな?」

「それがありゃいけんのか?」

「うん!約束するよ!」

 ――小鳥遊の上――

 小鳥遊の癇癪からの大爆音により耳から出血する二人。しかし毛の森林が防音林となり辛うじて致命傷は免れた。

「はぁ はぁ 死ぬかと思いました……。でも後一発かそこらで心臓です!行きましょう先輩!」

「ああ!」

 ゴ リ …… ゴ リ ゴ リ ……

 腹柄節の山脈から大きな音がする。

 ゴ ロ ゴ ロ ゴ ロ …… ガ ガ ガ ……ギ チ チ チ……

「落石!?」

「だけじゃない……。」

 ウ イ ー ン ……

「岩の砲丸もだ!」

 バ ギ ュ ン !

 ラーヴァ達はいち早く空を飛ぶ!発射された岩の砲丸は小鳥遊のくびれに当たる!

 (目で見て撃ってるわけじゃない……適当か!)

 パ キ ュ ッ

 砲丸は跳ね返ってくる!

 チリ

「あっ」

 ボ ギ ュ ン !

 それはほんの少し触れただけでフリジットの左足を吹き飛ばした!

「うぐああっ!」

「先輩!」

「構わなくていい!とにかく狙うんだ!」

「はいっ!」

「あ……。」

 落石の狙いは攻撃ではなかった!ラーヴァ達が作った凹みは転がってきた落石によって埋められてしまっている!

「そんな……。」

「これじゃ賽の河原か……!」

「狙うとしたら……岩の補充が出来ない頭側しか無いですね……!」

 二人は横にそれその場から脱そうとする。まだ二人がくびれのところにいると信じて疑わない女王蟻小鳥遊は岩の砲丸を自分の体へ撃っている。永遠に続くかと思われたくびれの大地もようやく終わりを迎えはるか下に海が見えてきた。

「一旦潜水艦に戻りますか?」

「そうだな。聞こえてたと言っていたしあの辺りに居たままだといつ潰されるか分かったものじゃない……!皆に知らせなくちゃな!」

「……いたわ。私!オス人生八週間が横から逃げ出してるわ!」

「「!?」」

しかし先程の揺れ等で落ちかけていた働き蟻小鳥遊に見つかってしまった!

「うおお!符術解放!冷却・放射クーリングショット!」ヒョガアアア……

「あぎゃ!目が!」

 働き蟻の視界を封じるも既に女王小鳥遊にその情報は伝わっている!彼女は声に苛立ちを滲ませながらもあくまで強者としての威厳・冷静さを保ち腹柄節の発音器官から声を出す。

「横から逃亡……ふ〜ん……。岩での狙撃は反射を使えないと避けられそうだし……。はあ……」

「ちょっと本気で殺そうかしらね。」

「「……!」」

 それは落下によるものではない。二人は自身の冷や汗が頰を駆け上がっていくのを感じた。

「んああああああ!!」メキメキメキメキ

「何だ!?」 「嘘だろ……!?」

 女王蟻小鳥遊は岩の羽を生やす!

「奥義・『血痕飛行』!!」

 ゾゾ……ド ザ ザ ザ ザ ザ !

 小鳥遊が海から這い上がる!

「駄目だろ……島が飛んじゃ……駄目だろ……!」

「海の中!それしかない!急降下だラーヴァ君!」

「はい!」

 ブ ブ ブ ブ ブ ……

 女王蟻小鳥遊が羽を使って辺りを飛び始める!落ちていく働き蟻など気にもしない!一度羽ばたくだけで大気をかき乱す風が生まれる!当たれば勿論死しかない!

「海……!遠すぎる!」

「符術装着!『冷却・全身アイススーツ』!」

 フリジットは氷の服を二人分作り上げる!

「先輩俺は空気抵抗位じゃ焼けませんよ?何故俺の分まで……。」

「青空に溶け込んで目立ちにくくするのが狙いだ!」

「成程!」

 海が近づいてきた!しかし既に海にはイカダ状に纏まっている働き蟻小鳥遊が無数に浮かんでいた!

「いたわ!いたわ!」

「うわああああ!海が蟻まみれになってる!」

「符術生成!『凍結・魚雷スイミングコメット』!!」パ キ パ キ パ キ パ キ !

 フリジットは細長い氷の魚雷を作り上げた!

「これで撃ち抜く!」 「はい!」

 ズ ド ォ ォ ォ ン !

 氷の魚雷は圧倒的な落下速度と圧力を一点に集めるのに有効な丸細りの弾頭で働き蟻小鳥遊の一体を撃ち抜いた!氷の魚雷と下にいた働き蟻小鳥遊に落下の衝撃を吸わせ、二人はなんとか生きて海中に落ちる。

 ド ッ ボ オ オ オ ン ……

 (体がバラバラになりそうな痛みだ……!)

 フリジットは氷の魚雷の前の方を掴む。ラーヴァもそれに倣い反対側の同じ部分を掴む!すると氷の魚雷はまっすぐと進んでいく!

 (空気や水の対流は温かい方から冷たい方への移動!この低温の魚雷に温かい海水は少しでも近づこうとする!この氷の魚雷は後ろ側に行けば行くほど表面積が大きくなっているから前から来る海流より後ろから来た海流の力を受けやすいんだ!そして前側に陣取れば後ろからの海流は来ないし前から来た海流にもストッパーがかかるから流されにくい!)

(自動で進んでるけど……ここで水蒸気爆発を利用すればもっと推進力が得られるはず!)

 (煌牙竜殺爆炎掌!遠隔!)

 ボ ボ ー ン ! ズ ア ア ア ア !

 (よし!)(ナイスだラーヴァ君!)(ぇへへ……)

 ド ボ ボ ボ ボ ン !

「こ の 辺 り だ っ た わ よ ね 〜 !!」

 ((!?))

 背後の視界は完全に女王蟻小鳥遊の大顎で埋まっていた!そして彼女が着水した衝撃で水の高波が攻め込んでくる!

(くそっ どうすれば……!……ハッ!)

 二人の前方に見えたのは潜水艦だ!

 ((有った!))

 二人は急いでそこへ向かう!

  ド ッ パ ア ン !  サ ッ

「み い つ け た」

「ひっ ごぼぼっ」 「ん〜!」

 わざとイカダを崩し落ちてくる働き蟻小鳥遊が現れた!ラーヴァは恐怖のあまりつい息を飲もうとし海水の侵入を許してしまう!フリジットもまた驚きながらも冷静に魚雷を押し方向転換しその後すぐに軌道を戻そうとする!

 ゴ ツ ン !

((!!))

 氷の魚雷は勢い余って潜水艦にぶつかるも流石は地底人の超技術!びくともしない!二人は一か八かで浮上し潜水艦のコックを目指す!

「プハッ」 「ぶぇっ はぁ はぁ あっ!コックが地上にある!」

 バシャバシャ……

「頼む!開けてくれ!」ゴンゴン

 コックは外側から開けられない仕組みになっている。残念ながら開かなかった。しかし先程の衝突のおかげか、高波が来るのを察したのか潜水艦は動こうとしている!

「開けよおお!」「捕まるぞラーヴァ君!」

 ブ オ オ オ オ オ !

 潜水艦は高速で移動していく!

「うおおっ」「くううっ」

 潜水艦は高波と働き蟻小鳥遊のイカダから遠ざかったところで停止する。

 カチャ

「「!!」」

「はいってきな!」

「胸男〜!」「助かったぞ!」

 二人は何とか生存して潜水艦の中に入ることが出来た。

「うわ……酷いねフリジットさんの足……。」

「まあな!でも生きてたから万事オーライだ!それに足首に付けていた符術札も置きっぱだから何かの役に立つかもしれないしな!」

「凄いポジティブ!」

「さてと……それでどう仕掛けるんだい?あの怪物に。」

「それなんだが……後ろからの攻撃……というより腹柄節付近での攻撃は厳しいだと言う事が分かったぞ!だから頭の方から仕掛けたいんだが……。」

「今の島小鳥遊って水に浮かんでる状態ですよね?」

「そうだね。六本の足を平らに広げてプカプカ浮いてる。でも羽は健在だからあれでやろうと思えば推進力得られると思うよ。」「恐ろしいな……情報ありがとう!」

「どうも蟻の耳は足に付いてるっぽい事を考えると……平らに広げてるってのは……。」

「そうだね。水面下そして水中の音に耳を澄ましてる。今は着水時の高波やら働き蟻達の混乱やらで騒がしいからいいけど、さっきのがバレてた事を考えるともう少しして静かになったらこっちの音を聞き分けてくるかも。」

「……もう突っ込むしか無いんじゃないですか?丁度頭も水に付けてるわけですし……辺りがうるさい今なら奇襲が上手くいくかも。待っていても状況は良くならないわけですし。さっきの高速移動で口から侵入して喉元飛ばしてやりましょう!」

「その場合どうやってあの大顎を防ぐかが鍵になるね。あれに挟まれたら潜水艦といえどもたないよ!」

「う〜ん……。そうだ!魚雷を先に噛ませたところで後から氷炎大爆発で吹っ飛ばしちゃえば良いんですよ!ね!先輩!」

「確かにそれならいけるかもな!……ただ相手が勝負に応じてくれなかったらどうするんだ?魚雷の装填には時間がかかるぞ。」

「あの耐久だと魚雷をわざとスルーして普通に俺達だけを狙って噛みついてくる可能性も有るんじゃないか?」

「くう……」

 ガ ガ ガ ガ …… グ ラ グ ラ グ ラ グ ラ !

 潜水艦は突如として揺れ出す!

「うおっ」 「何だ!?」 「まさか居場所がもうバレた!?」

 「船長!海流です!極めて強い海流が発生しています!ソナーの反応を見るに辺りの働き蟻達もまとめて巻き込まれてます!恐らく敵がやってることは……。」

「回転です!あの細長い足で海の水を掻き回してるんですっ!ガラス棒をビーカーに突っ込む位の感覚で!」

 ゴ ツ ン ゴ ツ ン ゴ ツ ン !

 潜水艦に周りの働き蟻小鳥遊達がぶつかる!

「うおおっ」「あの女郎俺達を見失ったからって……!」

「これが狙いかな!?」

「いや……恐らく渦の中心に誘導するのが目的だ!渦で身動きの取れない状態にして他の働き蟻に叩かせるもよし体をまた着水させて島の質量で押しつぶすもよし!何にせよこのままだと不味いぞ!」

「まずは下に潜って表面付近の働き蟻とぶつかるのを防ぐんだ!その後先程の『ハイパースクリュー』で何とかこの流れを脱するよ!」

「はい!」

「行けるか……!?」

 グ グ グ ……

「よし動きが変わってきてる!」「いけますねこれは!」

「いえまだです!回転でイカダが崩れた事で働き蟻達が落ちてきてます!」

 ド ズ ズ ……

「上に!?定員オーバーだよもう!」

 ビ ュ イ イ イ ! バ キ バ キ バ キ ……

「あれ?急にスピードが……。」

「凝酸だ!スクリューに凝酸がかけられたぁ!」

「「「!!」」」

 ズ ア ア ア ア !

「駄目だ!流される〜!」 「くっ ラーヴァ君のアイディアが正しかった!すまない!」「いえ!もう会議をしてた時には手遅れでしたよ!どうにかして逆転の一手を考えなくては……。」

 ラーヴァ達は渦の海流に流され抵抗虚しく渦の中心へ引き込まれていった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る