第14話:地球人の目的
「お疲れ様っす!ここから西に少し歩いていくとラクダすよ!」
「ありがとうございました!」「ありがとね!」「……。」
「お前も何か言えよ。」
「コイツラは列車動かすのが仕事なんだからわざわざ言う事ねえだろ。」
「うわそういう事言っちゃうのか。」
「まあハンダー君の分も私達が感謝しとくね!」
「にへ……行ってらっしゃいっす!」
(アイツニヤついてるぜ気色
(まあ幼老狐の本性知らないからなこの人は……。)
三人は外に出る。すると外はまだ春だというのに酷暑であった。
「あっつぅ〜……。あ〜嫌んなっちゃうぜホント。」
「言うほど暑くねえだろ。」
「お前はな!」 「ラーヴァ君はね!」
「えっ 幼老狐まで!?」
「砂が温められてて足が駄目になっちゃいそうだよ私達は!」
「へ〜……皆意外と暑さに弱いんだな……。」
「は〜
「うるせえなお前さっきから。市長の前でお前が先輩の命狙ってた事言ってやっても良かったんだぞ?」
「言えよじゃあ。市長は俺が正しいって言うだろうぜ?」
「はぁ!?てめ殺「二人共!あれ町じゃない?砂漠に木々が生い茂ってるところがあるよ!」
「まじか!……チッ……。足が焼けそうなんだろ?ラストスパートは俺が飛んでいってやるからお前ら掴まれ!」
ボヒューン!
ラーヴァ達は最後は飛んで町まで行った。どうやら幼老狐が見ていた物は蜃気楼ではなかったらしい。現地まで行ってみると通気性の良い服に身を包んだ砂漠の商人達が大勢いた。
「着いた〜!」
「酒だ酒だ〜!」
「今回は上々でしたね〜!」
ガヤガヤ……
「今気付いたけど幼老狐お前そんな厚着してるから暑かったんじゃないか?」
「あ、分かる?」
「分かるだろそりゃ。というかお前変態なのに何でちゃんと着込んでるんだよ。」
「ええ?それはねえ……最初から裸より見せないほうが想像力が掻き立てられてよりえっちポイントが上がるからだよ!後相手に脱がさせるって言うのも興奮のボルテージを引き上げる上で大事だからかな!そして何より普段サラシで潰しておいていざするぞって時に〜……」
「アイツ酒場に行くみたいだぜ?着いてくぞ。」
「分かってるよ言われなくても!」
「ちょっと!質問したラーヴァ君位はちゃんと聞いてよ〜!」
幼老狐を置き去りにして二人は酒場へ入る。酒場では昼間でありながら既に一仕事終えた商人達が酒盛りをしていた。
「あの……ちょっとよろしいでしょうか?」
「何だ?坊や。」
「黒髪で褐色の……」
「え?分かんないよそんなん!そうだホラちょっと飲んでみろよこれタダでいいからさ!」
「え!?あ、いや未成年なので……」
「はあ〜ん?俺の酒ゃ飲めねってのかああ〜ん?ッゲェェェェップ……あ゙あ゙〜……」
「……。」
「やめろよ困ってんじゃん!まあハッキリ言うと黒髪で褐色のヤツなんてこのあたりにゃごまんといるから教えてやれねえよ。」
「そ……そうですか……ありがとうございました。」
ラーヴァは酒に酔った男達にすっかりたじろいてしまっている。
「フン雑魚が。ちょっと見てろ!おいオマエラ!」
「あん?」
「俺たちゃ国際指名手配犯のフリジットを探してる!よければ情報をくれ!」
「!?」
(国際指名手配犯……?何を言っているコイツは!?)
「お前惨めに負けたからって先輩の事……」
「ああ!フリジットか!それっぽいヤツ見たかもしれねえ!」
「!?」
(先輩……指名手配されてるのか!?本当に!?)
「おお!よしじゃあ教えてくれや!」
「は?タダなわけないだろ。情報は立派な商材だぜ〜?」
「チッ……卑しい商人が。俺は天下の
「……てめえ今なんつった?」
「……?アッ ワリイ卑しいと言った事は詫びるぜ。」
「そこもそうだがそこよりも!てめえ
「そうだ!凄いだろう!?」
「この無能金食い役人が!フリジットの前にてめえを殺してやる!」
「何ィ!?」
ハンダーは商人の男と取っ組み合いになる。
「砂漠の怪物の件はどうなった!?ええ!?お前らやるやる言って結局二年間野放しじゃねえか!その間に俺達の仲間が何人消えたと思ってる!?」
「しょうがねえだろそれは俺達の一番の仕事は地球人との間を取り持ってこの惑星を地球人から守る事なんだから!怪物退治は二の次だ!」
「仲を取り持つ〜?てめえら地球人のご機嫌とってるだけじゃねえか!てめえらの活動で安全になってるのはてめえらだけだろ!しかも市民の金を徴収してよ!」
「んだとてめえ!おいラーヴァ!お前からもなんか言え!」
がしっ
「痛っ!?」
ラーヴァはハンダーの髪の毛を掴む。
「俺達の島を……西方諸島を何年も放置してたくせに地球人から守っているだと?どの口が言った今!?」
「フレンドリーファイア!?」
「はいはいそこまで!皆やめて〜!」
「「「ああ!?」」」
「私が今からポールダンスします!見てってね〜♡じゃ、おじさま伴奏よろしく♡」 「あいよぉ。」
幼老狐が遅れて到着した。お立ち台の上で幼老狐が何やらセクシーな踊りをし始める。
「おいそんなんで……」
「「「うお〜!いいぞ〜!」」」
「え……。」
喧嘩に参加していない人々はすぐに幼老狐の踊りに熱中しだした。
「まだまだいくよ〜!」ぐるんぐるんぐるんぐるん
「エロいだけじゃねえ!あの女動きもキレてるぜ!」
「狸人間か?やけに耳が尖ってるが。」
「まあエロいからヨシ!」
「その服じゃ踊りづらいでしょ〜?もう少し薄着になって〜!」
「しょうがないなあ♡まずは一枚!」ばさっ
「「「Fooooo!!」」」
「……アホらし。お前みたいなカスよりエロい女見るわ。」ぽいっ
「んなっ 誰がカスじゃボケ……!」
「もう黙っとけ。」
「皆盛り上がってる〜?」
「「「はいー!」」」
「きた!ジャレグラだぁ〜!!」
「今度は尻尾を使って!?エグいってええええ!!」
ワアァァァァ……
「すげえ……アイツあんな事できんのか。」
「アレで金稼げそうだな。」
(金金ってホント腐ってんなこいつ……。)
幼老狐のポールダンスは成功を収めた。
「感動しました……。」ずびっ ずびっ
「最高のパフォーマンスだったぞー!」
「喰らえおひねりアターック!」
「皆ありがと〜!」
「……暫くアイツ外でなさそうだな……。」
「俺達警戒されてるだろうし先外行くかハンダー。」
そうして二人が外で待っていると幼老狐が帰ってきた。
「お待たせ〜!情報もお金もいっぱいもらったよ!」
「よくやった!」 「えへへ♡」
「オマエが最初から来てれば俺の毛根は犠牲にならなかったんだけどな。」
「それは二人が私の事置いてくからじゃん!」
「悪かった。それで情報ってのは?」
「三つあるよ!まずはフリジットさんについて!どうもフリジットさんも男の人を一人連れてこの町で情報収集を行ってるみたい!今私の名前をあの店に轟かせてきたからあそこにフリジットさんが来たら私達がいるって分かるようになったね!」
「男の人……?誰だ?俺達がいながら……。」
「用心棒とかかもな。アイツ両手欠損してるし。」
「両手がなくてもお前くらいの木っ端なら倒せるし、用心棒はいらないと思うんだが……。」
「テメエいちいち人の神経逆なでするなオイ!」
「さっき雑魚呼ばわりしたお返しだ馬糞ウニ頭。あ、俺が引っこ抜いたから元か。」
「ラーヴァアアアア!!」
「ま……まあ!それは良くて!次に砂漠の怪物について!どうもこの大砂漠には金銀財宝を運んでいる商人を襲ってる怪物がいるみたい!ずっと前から活動自体はしてたけどここ最近は大砂漠を歩いて移動する人が減って鬱憤が溜まってるのか襲われる確率が増えてるみたい。人殺しも厭わないとんでもない悪党なんだけど、生還できた人でも多くが歩行障害を発症してしまうらしいよ!」
「クソみたいな奴だな……一万年生きてるお前としては心当たりあるか?」
「……ぶっちゃけあるね。でも信じたくないって気持ちかな。」
「怖えよなあソレ。俺もその任務避けるのに必死だったぜ。やる気ある奴らが行って半壊したからな。」
「お前まじでよ……。それで最後は?」
「ここにいる地球人、ササキさんについて!何でも砂漠にゴミを撒いてるらしいよ!」
「やはり地球人滅ぶべし……もう分かったそれだけで良い行くぞ殺しに!」
ラーヴァは幼老狐の発言を耳に入れた瞬間怒りを露わにする。
「ちょっと待ってってば!でもそのゴミの上に木を植えて育ててもいるんだって!」
「木を……?そういえば木々が生い茂ってたな……。いや待てよ?オアシスの水を木で吸って枯らすのが目的なんじゃないか?」
「水はよそから持ってきてるらしいよ!ゴミを入れた事で砂漠の保水性が上がって、ここにいる人達にとっても結構助かってるみたい!」
「ふ〜ん……でも自然に優しくても人殺してたら駄目だよな。」
「それ何だけど、少なくとも目に見える所では殺しはしてないみたいだよ。今はここからオアシスを挟んだ先にあるあの大きい建物に常駐してるって!」
「建物の下で何かやってる可能性あるなこれ。行くぞ!」
「ヒュ~ ヒュヒュ~ 俺知らない〜……」
「おい逃げるな。戦闘になったらお前も戦うんだぞ。」
「うあ〜嫌だあああ!!」
だっ!
「あっ逃げるな卑怯者!」
「頼むよハンダー君!よければ私がぱふぱふでも……」
「キャーーーー!!」
「「「!?」」」
女の叫び声がした。
「何今の声!?」
「クソ!やっぱりササキは黒だな!行くぞ!」
「嫌だああ!」
ズリズリズリズリ……ぽいっ
「じゃあ良い!お前はそこで惨めったらしくうずくまっていろ!」
暫くハンダーを引きずっていたラーヴァだがこんな男に構う暇はないとその手を離し現場へ駆け込む。人通りの多い方へ行ってみると、石造りの建物は粉砕され瓦礫に足を挟まれた人もおり辺りは騒然としていた。叫び声をあげた女商人はひどく怯えた様子ではあるが無事だった。
「大丈夫か!?」
「う、ウチは大丈夫です……。でも仲間がぁ……。」
辺りには血を流して倒れる商人たちがいる。その多くは手や腕に傷がある。
「金銀財宝を狙って……?」
「ウアアアアア!」
奥から男性の悲鳴が聞こえる。ラーヴァは飛び、上から見下ろしてみる。
ズバッ プシャッ
「!」
犯人は素早く男性の腕に切込みを入れ抵抗力を奪うと手に持っていた財宝を奪い走り去った。ラーヴァは男性の下へ着地する。
「オレはいい!アレを追ってくれ!」
「はい!分かりました!」
ラーヴァは再び浮上し犯人を追う。犯人はラーヴァですら追いつけきれないスピードで走っている。
「速いな……!だがもう逃げられないぞ!」
目の前にはオアシスが広がっている。このままいけば犯人は渡りきれず着水してしまうだろう。そうすればラーヴァは追いつきあの手この手で犯人を攻撃することが出来る。
ばっ ヒュオオオオ……
「何!?」
しかし犯人は高く跳ぶと滑空し、オアシスを渡りきってしまった。その姿は異形と形容でき明らかに普通の人間ではない。犯人はそのまま大きな建物に駆け込んで行った。
「あの建物……やはりササキか!」
ギュイーン!
ラーヴァも急いでササキ邸に乗り込んでいった。一方事件現場では瓦礫の撤去作業を行う男達がいた。
「マシンパワーだ!んオラァ!」
ぐぐぐ……
「助かったぜ旦那ぁ!」
「お前フリジットじゃねえか!指名手配犯なのにいい奴なんだな!」
「指名手配犯でもやりたい事と関係ないところではいい人間でいたいもんだぞ!」
「そういうもんか!まあでもクソの
「皆さん一気に引っ張りますよ。せーのっ」
「「「ふん!」」」
すぽっ
「うう死ぬかと思ったぜ……。」
「お前すげえな!片腕しかねえのに!」
「片腕しかないからこそ鍛えているという事にしておいてください。」
(実際には体内ナノマシンを使っているのですがね。)
そこにいたのはフリジットと元改造人間一号だ。
「イテテ……。」
「私の手を握って!」
「へ!?は、ハイ!」
(すげえ可愛いなんだこの子!?)
ポァァァ……
男の傷は回復していく。
「えっ 君聖術師!?」
「そういう事にしておくね!怪我してる人は私の所へ来てくださ〜い!治療しますよ〜!」
「あなたもよければ怪我をしてる人を運んできてくれるかな?」
「は、ハイ!」
(可愛い上に優しいし、治療もしてくれるなんて……天使だ〜!よし、頑張るぞ〜!)
「すみませんオレも頼みます!」
「はい!」
「コッチも!」
「オッケーで〜す!どんどん来ちゃって〜!」
遅れて現場についた幼老狐も治療を行っていた。フリジット達もそれに気づく。
「おお!幼老狐さんじゃないか!」
「フリジットさんも無事だったんだね!」
「ああ!ところでラーヴァ君は……?」
「さっきまで一緒に居たんだけどね……そういえば……あっ フリジットさんササキさんがいる家に向かって!」
「え?」
「ラーヴァ君多分ササキさんが犯人だと思ってるから!」
「! 成程分かったぞ!行ってくる!『ビムトーバス』君!ここは任せた!」
「はい。お任せを。」
「……君は一体?」
「僕は元改造人間一号です。以後お見知りおきを。」
「あいわかったよ!」
――ササキ邸――
庭の庭園ではササキが植物に水をやっていた。
「あれだけのことをしておいて随分余裕だな。ササキ。」
「……?き、君は誰だい?申し訳無いけど僕は君を知らないよ。」
「俺の名前はラーヴァ・ジェノサイド。今からお前を殺す男の名前だ。」
「こ……殺す!?冗談でもやめなよそういう事を言うのは!まずあれだけのことが何なのか説明してよ!」
「しらばっくれやがって!砂漠のオアシスに植物を植えて商人たちを招き、そいつらから金銀財宝を奪うのがお前の目的だろ!?最近活動が盛んになったというのもそれなら頷ける!列車が登場してここラクダに来る人間が減ってきたから積極的に狩りをするようになったと考えればな!たった今も商人達を襲ったわけだしな!」
「金銀財宝……?そんなものの為に……?言いがかりは良してよ!商人達を襲う……?そんな事もしてないし!」
「なら建物に入らせてもらう!そこに金銀財宝を隠してないなら見せられるはずだ!」
「ええっ それはやだよ!金銀財宝は無いけどプライベートな物は沢山あるもん!」
「そうか……なら!」
(プライベートな物……死体か何かか?)
「ここで倒す!」
ボヒューン!
ラーヴァは勢いよく突っ込んでくる!
「分かったよ……そんなに僕の事殺したいなら来なよ!返り討ちにするからさ!」キュオオ…… ジャキッ
「!」
突如ササキは左手の先端から光を放ったかと思うと弓矢を出現させた。これが彼の能力なのだろう。
「くらえっ!」
バシュビュアアッ!
「ッ!」
音速を優に超える速さでササキは矢を射出する!ラーヴァは全くそれを視認できなかった!
「くらえっ!」
運良く初撃が当たらなかったラーヴァはササキの首に斬撃を繰り出す!
ズバッ ぎちっ ギギギ……
「いっ いったああああああああ!!痛い痛い痛い痛いいい!」
ほんの少し皮と肉を切ったが人間態とはいえ相手は竜。ラーヴァの斬撃はササキに致命傷を与えるにはいたらなかった。しかし相手は攻撃される事に慣れていないのかその痛みに苦しみ悶える。
「うわああああ!何でこんな目にい!!死んでよもう!」キリリッ
「不味い来る!」
バシュ バシュ バシュ!
「はあ……はあ……死んだ?もういない……?」
「はあ……はあ……危ねえ……。」
建物の上に移動し難を凌いだラーヴァ。その風圧で当たったら最後死しかない事を理解させられた。遥か遠くの雲はササキが放った矢によって大きな穴が空いた。
(あれ?でも翼の異形じゃなかったな……。)
「おい、ササキ!」
「うわああ死んで死んで死んで死んで!」
バシュ バシュ バシュ!
「うおお!お前ってその弓以外に体を変形させて翼を生やす能力とかないか!?」
「ないよそんなもの!つ、次で殺すよ!」
「クソ、お前地球人なのに本当に今まで人襲ってなかったのか!?」
(地球人にも害がないやつが存在するのか!?俺のところのジャニエルのクソ野郎が例外だったのか!?)
「だからそう言ってたじゃん!今から君を殺すけど!」
「……今回ばかりは俺の早とちりだった!すまん!」
「うわああくらええええ!!」
「えっ!?」
「『サウザントアロー』!!」
「ちょっと待ってくれササキさん!」
ササキは戦いに慣れていないのか傷を入れられて酷く興奮し狂乱状態になってしまっている!ようやくフリジットが来たがもうササキは矢を放つ瞬間だ!
「先輩!?」
「符術解放!『
フリジットは三枚の符術札を重ねてラーヴァとササキの間に飛ばす!するとそれは弾け、それぞれ小さな氷の破片となり空間にばら撒かれた!一方ササキが放ってしまった大きい矢もまた弾け飛び小さい千の矢に変わる!
ビシュシュシュシュシュシュシュシュ! カキンカキカキカキカキカキカキカキ!
しかしその矢の殆どは空間にばら撒かれた氷によって弾かれあらぬ方向へ飛んでいく!
(勢いがある矢や弾丸ほど横の力に弱い!氷そのもので防げなくとも弾道を変えさせることは出来るって事か!)
ビシュッ! ジーン……
「あ゙っ」
しかし一本だけ弾かれなかった矢がラーヴァの胸に当たる。ミアの作った鎧があるため貫通は免れたが衝撃の一部がラーヴァに伝わってくる。ラーヴァは失神しその場に落ちた。
「あっ ああっ」
「ササキさん!この通りだ!今回は見逃してやってくれ!」
フリジットは地面に頭をつけ謝罪する。ラーヴァが失神した事もありようやくササキも落ち着きを取り戻した。
「う……うん……。フリジットさん……だよね?この子を部屋に入れてあげて……。」
「すまないぞ!」
三人はササキの家のリビングへ行った。その後幼老狐達も到着しササキの治療をしつつラーヴァの目覚めを待った。
―― ―― ――
「うっ……く……。」
「おっ 起きたよ!」
「おお!」
ラーヴァが目を覚ますと幼老狐の乳房が視界を半分塞いでいた。残り半分もフリジットが顔を出して塞いだ為に天井が見えない。
「ここは……?」
「ササキさんちのリビングだぞ!」
「んえっ!?」びくっ
ラーヴァは幼老狐の太腿を枕にして寝ていた。飛び起きるとそこには治療が施されたササキが恨めしそうな顔で見ている。意外にも感情が表情に出てしまうタイプの様だ。とはいえ交戦する意思は無いようで、そのまま動かず反対側のソファに座っている。
「え〜と……まずはすみませんでした。」
「……いいよ。君が僕達地球人に恨みがあるというのも聞かされたしね。お互い死ななかったし、今回の件は不問にしておくよ。」
「はい……。」
「地球人にもいい人もいれば悪い人もいるって事だ!」
「そう……なんですかね。まあ……そうですよね……。」
「取り敢えず何でもいいけど人に相談して!後私の事置いてけぼりにしないで!」
「二度も悪いな幼老狐。」
「反省してる?」
「してるよ。ごめん。」
幼老狐は暫く怪訝な顔をしていたが今度は真剣な表情になってラーヴァに顔を近づけた。
「反省してるならこれからメグメグって呼んで!」
「え……?それは関係なくないか……?」
「他人行儀な感じが幼老狐さんの自分を頼っていないという不安感を煽っているのかもしれませんね。」
よく知らない黒髪隻腕の男も話しかけてきた。
「ええ……?そういうものですか……?」
(誰……?)
「そういうもの!仲間なんだから名前で呼んでよね!フリジットさんもね!」
「分かったぞ!よろしくメグメグさん!」
「……じゃあ俺もよろしく、メグメグ。」
「それでよろしい!」
「えっと……じゃあこの話終わりにしてもいい?」
「うん?いいよ。」
「じゃあ遠慮なく……先輩!会いたかったです!!」
ラーヴァはメグメグの隣からフリジットの方へ移動する。
「俺……先輩が死んでたらどうしようって思っちゃって……いや有り得ないこと何ですけど……一回思うともう胸の苦しいのが止まんなくて……こんな最悪な形の再会ですみません!先輩大好きです!!」
「そうか!あの時はおれだけ逃げてしまって……本当にすまなかった!俺も二人に会いたかったぞ!!」
がしっ がしっ ギュー……
二人は再会のハグをする。
「な……仲いいですね……。」
「二人だけずるい!私も再会のハグする!」
メグメグもフリジットの左側を陣取りラーヴァの方を向くフリジットを後ろから抱きしめる。
「……当分あんな感じかな……あっ 君もお茶飲む?」
「お茶?飲み物ですか?お願いします。」
二人が二杯飲み終わる頃にようやく三人は話を聞く態勢を整えた。
「え〜とこれから四人には僕達地球人の目的が何なのか、それからあの機械軍団の主について話すね。まあ目的についてはフリジットさんあたりは知ってると思うけど……。」
ごくり……
(やっぱり植民地化計画か?それとも俺達を滅ぼしに来た敵対勢力か……!?)
ラーヴァは考えられるだけの陰謀を想像する。……しかし、彼の
「ハッキリ言うね。僕達地球人は趣味でこの惑星に来てる。」
「……え?」
「故郷が硫酸の海になってるわけでも何でもなくて……君達の惑星を植民地支配する任務が有るわけでもなくて……単純に、この惑星の土地を金で買って、遊びでこの惑星を自由に
「……は」
「僕達には使命も大義も有りはしない。かくいう僕もこの土地を買った理由が色んな植物を育てるってもので偶々人に迷惑をかけない内容だったから君達の脅威になっていないだけで、そこは他の皆と変わりないよ。」
ササキから告げられた衝撃の事実。一瞬ラーヴァは思考が停止した。
(……思えばそうだよな。植民地化するにしてもわざわざ大人を殆ど殺して生産性を下げてまでやらなきゃならない事なんて無い。目的が一つなら中央大陸では俺達の島みたいな事が起きてないのもおかしいし。でも……ああそうだ信じてしまっていたんだ。俺の仲間達が、ミアさんやビークさんが、俺の先生が!偉大なる計画の下殺されたって……相手も必死になってやっているんだって……。)
(俺は……こいつらの最後の良心を……信じてしまっていたんだ。)
「はは……ははははははははっ!!」
「「「!?」」」
「ふふふふふ かっはははははははははははははは!!……ふあ〜あ……ふぅ」
「地球人……俺はお前らを絶対許さないぞ。地の果てまで追いかけて、全員必ず一族郎党惑星丸ごと一人残らず……皆殺しにしてやる……!!!」
鬼の形相を浮かべるラーヴァ。頭に血が上るが実際声に出してみるとスッと冷静になる。目的達成の為怒りの中頭が研ぎ澄まされたのだ。
「えっ!?」
「ラーヴァ君!」
「……わかってます。わかってますよ先輩。俺もササキさんをこの場で殺そうとすることはしませんよ。」
「ただ……ちょっと流石に我慢ならなかったので。気合い入れ直しただけです。それじゃああの機械野郎の話お願いしますね。」
「う……うん。あの人の本名は『
「グロテスクな……。奴の精神性にピッタリの能力だな。」
「神経回路を……もしかしたらおれ達符術師なら対抗できるかもしれないな!」
「学術都市へ行って伝えたほうがよろしいでしょうか?」
「そうだな!頼むぞ!」
「では行ってまいります。」
「芸術都市ヘンプで合流しようね!ビムトーバス君!」
「はい。それでは。」
元改造人間一号・ビムトーバスはササキに一礼すると外へ出ていった。ササキは話を再開する。
「能力差別はしちゃ駄目何だけどね……。長らく研究を細々としていたんだけど、最近になって遂に廉価版が作られる様になったみたいで、辺りの村や町の人を攫っていたみたいだね。」
「あの工場で改造人間にするために……?」
「三号は廉価版の試作品みたいな感じか、アレ。」
「あの人が地球に反旗を翻すつもりなのかはたまた特許をとってあの技術を売るつもりなのかは知らないけど、まあ君達にとって敵なのは変わりないよね……。」
「以上が僕の話。欲しい情報は手に入った?」
「はい。」
「西園寺……おれ達の力を合わせて倒すぞ!」
「あ、あの人が悪いことしてるのは知ってるけど、僕は不干渉を決めさせてもらうよ。そういうルールだし、同じ惑星出身の人を殺すのはやっぱり嫌だからね。」
「そうですか。……こうしちゃいられない!列車に乗って芸術都市へ行くぞ!」
「皆ちょっと待って!」
「「「?」」」
「砂漠の怪物っぽい強盗犯は……?」
「あ!」
「そういえばこの建物に入って行ったな……。それで俺がササキさんを襲撃したんだった。」
「え!?じゃあ今もこの建物に……?」
「外に出て行ってない以上そうなりますね。」
「「「!」」」
四人に緊張感が走る。
「この建物の構造はどうなってます?」
「ここが一階で……地下と二階があるよ。地下は物置だからそんな大きくないけど……。」
「地下は明かりを照らせる俺が行きます。」
「いや、それは大丈夫。一階から明かりがつけられる仕組みにしてあるから。」
「便利ですね。」
「うん。暗いまま地下に行くの怖すぎてそういう仕組みにしてもらったからね……。」
「はあ。成程……。」
(地球人じゃ暗闇から襲われても殺される事ねえだろそうそう……。)
「確かに昼間でも薄暗いもんね!」
「……相手は翼を持つ異形だったんでしょ?だったら同じく空を飛べるラーヴァさんと弓が撃てる僕が二階に行くべきだと思うな。」
「確かにそうだな!一番居そうだし戦力を多めに割くべきでもあるしな!メグメグさんはどっちがいい?俺は地下がいいぞ!」
「オッケー!じゃあ私は一階の残りを調べるね!」
(翼を持つ……やっぱりあの子か!)
四人は三手に分かれ行動を始めた。
――地下――
かつんかつん……
(ここの突き当たりを右に行った先が物置……ほぼ直角になってるから何かが居ても分かりづらい……確かに怖い構造だぞ!)
フリジットは札を
「すぅ〜……」
ばっ
「動くなっ!」
……シーン……
「居ないか……。」
物置には誰もいなかった。植物用の肥料や新しく植える用の種で物置きはぎゅうぎゅうだ。
(つい保安官さんごっこしちゃったぞ!でも他の人には聞こえてないからいいか……。)
―― 一階 ――
リビングや玄関、キッチンにいたら気付くはずなので幼老狐は残り二つの部屋を見に行った。
「まずは小さい部屋からか……。」ガチャ
小さな部屋からは芳香剤の爽やかな匂いがし、きれいに保たれている。
「この紙は……おしり拭き?成程地球人はこれを便器にしてるのか〜!」
「……一応便器もチェック!やましい理由ではなく潜んでる可能性があるから!」キィ
便器の中には水が張っているだけだった。
「いくら人間態でもここは無理だよね……。」
「よしじゃあ次!」
《動くなっ!》
フリジットの声が一階まで響いてきた。
「!」
……シーン……
(何の音もしない……フリジットさんさては遊んでるな?)
「いつまで止まれば良いですか〜?」
《えっ!?聞こえてた!?恥ずかしいぞ〜!ラーヴァ君には言わないでくれ!カッコイイ先輩で通したいから!》
「はいは〜い!」
(フリジットさんも意外と幼いところがあって可愛い♡)
「さて次は……どーん!」ガラッ
今までの建物とは打って変わって木や草をテーマにした様な部屋だった。い草によるマットが床全体に広がっている。
「すんすん……中々いい匂いだね!それにこのマットも程よい柔らかさがあって……ん?なんだろ……この匂い……。部屋の隅から……?」
オ オ オ オ オ オ
「……嗅いで確かめなきゃ、だよね……。」
メグメグは部屋の隅の臭いに集中する。
「すんすん……っ!」
メグメグは目をカッ開く。
「ササキさん昨日はここでしたのかな……これは……。」
(結構性欲強いんだなあ……。)
「換気……は今はしないでおいたほうがいいか……。」
――二階――
「二階の部屋はどんなものがありますか?」
「トイレと洋室が一つあるよ。」
「今手前側に見えるのがトイレだね。」
「……最悪部屋燃やしちゃっても良いですか?」
「……トイレはいいけど次の部屋はやめてほしいかな。プライベートなグッズが沢山あるから。」
「じゃあまずは……えいっ!」ガチャッ
トイレの中は空っぽだ。
「この蓋みたいなのは?」
「それは洋式便器っていって……その蓋を外すと用が足せるんだ。」
「成程……開けますね。」キィ
勿論中には誰もいない。
「何もなしか……。」
グググ……
「へ?」
しかしラーヴァは不意に前に引っ張られるような感覚を覚えた!
「あっ」
ゴチン! ピチャ……
ラーヴァは便器の中に顔を突っ込んでしまった!
「う うげえええええぇ!!」ブクブクブクブク
「何をやってるの!?僕の大便が付いてないとは限らないよ!?」
「いや……違……」ボココ
(ササキさんが押したわけじゃないのか!?)
「ひっぱばっぺぺぺぺぺ……!(引っ張って!)」ピチチ
「え?う、うん!」
グイッ
ラーヴァは便器の水に舌を突っ込まされる苦痛を味わいながらもササキに引き抜いてもらった。
「うげ うげ えっ えっ」
「……ゲロ吐く?ここなら大丈夫だけど……。」
「いや大丈夫です!今の絶対クソ鳥の仕業です!絶対倒しましょう!」
二人はトイレから出て最後の部屋に向かう。
「何かがいたら言うからさ、先に僕が部屋に入ってもいい?」
「ああはい。もしクソ鳥がいたら言ってくださいね。」
「うん 分かっ グゥーン
どさっ
「いだっ」
「……?」
今度はササキが頭から後ろに倒れ込んだ。
「何を……?」
「何か頭が……いや!頭の後方あたりが急に重くなって……!全然立てない……!」
「くそっ やっぱり既に俺達は攻撃されています!すみません先行きますね!」グウン
「うっ!」がしっ
ラーヴァも再度後ろ髪を引かれる様な感覚を味わう!引かれる程の後ろ髪は無いにも関わらずだ!ラーヴァは壁に指をめり込ませる勢いで何とかそれに耐え前に進む。
「この……!そこにいるんだなお前!」ガチャッ
やっとの思いで開けた最後の部屋には予想通り両腕が翼になっている人間がいた!
「む、来たみたいだねえ。」
「お前が……!」
(こいつ!幼老狐の仲間か!?)
ラーヴァは仰け反りながらも鳥男に向かって殴りかかる!
「姉さんのお友達みたいだけど容赦は出来ないねえ。ちょっと寝てもらうよお!」
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