噛み合わないふたりが生み出す、心地よい騒動

 魔術と規律、柔軟さと生真面目さ。
 相容れないはずの二人が、ひょんなことから奇妙な関係を築いていきます。

 登路顕ヲは、どこか掴みどころのない魔術屋の店主です。
 一方、飯綱星四郎は、規律を重んじる堅物な魔術省の役人。
 最初から真っ向からぶつかり合う二人ですが、ふとしたきっかけで関係が変化していきます。
 会話のひとつひとつがテンポよく、まるで異なる歯車が無理やり噛み合って回り出すような心地よさがあります。

 ただの査察のはずが、妖退治に巻き込まれたり、借財の問題に頭を悩ませたり。
 真剣に向き合おうとすればするほど、なぜかおかしな方向へ転がっていきます。
 けれど、そんな中で生まれる不器用な信頼や、何気ない仕草に隠れた優しさが、ふと胸に残ります。

 魔術が繋ぐ縁は、時にやっかいで、時に心を温めてくれます。
 噛み合わないまま、それでも不思議と馴染んでいく二人の距離が、どんなふうに変わっていくのか。
 先の展開が楽しみになる、軽やかでどこか心に染みる物語です。