詩人の色彩

星咲 紗和(ほしざき さわ)

プロローグ

僕は、ずっと家にいた。

家の中で、静かに詩を書き続けていた。窓の外には季節が巡り、空の色が変わるのを眺めながら、心に浮かぶ言葉を紡いでいた。それだけで、僕の世界は十分だった。


でも、ある日、母が言った。

「一度、外に出てみない?」


その言葉は、最初は小さな石ころのように心に触れるだけだった。でも、その石は少しずつ大きくなっていき、ついには僕の胸の中に大きな穴を開けた。僕は気づいてしまったのだ。ずっと同じ部屋で、同じ空気を吸い、同じ景色を眺めているだけでは、僕の詩はどこにも届かない。


そして、僕は家を出た。グループホームという場所で、新しい暮らしを始めることになった。初めての場所、初めての人々。僕の世界は、どこか少しずつ変わり始めていく。


この場所で、僕は何を見つけるのだろう。

この暮らしの中で、僕の詩はどんな色をまとっていくのだろう。


新しい生活の扉が開く音が、心の中で響いている。

僕の知らない未来の色彩が、そこにはきっとあるのだろう。

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