おれは特殊能力が使える。
浅倉 茉白
おれは特殊能力が使える。
おれは特殊能力が使える。
それは、意中の相手がおれのことを好きになる特殊能力。
ただ、おれは告白ができない。
それは告白ができないという特殊能力ではなく、勇気がなかっただけ。
だからこれまで、そんな特殊能力があっても付き合えた人はいなかった。
じゃあなんで、特殊能力があることに気づけたかって? それは、今付き合っている相手が、向こうから告白してくれたからだ。
しかも、相手がおれを好きになったタイミングというのは、聞いてみると、やはり想像通りのタイミング。相手がおれのことを好きになっただろうなというタイミング。これで都合のいい妄想が、確信に変わった。
そう思っていた。
「他に好きな人ができたの」
相手にそう告げられたときは、まさかだった。なぜ、まさかだったか。
それは、今言うかねって思ったから。
おれはもう、病気の末期で病室にいる。だから、おれの特殊能力の応用編で(そんなのが使えるかは知らない)、もう彼女がおれ以外を好きになれるように仕向けた。でも、もうじき死ぬであろうおれに、それを言うかねって。
しかも泣いている。これはどういうことなんだ?
別に、おれには何も言わず、死に別れてから、勝手に他の人と人生を歩めばいいじゃないか。
もしかしておれは、最初から相手のことなんかコントロールできていなかったのか? だとすれば、ある意味、嬉しいことになる。自分の能力なんか関係なく、相手はおれのことを好きになってくれたってことだから。
ただそれにしたって、今おれに告げたのはなぜ?
わからないまま、おれは……。
*
私には、特殊能力がある。
それは、好きになって付き合った人が病気になってしまうという能力。
本当にそんなものがあるのかはわからない。ただ、これまでに数人を亡くしてきた。だから今回は、病気になった彼のことを諦めることにした。同時に、彼にも諦めてもらおうと。そしたら、彼は救われるんじゃないかって。
私は彼に言葉を告げたとき、泣いてしまった。そして彼は、眠りについた。死んだわけじゃない。確かに寝息を立てていた。それから彼にはもう、会っていない。
*
やっぱりおれには、特殊能力なんかなかったのか? なぜか病状が回復し、退院ができた今、彼女に会いたい。彼女にまた、おれのことを好きになってもらいたい。でも未だ会うことはできていない。そんな中ついに、探偵を雇うことにした。
*
ふっふっふ。ぼくは探偵稼業をしている。そんなぼくには、特殊能力がある。それは、探している相手を必ず見つけ出せない能力。真実はだいたい、一つか二つか三つか四つ!
*
彼女を探すのは、もうやめた。探偵にお金を払うのもやめた。そしたら、彼女に会えた。抱きしめたら、安心したのか、体の力が一気に抜けた。でも、こんなふうに彼女の腕の中で、死ぬのも悪くないなって思えた。
*
私は彼と再会した中で、私の秘密を打ち明けた。彼も彼の秘密を打ち明けてくれた。正直、彼にそんな特殊能力があるのか、私にも特殊能力があるのか、正確にはわからない。
でもいつか、この同じ公園で出会った、探偵さんが教えてくれた。「ぼくは探している人は見つけられないけど、探すことは好きだ。できることなら、いつまでも探していたい」って。
私はもう、彼を死なせてしまう覚悟ができたかもしれない。私も探偵さんのように、自分の心に従いたい。
*
おれは正直、その能力、本当だったら怖いよって思った。だからどうしようって思った。でもどんどん、体に力が入らなくなってくる。あー。うー。もう、好きにして。
*
なるほど。特殊能力者を集めると、こんな感じになるのか。しっちゃかめっちゃかだ。我々は宇宙人。人などは皆、すべて我々の支配下にある。だからこそ人は様々なことをするし、時に美しく、時に愚かである。
たとえば、ここまでの話を生み出せる人間を作ったとしよう。果たして、その行為にいったいどんな意味があるか?
ない。しかしそれでも、そこに存在はある。あなたも存在する。
自身の能力に気づこうが、気づきまいが、そこに宇宙があるように。地球があるように。そこにお主がいるのだ。
だがしかし。ここで一つの世界を終わらせてやろう。おわり。
どうだ。驚いたか? おわり。
あれ、終われない? おわり。おわり、おわり、おわり! なぜだ? おわれないよー!
*
ぼくはこの世界で、宇宙の神秘を探していてぇんだ!
おれは特殊能力が使える。 浅倉 茉白 @asakura_mashiro
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