第1章 夢と現実
第5話
……
………
「おい、拓海!」
俺を呼ぶ声がする。
ふわふわの枕がきもちいい……
布団はこれまで使ったこともない感触……
かるい……
かるくて……なんともいえない幸福感………
スミレ……… チューリップ………
いや、……これは………バラ……
「豚バラ肉じゃないほうの、花のバラ……」
「なにをぶつぶつ言っているのだ! 起きろっ!」
びっくりして目を開けた俺の前にヒロがいた。
「朝食を済ませたら、面接をおこなうぞ」
「面接!?」
「そうだ。まだお前とは、ろくに話もしていないしな。
お前自身の話を聞きたいのだ」
そうだ。昨日はあのリビングで成りゆきのまま宴会になり、それからどうしたのか……? あまりよく覚えていない……
しかし、…これから俺、どうなるんだろう…?
あのヒロって子、俺を雇うとか言ってたし…
同居するってことは、親御さんにも挨拶せねば…
「おい、聞いているのか?」
昨日と変わらぬ口調でヒロが訊ねる。
「ゆうべ佐野が言っていた、お前の夢とやらの話を聞きたいのだ。
長野の田舎の、農家の長男だったな?
農業を継ぐために大学に通っているのか?」
「えっ?………あっ、……それは、……まぁ……」
「ほんとうなのだな?」
「はっ……ほっ、…ほんとうです…」
「“ ほんとうは ”、どういうことなのだ!?
場合によっては、このままクビにしてやっても良いのだぞ!?」
「いっ、いやっ……俺は、……
…俺には、他に……ゆっ、…夢が………」
俺は、少し、顔を赤らめた……と思う。
「なんだ? はっきり言えないのか?」
ヒロは、じっと俺の顔を見据えたまま問いかける。
「いっ、いやっ……そのっ……
……俺の、……夢は………
…おっ……俺の夢は……
…はっ、……はは……は……いゆ…****………」
「はっきり言うのだっ!」
「俺は………
俺の……夢は……
…はっ、……は、…は……はっ、……
……俳優になることだっ!」
Best position. お嬢様の日常記録 -執事たちの沈黙- 霜月 莉 @emile-tsubasa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Best position. お嬢様の日常記録 -執事たちの沈黙-の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。