第3話

『はい。少々お待ちくださいませ…』



インターホンの男の声は、落ち着いたトーンで答える。


しばらくすると、白くてお洒落な鉄格子の門が開いた。どうやら遠隔操作で開くらしい。



『そのままお進みくださいませ』



インターホンの男の声に誘導され、佐野と、佐野の友人ふたりと、俺の順に、その豪邸の庭に入り、玄関を目指した。


庭は一面が芝生でおおわれ、白い噴水や、白い女神の像や、天使の像がレイアウトされている。


「すげえ家だな…」


俺は幾分か緊張しながら思わず呟いた。


「だべ?」


佐野が言った。



「ここって、ほんとに佐野っちの友達の家か?

俺…なんか緊張してきた…」



「俺もここに来ると、ちっとは(少しは)緊張すんだぁ。

なぁに、慣れたら大したことないべさ。な?」



佐野は、フォローになりきらない微妙な返答をして、他の友人ふたりの同意を求めた。ふたりも頷き同意を示す。



陽の光は、だいぶ西へと傾いてきている。


そんなやりとりをするうち、玄関にたどり着いた。


玄関が開き、中から黒い背広を着た若い男が出てきた。



「どうぞ、お上がりくださいませ。

リビングでお待ちくださいとの事です。ご案内致します」



かしこまった丁寧な口調でその若い男は案内をした。

見た目は二十代前半に見える。

やせ形で、背広がよく似合う。

髪は幾分か茶色がかっていて、好感の持てる整った顔立ち。

とにかく、身綺麗な装いが似合う好青年だ。



大理石の玄関を抜け、俺達は、リビングらしき部屋へ通された。



リビングでまず目についたのは、白いグランドピアノ。

テーブルやソファー、その他の家具や調度品に至るまで、白を基調とした空間が目を見張る美しさだ。

まさに、絵に描いたような洋館といえよう。



リビングのソファーへと案内され、今度は、はじめの男とは違う、同じように黒い背広の男がお茶を運んで来た。

薔薇の模様のついたお洒落なティーセットでお茶をもてなした。手慣れている。



お茶を淹れたその男も、見た目は二十代。

やはり細身で、スラリとした体型をしており、髪の色は染めているのだろうか…?

白金色の頭髪に、左目には黒い眼帯をしている。



どちらの男も落ち着いた身のこなしで、非の打ち所もないといえるほどだ。



俺はさらに緊張して、ティーカップがカタカタ鳴るありさまだった。

こんなに緊張したのはどれくらいぶりだろう。


そんな思いを巡らしていると、誰かが声をかけてきた。

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