第2話
「なんだぁ、拓海? 湿気た顔して」
友人の佐野が声をかける。
「ん…? …… あぁ……」
俺は、この先、どうしたらよいのか……
そんなことをぼんやりと考えながら、覇気のない返事を返す。
「大丈夫だって!
俺らが、
まあ、
佐野は明るく言う。
佐野のアパートには、まだ他に、友人二人が住んでおり、ここで居候をするわけにもいかない。
佐野は、他の二人と一緒に、なにやら話し込んでいる。
「ほんとにヒロんとこ行くのか?」
「まぁ、今の俺達には、あいつんとこしか他に頼れるとこねぇべ?」
「まぁ、そりゃそうだけど…」
「とにかく非常事態だ。
行くだけ行ってみるべ。な?」
佐野は方言なのか、いつもの口調でふたりをたしなめる。
*
佐野たちに連れられて、俺は見知らぬ住宅街にたどり着いた。
見るからに高級住宅街だ。
田園調布か、麻布か、成城か…そんなイメージの高級住宅街だ。
その住宅街の一角にある白亜の豪邸の前で立ち止まり、佐野はインターホンのボタンを押した。
この白亜の豪邸は、ひときわ美しく、洋風で優美な景観である。
『はい…』
数秒待って、インターホンから応答があった。
男の声だ。
「あの、ヒロに会いたいんすけど。
……あ、佐野です。すんません…」
高級住宅街の、ひときわ優美な白亜の豪邸にはまったくそぐわない 佐野の野暮ったい口調がインターホンを通して届けられる。
俺は意味もなく可笑しくなり、笑いを最小限に押さえつけた。
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