ドルオタでネッ友な彼女の正体は人気絶頂で引退した伝説のアイドルだった

田中又雄

第1話 ネッ友でドルオタな彼女

「ふひひひひ...」


 真っ暗な部屋でアイドルのライブをにやけながら気持ち悪い笑顔を浮かべる。


 真っ暗になった画面に自分の笑顔が反射して少し萎える。


 俺は現在高校2年生のどこにでもいるアイドルオタクである。

中学生の頃にアイドルにハマり、ずっと1人の女の子を推していたが、残念ながらその子が2年前に電撃引退してしまったため、今は別のグループを推していた。


 俺が現在推しているアイドルは【夢夢 ミミカ】という女の子だった。

グループではなく単独でアイドル活動をしており、年は俺と同じ。

最近、ようやくメディアにも取り上げられるようになってきている、今注目のアイドルである。


 ちなみに俺はリアルの友達は0人である。

学校でもぼっちであり、楽しくない学園生活を送っていたが、俺にとっては夢夢様がいればそれで良かった。


 そうして、ライブを見ていると、画面の上から一通の連絡が届く。


『やっほー、ライブ見てる?』


 送信してきたのはドルオタでネッ友の小野坂さんである。


 小野坂さんとはとあるドルオタ掲示板で出会って、すぐに意気投合して友達となり、大体1年が経過していた


 俺もかなりのオタクだが、彼女は女の子でありながらもかなり熱狂的な女性アイドルオタクであり、何故か内部の情報に詳しかった。


 どういうツテか分からないが限定グッズなども大量に持っており、たまに俺の分ももらったりもしていた。


 しかし、ネッ友ということもあり、今まで一度も会ったことはなく、声も聞いたこともなく、今後も会う予定はなかった。


 まぁ相手は女の子だし、会うことになっても緊張して上手く話せそうにないし、このままの関係がいいと思っていた時のことだった。


『ライブ見てるよー』と、返信するとすぐにまた通知が来た。


『おっ、流石〜^_^そういえば、今度こっちでライブやるらしいけど、良かったら一緒に行かない?』


 急に誘われて思わず固まる俺。

適当な理由をつけて断ることはできた。


 しかしながら、今後の俺の人生、これを逃せば女子と2人きりで出かけるなんて一生ないかもしれない。


 俺の見た目を見て、がっかりされるかもしれないが、それでも一度くらい勇気を出してみようと、深夜テンションも相まって、『うん。一生に行こう』と返信してしまった。


 朝になってから冷静になって後悔したものの、向こうは楽しみにしてくれているせいで断ることもできず、仕方なく一緒にライブに行くことにした。


 ◇数日後 駅前


 とある土曜日のこと。


 1時間ほどかけてJRで到着した都会の駅。


 なれないワックスを髪につけ、それなりのファッションに身を包み、おかしいところはないか再三チェックした上で俺は待ち合わせ場所に向かった。


 本当は変に期待して欲しくないから、お互いに事前に写真を送り合ってから会いたいと言ったのだが、彼女に拒否されてしまったため、顔を知らないまま会うことになった。


『もう来てるよ〜!カフェの前にいる!帽子かぶって黒いマスクつけてるのが私だよー』


 そう言われて、カフェ?と思いながら、ウロウロしながら歩いていると、カフェの前で帽子をかぶって、黒いマスクをつけている女の子を発見した。


 発見したのだが...。

そこに居たのはめちゃくちゃ可愛い女の子だった。


 いや、めちゃくちゃ可愛い女の子っていうか、それは2年前に人気絶頂期に電撃引退をした俺の元推しアイドルの女の子がそこにいたのだった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093090063337813

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