3-2
*****
(はあ)
ジークとした会話を回想し終え、アリアはため息をついた。
馬車で対面に座るセレスには、「幸せが逃げますわよ」とのほほんと笑われてしまった。
(改めて、なんか王宮ドロドロしてるなあ……予想はしていたけど。でも、それはそれで別の妄想が捗ってしまう……
なんにせよ、ジークの育て親が
(今まで日々心の
「ねえ、やっぱり気になるんだけど、セレスはいいの? 私についてきちゃって。王宮、危険が結構ありそうなんだけど」
ジークの
「もう。さっきも似たようなことを聞いてきたところじゃない。第一、
「まあ、そうなんだけど……」
(私は私で、親友には無事でいてほしいっていうか)
もじ、と両手を組み合わせるアリアに、ふふっと軽く噴き。セレスは手の
「安全がいいのは、それはそうよ? でもねわたくし、あなたがわたくしの知らないところで危ない目に
「セレス……!」
思わず目を
「というわけで、王宮でも執筆は続けましょうね、アリア」
「……えっ。まさか、王太子殿下ご本人様のお
「ネタの宝庫じゃありませんの。解像度の上がる今書かずにいつ書くと」
「ネタの……それは確かに私も思ったけどね!?」
「わたくしの絵も、今ならジークフリード殿下の毛穴や
「毛穴と髭の剃り跡って、あの方どっちもパッと見当たらないじゃない」
「そうでしたわね」
そんなふうに、二人してとりとめもない会話を続けていた時だ。
「魔物の襲撃だ!」
外から、緊張した護衛
――
どんっ、と大きく馬車が横ざまに揺れ、アリアとセレスは同時に座席に
(な、なに!?)
手すりのおかげで、かろうじて
「小型の
すかさずジークの指示が
にわかに慌ただしくなった周囲に、アリアは慌ててカーテンをざっと横に寄せる。
ぬめりを帯びた
どうやら馬車の激しい揺れは、あの翼の起こした
(あれは――)
狙いを定めるように
翼竜はカラスに似た
「セレスはここで待ってて」
「はぁい。気をつけてね」
親友はこちらの意図をすぐさま
「ジークさま」
「アリア!? なぜ出てきた! 馬車の方が安全だ、早く戻ってくれ」
プラチナの髪とトゥニカを
「殿下の騎士たちのお力を疑うわけではなく。聖術を
「あの
報告しながら、ちらと頭の
(聖術、って思わず言っちゃったけど。あんなの、本当は正式な『聖術』じゃなく――)
細かいことは後回しだ。
修練場で見せた治癒とともに、浄化の術はアリアの得意分野である。
「このまま戦うと、術の支配のせいで私たちを殺すまで
「野良……わかった、
ジークの同意を受け、やや表情を引きしめたアリアは、すぐさま
使い古した紙面のうち、望む聖句の書かれた箇所に、さっと指を
吹き
「――〝第三章五十二節三、我が幸運の日が過ぎ去り、我が運命の星が
それは聖典の中でも、特に強力な『浄化』を
唱えた
――その後の勝負は一気についた。
支配の術から解放された翼竜たちは、騎士たちの剣に翼を少し傷つけられただけで
*****
「助かった、アリア。話には聞いていたが、君の聖術はたいしたものだな」
「いいえ。お役に立てて光栄です」
両手を胸の前に当てて礼をとるアリアを、馬から下りたジークが感心したように
他の騎士たちも、誰も大きな傷を負わずにすんだようだ。
「君がいなければ、もう少し
「そんなことは。ただ……」
騎士たちの技量は相当なものだろう、とかぶりを
アリアは先ほど、一つ気になったことがあった。
「あの翼竜たちは、ルクレツィア妃殿下が差し向けたものでしょうか」
「おそらくは。似たようなことが何度かあったから。魔物を召喚して
なるほど、とアリアは眉を
「では、
「それが、何か?」
「翼竜たちにかけられた術から、あまり害意を感じませんでした」
(殺すつもりなら、もっと強力な使役の術をかけて、多少なりとも
とはいえアリアは、これでも
「……なるほどな」
アリアの感じた
ジークは赤い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます