1-4
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「あの! 神官長様、巫女長様!? 待って待って待って、ではなくお待ちください。全然頭が整理できません。一体何がどうなって!? 今、どういう
四半刻ののち。
とりあえず修練場に王太子殿下をいつまでも
本来ならば、神官長も巫女長も、おいそれと話しかけられる相手ではないはずなのだが。今は
アリアは深呼吸した。そして改めて「こちらでお待ちください」の言葉に素直に従って待つ王太子殿下を、衝立の陰からそっと
(うわあ……ジークフリード殿下、ちょっと遠目でも、本当に絵になる。ただ本当に座っているだけなのに。姿勢が美しいから? 足が長いから? わからない……)
それにしても、顔がいい、ああ顔がいい、顔がいい。東方の短文詩が
「いや、実はな……わしも巫女長も、いまいちわかっておらんのだ。どうして王太子殿下が、急に
「えええ……?」
「先ほど、ごくわずかな護衛
「はい…… !? 」
何がなんだかはこちらのセリフである。
話を継いだ巫女長も、状況をいまだにうまく
三人して額を合わせ、代わる代わる、テーブルにつく
そこで。
「とりあえずアリアセラ、お前が行って話をしてきなさい」
「ええっ、そんなぁ!?」
無体にすぎる命を神官長から受け、アリアは素で悲鳴をあげた。
「ご一緒に来てくださらないのですか!?」
「いや、そうしたいのは山々だが……殿下は、『聖女候補と内密な話がしたいから、席を外してほしい』と強くご
(神官長!? 余計なことに首を突っ込んで
最近就任したばかりで、王権との
一方、長く勤めている巫女長の方はまだ落ち着きがあり、「どうしても判断に困ることがあれば、無理にでもお呼びなさい。私が責任を持ちます」と申し出てくれた。優しい。でも、どのみちアリア一人で相手をしなければならないのは同じらしい。
「では、あとはお若い人同士で……」
神官長に「それ今言うのは違いますよね?」というセリフと共に送り出され、頼みの
さて。結構な時間、ほったらかしにしてしまったにも
「……大変お待たせをいたしました」
一般に貴婦人の
「そう
ジークフリードは、相手が年若い一介の巫女見習いだけになっても、やはり
と、「こんな訳のわからない状況でなければ! というか私が殿下の視界に入る日なんて来てほしくなかった」と頭を掻きむしりたくなる
と、とにかく
どんな調子で接したものか。動揺を悟られないよう必死なアリアである。
彼には対面の椅子を
「では、俺も立とう」
「え」
「女性を立たせたまま話をするのは落ち着かない」
(うわぁんもうそういうところー!)
やっぱりね、そういう人だと思ってた! 本当にそういう人だった!
(ありがとうございます最高です! でも本当に困るんです! あと、さっきも思ったけど
内心でのみ
椅子を引いて腰掛けたあと、全力でテーブルの天板を
心中のありとあらゆるあれやこれを、表情筋をぴくりとも動かさず、
けると、その途端、ジークフリードは少し
「急な話で驚かせてすまない」
「いいえ」
(本当ですよ!)
首を縦に振りたくりたい本音は綺麗に押し殺し、ますます恐縮して目を伏せるアリアに、ジークフリードはやや
「アリアセラどの」
「アリアセラと呼び捨てで構いません」
「周りはなんと?」
「……アリアと」
「ではアリア」
ひいっとアリアは声にならない悲鳴をあげかけた。普通に、極めて雑に呼び捨てにしてくれたらいいのに。恐れ多くも|愛(あい》
「先ほどの求婚を断った理由を聞きたいんだが」
「それは……あまりに急なことなので、……お答えしようにも、いたしかねます」
「説明が足りていなかったかもしれないが、婚約も
「だとしても、その大役に私はやはりふさわしくありません。この神殿内で、まだ次の聖女候補は選定されておりませんし、私の名が具体的に挙がっているわけでもございません。何より私は、現在単なる巫女見習いの身に過ぎず、……出自も貧しい平民です」
スラスラと答えつつ、
「ロッドガルドの神殿内で聖務に従事する限りは、元の身分の
「……それこそ過分な話でございます」
(そして願ってもない話です。いえ、文字通り願ったことも願うこともないって意味で)
顔さえ見なければ、どうにかジークフリードを相手に話しているのだという事実を思考の端っこに追いやれそうだ。やっとこ調子をわずかに取り戻したアリアは、思い切って、一番気になることを尋ねてみた。
「次代の国王
も構いませんか。しかも、見たところ、ごく内密に」
「もっともな疑問だな。……が、答える前に、あなたに確かめねばならないことが一つ」
わずかに身じろぐ気配で、アリアは、彼が姿勢を正したのだと察した。
「もちろん理由はある。が、それを聞いたあとは、どうしてもあなたに聖女候補になってもらわなくてはいけない。必ず巻き込むことになるからな」
「えっじゃあ聞かなくていいです」
「判断が早いな?」
(それはもう)
当たり前です。
全力で
「……まあ、当たり前といえばそうかもしれないな。俺と
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