1-3
*****
呼び出された先は、聖術の訓練に使われる中庭の修練場だ。
庭木がところどころ残っただだっ広い
(巫女長様、こんなところで何をするんだろう?)
「アリアセラ。あなたのもっとも得意な聖術を
相変わらず、どこかムッと
ますます意味がわからない。アリアは不思議に思いつつも、
巫女長から「構いません」と返事を聞くや
「――〝第十三章四十節序。我が精神は我が物であり、
「そこまで。
「ありがとうございます」
表情は動かさないままだが、巫女長が手を叩いて
(……ご用事って、これだけ? わざわざ私の技術を見たいということ? どうして?)
できたら早めに解放していただいて、夕刻の消灯までに
「いかがでしょうか……」
「……確かに。これなら
――そこで、ふと。
他に誰もいないと思っていた修練場に巫女長以外の声が聞こえ、アリアは首を
一人は神官長のものだ。
そこでアリアは、神官長の隣に、黒いフード付きの長い
(誰?)
男性用のトゥニカを身につけていないから、聖職者ではなさそうだが。
目を
彼はアリアの前で足を止め、静かに
「失礼。聖女候補アリアセラで
(! うわ)
なんていい声の人だろう、と。
不覚にもアリアは
(い、いけないいけない)
なんだか低さの中に深みがあって、やたらと耳によく馴染むのだ。
そして、――気のせいでなければ、おそらく彼はまだ若い。ますます正体不明だ。
「……はい。聖女候補とは誤りですが、確かに私の名前はアリアセラです」
どうにか平然とした様子を取り
「誤りとは、なぜだ」
「身に過ぎますゆえ。このロッドガルドにおいて聖女とは、
「そこをなんとか、あなたに聖女候補になっていただきたい」
やたらに広い、草むした修練場の中央で、
「? どういう意味でしょうか。それより、あなたは……」
「アリアセラ。そのお方の
(このお二人に
なんとなく気を張り、
「!」
うっかり声を出さなかったことを、アリアは自分で褒めたくなった。
なぜなら、目の前に立っていた青年には全く見覚えがなかったけれど――そう、見覚えなんてあるはずがないほどに、美しい男性だったのだ。
年の
ぺき》に整っている。何よりも目を
(まさに聖典の中の英雄みたい)
すらりとした立ち姿には、
「初めまして、アリアセラどの。ロッドガルド王太子、ジークフリード・イーライだ」
「え」
セリフの意味が脳内を
(今なんて?)
ジークフリード・イーライ、とおっしゃいませんでした?
とっさに疑ったのは、
「神官長と巫女長に、この神殿の中で、今もっとも実直で勤勉で、聖術に優れた巫女を
白昼夢に
一向に目が覚めないどころか、とんでもない続きを切り出された。
「無理を承知であなたに願いたい。どうか、俺の婚約者になってもらえないだろうか」
(待って、無理を承知で、――なんですって?)
実直だの勤勉だのは、神殿の偉い人たちの手でだいぶ脚色が入っているとしか思えないので――その実態は、現実にいる貴人を題材にとって妄想まみれの小説を書き
(え? は? 待って? ちょっと?)
この、
「もちろん気持ちまでは
「えっ無理ですお帰りください」
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