夢見る少年 その1
これは夢ではない現実である。
夢ハウスで暮らすソージは小学校三年の時に両親を不慮の事故で亡くしこの施設に入所してきた。
ソージは真面目で学校では優秀で常に成績トップである優等生だ。
しかし一つ難があった。
自分をお兄さんと慕う三つ年下の少女に、毎晩夢の操作をされ不幸に見回されていた。
だが本人は全くその事に気づいてない。
「兄さんおはよう。」
「おはようユメ。」
ユメ…この少女こそソージの夢を操り運命を弄ぶ張本人だ。
ソージはユメにお兄さんと慕われていると思わされているにすぎない。
洗脳されていると言った方が理解しやすいだろう。
そもそもどうしてユメはソージの運命を弄ぶのか?
ユメの生い生い立ちは不幸であった。
小学一年生の頃から父親の性的虐待をうけていた。
自分が不幸だった分幸せな人間が許せないのだ。
そこで、たまたま公園で幸せそうな夢を見て昼寝をしていたソージがターゲットにされたのである。
ユメの入所は凄まじいものだった。
まず、父親を洗脳して自殺に追い込んだ。
そして三年前夢の中に潜入したソージを発見した事から尾行しこの夢ハウスを知った。
そこからはトントン拍子で次から次へと身寄りを自殺に追い込んだ。
そして、ようやくたどり着いたソージのいる夢ハウス。
ユメがそこまでしてソージを追いつめたい理由がもう一つ。
中世ヨーロッパに根源は存在する。
ユメが毎晩のように見る夢がある。
それが、中世ヨーロッパが舞台とした魔女狩りの夢である。
前世だろうか?
疑問に思っても仕方ない。
前世の自分であろユメが出てきて魔女狩りの審判が下される。
そこでソージによく似た実の兄が裏切り、ユメがギロチンの死刑にあうというものだ。
逆恨み…。
全くその通りだ。
ユメは逆恨みをしてソージを不幸のどん底に陥れる気だ。
ここでソージの話に戻しそう。
ソージは宇宙飛行士になるという夢を持っている。。
今日はその第一歩になるアメリカへの入学が出きる話が、夢ハウスの所長ハルマが持ちかけてきたのでる。
ソージが所長室へと向かおうとした矢先に、ユメと一緒に歩いていたらあのユートが近寄ってきて二人をからかう。
「お二人さんいつも仲良くてお熱いですねぇ。」
「やめてよ。」
ユメが嫌がるものだからソージは拳を突き上げユートを追い払う。
「うるせぇ失せろ。」
ケンカはソージの方が強かったためユートは渋々立ち去ることにした。
ユートは舌打ちをしながら机の脚を蹴りフロアから立ち去った。
「ち、覚えとけよ。」
ユメはそんなソージに対して抱きついて心にもないお礼をする。
「兄さんいつもありがとう。」
「ユメは俺が守るからな。」
ソージはユメをそっと抱きよせる。
ユメは内心気持ち悪いと思っていた。
「うー、キモい、キモい。」
が、ここで本性をさらけ出すと今まで積んできたソージへの信頼が損なわれるので、ユメは我慢してにこやかに笑顔を振りまく。
これは信頼させておいて後から裏切って落胆させるユメの作戦だ。
そうと知らないソージはユメのその笑顔を見て臭いセリフ。
「ユメの笑顔好きだな。」
「どんなけだよこいつマジあり得ないし。」
ユメはまた内心どん引きする。
そしてソージの胸を押し離れる。
「ユメ?」
「あ、誰かきたらまずいし。それよりも兄さん所長室いかなくてもいいの?」
「そうだった。」
ソージは慌てて走り別館の所長室に行く。
ユメはこっそり後をつける。
そして、ソージを洗脳した。
所長室内ではソージがハルマの話を真面目に聞いていた。
「ソージ君、おめれたい話だよ。よく、ここまで頑張ったね。」
「所長さんや他の職員さんのおかげです。」
ソージは深々と頭を下げて感謝の言葉を並べる。
そんな、ソージはユメに洗脳をかけられており自分では理解しがたい発言をしてしまった。
「とても、嬉しいのですがこの話なかったことに。」
「は、何を言っておるのだね?」
ハルマは聞き返す。
「この書類なんかこうです。」
ソージはおもむろに立ち上がりあろう事か大学の推薦状をシュレッダーにかけておじゃんにしてしまった。
「君、なんて事を?」
ハルマは当然ごとく立ち上がり机を叩き、ソージに怒鳴る。
「お前は何をしたかわかっているのか?」
その瞬間にソージの洗脳は解かれ、ソージは我に返りシュレッダーの中をみて落胆すし地面に顔を埋め悔し涙をながした。
「俺はなんて事をしてしまったんだ。」
そんなソージを見てハルマは優しく声をけて背中をさする。
「君疲れているのかね?」
ユメはそれをドアの前で聞いてクスっと笑っていた。
そしてタイミングを見計らい所長室へ突入する。
「所長さん全てはあたしを守るためにやったことなんです。許してあげてくらさい。」
白々しいにもほどがある。
ユメはソージを追い込んだつもりだった
ユメは更に追い打ちをかけるように、ソージに抱きついて嘘泣きをする。
「兄さん、日本から離れないで。」
これを見たハルマは予定にはなかったシナリオに慌てふためいて、ユメを強引にソージから引き離して、ソージに問いただす。
「ソージ君どういうことですか?」
ユメは顔を下に向けにやりと笑う。
だがハルマの問いにソージは真剣な眼差しで答えた。
「ユメと約束したんです。ユメはユート達にいじめられてて、俺ユメを守るって決めたんです。」
これはソージの想定外言葉にユメは困惑する。。
「どう言う事なの兄さん?」
「ユメ、俺宇宙飛行士がユメで今まで頑張ってきたけど、これからは君を幸せにするように生きていくよ。」
そんなソージに対しハルマは眼鏡をクイっと指で上げてとんでもない事を口にした。
「それはいけません。ソージ君にはこの施設の誇りになってもらいたい。」
ハルマはソージを自分の名誉の為の礎になってもらう気でいた。
そして、ハルマは静かに椅子に座りコーヒーを啜り言葉を続ける。
「正直この施設は問題児ばかり抱えって世間から冷ややかな目で見られているんですよ。あなた達も知っての通りユート君には参っています。あなた達の先輩にあたるオーディは見事に警察に捕まりましたね。新聞の見出しにもなりました。」
また、所長はコーヒーを啜り一息入れ話を続ける。
「残念でならない…レイプしたうえに殺人。」
そして所長は真意をソージに打ち明けた
「ソージ君あなたは医者にでもなりノーベル賞をとって、この施設の汚名を挽回するための道具になりなさい。」
ソージはそれを切り捨て机を蹴り今までには想像も出来ない大声を張り上げて所長に言い放った。
「俺はあんたの名誉を守るために生きているんじゃない。」
所長はそれに対し鼻で笑い立ち上がってソージの胸ぐらを掴み拳を突き上げ殴ろうとした。
ユメは面白い事になったと暫し観察する事にした。。
「バカですよあなたは私の言うことを素直に受け入れていれば良かったのに。」
念のためハルマは、この施設で一番の暴力職員の安堂を呼び寄せていた。
あろう事か二人でソージに体罰を与える。
それを見たユメは父親からの暴行を思い出して止めに入る。
しかし男性二人の腕力にはかなわずに突き飛ばされてしまう。
ユメはトラウマを思い出しパニック状態に陥る。
「やめて、お父さんやめて。」
頭を両手で抱え激しくふるうユメ。
そんなユメの様子をみてソージはハルマを殴った。
ハルマは殴られた左頬を押さえながらソージの方に指をさし安堂に裏声で命令する。
「何をしている。ソージを取り押さえろ。」
ソージはウメを連れて逃げようとした。
しかし安堂に取り押さえられた。。
ハルマはソージを反省室送りにした。
反省室は別館にあり薄暗い部屋である。
ユメもソージをたぶらかしてとして反省室の2号部屋へ入れられる。
ソージは自分が反省室に入れられるのは良かったが、自分のせいでユメが入れられるのは流石に忍びなかった。
「ごめんユメ俺のせいで。」
「いいの兄さん謝らないで。」
ユメはむしろ都合が良かった。
なにせ、本館では男子部屋と女子部屋は離れているため夢の中への潜入が困難であった。
「ふん、ガキどもが色気付きやがって。きっちり反省しりよ。」
それよりユメが気になったのはソージがなぜ自分を助けるなんていったのかだ。
ユメは脳裏に「夢耐性」という言葉がうかんだ。
夢耐性とは夢の能力者の能力を無効かさせれる事ができるスキルを持つものだ。
もし、そうだとしたらユメはソージを不幸にする事ができなくなる。
十分は歩いただろうか。
離れに古い扉がありただならぬ雰囲気を漂わせる部屋が二つならんでいた。
「着いたぞ。」
安堂はソージを一号室に、ユメを二号室に押し込んだ。
「いいか、トイレは各自室内にあるからそこで用をたっするんだぞ。食事は持ってきてやるから安心しろ。」
そういうと安堂は扉に鍵を閉めいっていまった。
「何もする事ないな。」
すると二号室からユメの声がきこえた。
「兄さんあたし怖い。」
「大丈夫だ隣に俺がいるから。それに声は聞こえるし安心しなよ。」
そんな言葉とは裏腹にユメは今晩ソージにどんな夢を見せるか楽しみだった。
そして夕飯も終えてお風呂の時間、女性職員が離れの風呂を沸かしてユメから入らせる。
「ユメちゃんも大変ね。ソージ君についてるからよ。」
ユメは愛想笑いで言葉を返す。
「兄さんはあたしの恩人だから。」
心にない事を言うユメ。
「お似合いのカップルなのね。」
女性職員は笑いながら言葉を切り替えした。
ユメを脱衣所に入れると入浴室の入り口の前で監視する。
ユメは湯船の中でお湯を手ですくいそのお湯をチョロチョロ垂らしながら独り言を小さな声で囁く。
「ソージの奴と、あたしが出来ている…。そんな事あり得ない。」
バシャンとお湯を叩きユメは湯船からでてシャワーを浴びる。
頭を洗いながら考え込む。
「もし、ソージが本当にあたしの事を幸せにしてくれるなら、あたしはソージをこのまま不幸におとしていいのか?」
シャンプーを洗い流すと、ユメはトリートメントで肩まで伸びた髪をなじませるながら、また考え込む。
「ここでソージを不幸にする事をやめれば、あたしは何を楽しみに生きたらいいのかわからない。」
トリートメントをゆすいでシャワーを全身に浴びユメは更に深く考え込み結論にいたる。
「ソージがあたしを裏切らないか夢の中で試すしかない。」
ずいぶんと長風呂になってしまったユメは女性職員に声をかけられる。
「いつまで入ってんのソージ君が待ちわびてるわよ。」
「すいません今出ます。」
ユメは体を拭き急いでパジャマに着替え風呂をでる。
「ドライヤーは洗面所にあるから使ってね。」
女性職員はユメを洗面所に着れて行きソージを風呂に入れる。
処刑されるのはどうやらユートみたいだ。
ソージが風呂から出た頃ユメは二号室で布団の中に入って寝る準備をしていた。
一号室に戻ったソージに壁を挟んで話かけるユメ。
「兄さん壁際に布団を敷いてくれない?」
「え、いいけどうして?」
「なんか壁で挟めてはいるけどその方が一緒の部屋に寝てるみたいで楽しいじゃない。」
当然ユメは、ソージの夢の中に潜入しやすためなのだがソージは勘違いする。
「それってつまり俺と一緒に寝たい願望あるの?」
ユメは顔を赤らめ少し怒鳴り口調で、壁越しに親指を下に向けでツンとした。
「勘違いしないでよね。」
「あれ、照れ隠し?」
「寝る。兄さんも早く寝てね。おやすみ。」
ソージはドキドキしていた。
壁越しとはいえ女の子と一緒に寝るなんて。
しかも相手はユメ。
「やべ、あそこが…。」
ソージは興奮していた。
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