第55話 銭湯編の再来
◇
急遽始まった人力車の人夫と化した俺は、パキスタニーの経営するインド・ネパール料理屋に行ったことにより、結果としてリアカーに7人乗せる羽目になった。
何故かって?
ああ、それを今から説明しよう。
さながらインドのラッシュアワーのように、国の事情はともかくとして、あいにくここは日本だが、コメディ作品らしく細かいことは気にしない。
リアカーの積載量を無視するのはどうかとは思うが、思ったよりも頑丈なお陰で牽引車が欲しい以外、今のところ特に問題はない。
リアカーに乗る兄貴、ナギ姐、ウィラ、カズサさん、ヒナコ、ジェニファー、グリーンティを乗せたブラック経営の人力車の人夫の俺は、ただでさえ重いのにジャンケンでグーしか出さなかった結果、引き受ける羽目になった訳だ。
その途中、バス停前でお客さんを拾う羽目にもなり、新たなお客さんとして妙に人懐こい野生のタヌキとアヒル、そして除草の仕事を放棄して脱走したであろうヤギのペアを乗せた。
まるでサーカス団というのか、あるいはブレーメンの音楽隊となった俺たちは、いったいどこへ向かって行くのだろうか?
こうなってしまったのは、俺の運のなさなのか、運命のイタズラ心に導かれるままなのか、何故か家とは違う方向に歩いてパキスタニーのお店に辿り着き、その帰りに楽をしようと兄貴とグリーンティを乗せてリアカーを曳き、変な名前の物件というしょうもない名所を巡る、細かすぎてつたわらない観光名物をやっていたことにより、『メゾン サルゴ・リラ・チンパンジー』の前を通過しようとしたときのことだ。
ちょうど出てきた個性あふれる5人の美女たちに見つかった俺たちは、銭湯に行く彼女たちを運ぶことになる訳で、グリーンティも銭湯に行きたいと言い出したことにより、またしても家から遠ざかる羽目になったのだ。
銭湯編なら、ナギ姐の前前世で書いただろ……ああ、入学初日が長い、もはやあらかも作品の名物と化したね? HAHAHA!
そして先の通り、道中で人懐こい野生のタヌキとアヒル、それから除草の仕事に飽きて脱走したヤギのペアを乗せて、銭湯に向かうことになった。
こんなこともあろうかと、ナギ姐は俺と兄貴の分のお風呂セットを用意してくれているし、グリーンティもカバンに入れているのだから、もはや予定調和である。
重ねていうが、ナギ姐の前前世のようにいつまで経っても銭湯に辿り着かない訳にもいかないので、盛大にカットして到着!
ああ、細かいことはいいんだよ。
早速下駄箱で好きな数字を探し、何故か3番だけがないことで某国民的アニメのような展開にならないよう祈りつつ、暖簾を潜った俺と兄貴は、入湯料を払って番頭台越しにナギ姐たちと一瞬だけ視線を交わした。
それだけなら良いのだが、仕切りの高さが昭和ナイズドの為か、俺と兄貴、それからナギ姐には低すぎて少し気まずい。
なにせ、仕切りからナギ姐の頭がはみ出している件については、前前世と同様に諦めて前屈みになるしかないのだろう。
ああ、俺と兄貴もそうだね、前屈みにならないよう落ち着こうではないか————。
◇
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