第54話 観光地ではなく、ただの日常
◇
罰当たりなパキスタニーの店を出た俺と兄貴、そしてグリーンティは、たまたま帰り道が同じという物語の都合上により、ご一緒することになった。
前世と変わらず純粋というのか、大人のお姉さんになってもどことなく幼いままのグリーンティに対し、見た目は高校生、中身がおっさんを通り越しておじいちゃんな俺たちとの対比が面白い。
「二人とも高校生にしては貫禄がありすぎるのー。補導よりも職質の方がお似合いなの」
「ティーさん、勘弁してくださいよ? 職質はともかく、まだ補導するような時間帯じゃあないぜ?」
兄貴、職質については一切否定しないのかよ?
そりゃあ俺も右に同じだけれど、貫禄ありすぎる件については、一応褒め言葉と捉えておこう。
おかげで変な奴には絡まれないし、舐められないからありがたい。
クソチビポメ柴、あいつだけは輪廻転生しても身長で損な役回りというか、相変わらず災難に遭いやすいところは同情するし、いくら彼女が強いとはいえ、俺らの目が届いているときぐらいは護らないとね。
一応、ぶつかりおじさんのことで警察沙汰になった件については、グリーンティに報告しておいた。
「まおー、報告ありがとう。ヒナコお姉ちゃん相手は、さすがに命知らずすぎるの……でも、怪我しなくてよかったの」
「ティーさん、それはどちらに対して?」
「そりゃあもちろんヒナコお姉ちゃn……ううん、どっちも怪我なくてよかったの!」
俺たちは前世での関係性もあるけれど、正直者なグリーンティは、兄貴に釣られて本音がダダ漏れ。
あわててハリボテに等しい建前で取り繕ったが、俺たちの前だから特に問題ないとは言え、うっかりTPOを忘れてポロッと本音が出てしまわないか、未だにそれだけは心配だ。
過去の記憶という先入観からか、特に俺とナギ姐、そしてウィラはいつまで経っても保護者気取りが抜けないものだからか、却ってグリーンティの迷惑になっていないか心配だ。
俺たちが余計な心配をするよりも、生徒の立場から大人であるグリーンティを頼ったり、協力していく方が、双方にとってハッピーなのかもしれないね。
先の件は、グリーンティを通して職員たちに共有してもらうことで、学校側で何かしらの対応をしてくれるといいね。
もしものとき、生徒のことを守ってくれないような大人では、相互不信により信頼関係の構築以前に、人生を歩む上で暗い影を落とす可能性もあるからね。
俺たちはルールの中で、ある程度好き放題に人生を楽しむつもりだけれど、お互いにより良き未来のため、協力は惜しまないつもりだ。
しかし、協力は惜しまないと言ったものの帰り道が同じ方向なだけに、カバン持ちを賭けたジャンケンに負けた俺は、グリーンティの荷物、そして兄貴の装備していた甲冑を押し付けられることになった。
こういうのは本来、言い出しっぺの法則というものがあるはずだけれど、何故かジャンケンで勝てないんだよな……負けてしまった以上、仕方ないので甘んじて受け入れるけれど、多少は楽させてもらうぜ?
パキスタニーのお店の方へと引き返した俺は、事情を話してリアカーを拝借し、荷物を乗せたところまでは完璧だったんだ。
「楽ちんなのー!」
「トラ、もっとスピードを上げてくれ」
ああ、荷物が増えたというか、人力車扱いをされるなんて聞いてないぜ?————。
◇
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