第23話 残塁祭りと主力の離脱
◇
じいさんズ、おかえり……おい、老人ホームはここじゃねえぜ?
「軍曹殿、民間人の避難が完了しました!」
「我々もここで戦います!」
この通り、言っても聞かなそうであり、そもそも俺はただの高校生だし、軍曹ですらないし、前前世の最終階級は大尉だったし、叩き上げだったからもちろん軍曹時代もあったけれど……そもそも俺の部下に旧日本兵のじいさんたちはいなかった。
じいさんズ、戦争はもう終わってる、このままでは埒があかないので現地解散を命じる。
そうして命令に忠実なじいさんズは、すんなり武装解除をした途端、シャキッと伸びていたはずの背筋がみるみるうちに丸くなり、グラウンドの土へと還りそうな勢いで萎れていった……おい、38式歩兵銃のモデルガンは、前世でありそうな伝説の装備かなにかかい?
「ばあさんや、ご飯はまだかの?」
これは大変だ、ウィラを見るなりばあさんと誤認して、ご飯を催促する始末だ。
「あんたようやりますな? ピッチピッチの嫁はんをばあさんにしてはりましたかー……見てみ? これ、うちらの孫やで?」
「おお、よしこ!」
「ヒナコです」
「「「「「「HAHAHA!」」」」」」」
ウィラが悪ノリするのはいい、ヒナコも普通にノってくるのもいいが、じいさんのリアルなボケ倒しでとてもシュールな状態だ。
伝説の武具がないとチートが切れてしまうらしい。
「おお、そうじゃったそうじゃった……ところでさえこ、ご飯はまだかの?」
「おじいちゃん、三日前に食べたでしょ?」
「おお、そうじゃった。インパール作戦を思い出すわい」
流石にリアル過ぎるので笑ってはいけない……よし、やっぱり38式歩兵銃を持たせることをしよう。
そうすれば丸まった背筋がピーンと伸び、いわゆる認知症の改善の傾向が見られるって訳だから、ベンチを警備してもらえればそれでいい。
「けいこ、立派に育ったな! おかあさんの言う事、しっかり守って勉学に励むんだぞ」
「……うん、ヒナコです」
シャキッとしてもどうやら名前は覚えられない仕様らしい。
ヒナコ、一塁に戻ってバナナボールを再開しよう。
次の打席、ナギ姐さんは特大ファールを放ち、運の悪い黒塗りの高級車に打球を当ててしまったことで、しばらくカチコミに行ってくるそうなので戦線離脱。
どういうわけか、ご丁寧にも黒塗りの高級車のフロントガラス、ボンネットのそれぞれが、隕石でも落ちてきたかのようにボコボコになっているのは何故だろう?
さっきのホームランでもすごい音がしたけれど、まさかね?……とりあえず代打、じいさんAを送り、空振り三振に終わった。
続くウィラは、これまでの鬱憤を晴らすかのようにライト前にクリーンヒット。
しかし、ライトの背番号51番君のただならぬ雰囲気に、ヒナコはホームへの突入を諦めて3塁ストップ。
ライトの背番号51番と見たら、そりゃあもう警戒して当然だろう……しかし、ブルーウェーブでもマリナーズでもないけれどね?
数字のマジックに騙された俺たちは、その後得点に繋がらず、特に見どころなく兄貴、カズサさんは凡退してスリーアウトチェンジ。
5回の表、流しそうめんセットの撤収作業を進め、バナナボール部の攻撃をしのいで残り時間僅か……。
5回の裏、最終回を迎える————。
◇
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