幼馴染を寝取られた悲しみで深夜徘徊してたら銀髪赤眼の美少女吸血鬼拾った
芳賀村こうじ
第1話 幼馴染を寝取られる
「大きくなったら私、相馬と結婚するー!」
天使だった。少なくとも俺にとってはそうだった。
七瀬優香。赤ちゃんの公園デビューからの幼馴染。
ちっちゃい頃から可愛くて、俺はもう一目惚れだった。
仲もよく、しょっちゅうベタベタしていた。
お風呂にだって一緒に入ったこともある。
それはもう付き合うだろうと考えていた。
いや……小学校の頃にはもう俺から告白して、付き合ってると思っていた。
まぁ手を繋ぐとか一緒に出かけるとか、普通のことしかしてなかったけれど、付き合っているつもりだった。何ら関係は変わってないとしても。
高校の時からちょっと様子が変わってきた。
優香の家が不仲になって、結局離婚にまで発展したのだ。
俺は彼女を慰めるためにしょっちゅう家に招いていた。
彼女も家にいずらいのか、何度も泊まった経験がある。
流石に部屋は別だったけれど。
高校に入って、少し遠い学校に通うことになった。
実家からという意味だ。
俺達の住んでいる地元は田舎すぎて、高校が遠くにしかなかった。
さすがに電車で毎日二時間通勤するのは疲れる。
というわけでお互い一人暮らしをすることになった。
高校になって、お互いに一人暮らしになったらもうそうなるだろう。
俺はまぁまぁのスケベ心と期待感を持って、高校生活を過ごしていた。
優香に彼氏ができるまでは──。
「はぁ? あんたが私の彼氏? ちょーありえないんですけどっ」
纏め上げた黒髪の先を赤く染めた優香。
ピアスもバチバチに空けている。
そういったことはお洒落の範疇だと思っていたけれど。
なるほど、隣の男が原因のようだ。
バスケ部のエース、刈谷紘汰。
金髪長身、190cmはあるイケメンだ。通称”王子様”。
俺みたいな冴えない男と、刈谷を比べたらそりゃあ選ぶのは刈谷の方だよな……。
王子と姫君なんて噂が学校で流れるようになって、始めて気づいた俺も俺だ。
「というわけだから勘違いくん、今後一切優香に付き纏うのはやめろよな」
刈谷のせせら笑うような声色。
俺は自分が情けなくて、悲しくて、その場から走り去ってしまった。
優香と刈谷が背後で笑っている。
今までの清楚な優香とは似ても似つかない高笑いだ。
俺のいままでしてきたことはなんだったんだ。
優香のためを思って、色々してきたはずだぞ。
別にそれを恩に着せることはしないけれど……。
ものすごく裏切られた気分だ。
「ね、ね、このあとホテル行く?」
「ああ、い~~ね」
ずいぶん遠くからそんな声が聞こえた。
優香と刈谷はもう大人の関係性なのだ。
俺の目からは自然と涙がこぼれ落ちた。
◆ ◆ ◆
気がつけば深夜だった。
あれから俺はあてもなく町中を彷徨い続けたのだ。
きっとひどい顔をしているだろう。
だけれども声をかけてくれる人間などいるはずもない。
終電はとっくに過ぎてて、歩いて帰るしかない。
そんな時分だった。
ドシャンッ、と路地裏に何かが落ちる音がした。
屋上から酔っぱらいでも落ちたのかと不安になり、覗き込む。
そこには血だらけの少女が横たわっていた。
肩口から胸にかけて大きな傷。
ただ黒いドレスが赤く染まっているだけで、それ以上の出血はない。
肩で切り揃えられた銀髪は、見るからに日本人でないことが伺える。
その赤く瞬く目がこちらを見つめていた。
「やぁ、え~~っと、キミ……助けてくれないかい?」
明らかに厄介ごとの臭い。
だけれども、美少女を捨て置いて逃げ出すほど俺は腐っちゃいない。
それに……優香にフラレたショックで半ばやけになっていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
俺はノコノコと路地裏に入り込み──。
なにかをぼそぼそと呟いている少女の声を聞こうとして近づき。
耳にかかる吐息を感じながら──。
「あ り が と う」
首筋に激痛が走り、そのまま意識を失ってしまった。
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