第16話

 さて、衣食住はそもそも問題なかったが、美味い食事・風呂場というクオリティーオブライフ・・・えーとQOLって略してるんだっけ?・・・がまあ向上したわけで、後はあの、うるさく攻め込んでくる兵隊を、大人しくしてる間に何とかせにゃあならんのだが・・・


「滅ぼす?ねえ滅ぼす?」


 わずかに残った良心が咎めるし、後で絶対面倒くさいことが起こるだろうからやめなさい。


「ちぇっ」


 ありがちなことだけど、ここを迷いの森みたく、絶対にここにたどり着かせないような結界って張れたりする?


「魔法石の予備もあるし、この家の周りだけなら大丈夫ね。まあ、高位の魔術師には効かないだろうけど。」


 よし!じゃあそれやろう!!高位の魔術師ってそんなにいないだろう?


「でも、家からちょっと出たら、突然人前に姿を現す感じになるわよ?却って怖がられたりしない?」


 まあ、どっちにしろ俺たちは見ただけで怖がれるんだから一緒だろう?・・・あーでも、どっかに遊びに行ったりはしたいかな。今更だけど、デートらしいこと何にもしてない訳だし。


「といってもねぇ・・・私たちが街中に出たら、街の人からすれば、只の襲撃にしか見えないわね。」


 じゃあ、俺たちが知られてないような遠い町ならいけるかな?


「それならたぶん大丈夫だけど・・・せっかくきれいな家作ったのに引っ越すの?」


 それなんだけど・・・こんな感じの魔法で、扉をよその町の家に直結して・・・ああ、この家は脚生やして動かす必要ないから・・・ってのはできる?


「できるわよ?先ずは新しい街で家を確保する必要はあるけど。」


 おお!!それじゃあ早速始めよう!!新しい街には徒歩で何日かかるかな?


「私と一緒に飛行すればいいから、そんなにかからないわよ?で、少年はともかく、老婆と老犬なんだけど、どっから確保しようかしら?」


 あ、それはいらない。


・・・・・・・・


 飛行魔法すごい!!三日でえらい距離飛んだぞ!!そりゃ、ここまでくりゃあ誰も俺たちのこと知らんだろう。


「ねえケン、この家あたりどうかしら?」


 まあ、必要なの玄関だけだしな。これでいいんじゃない?


「わかった!!じゃあ買ってくる!!」


 ・・・あいつ、金持ってたっけ?


「買ってきた!!・・・お金?原材料は持ってるから、見てから作ればいいのよ!!さてと、扉に魔法をっと・・・」


 ・・・今後、あんまり高額なものを買うのは控えよう。通貨価値がおかしくなりかねない。


「できた!!さあ、楽しい我が家へ!!」


 本当だ!!中身はちゃんと三日ぶりの我が家だ!!じゃあ、しばらくこの街で暮らしてみよう!

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